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ショートスリーパーは短命?「寝なくていい」と思うと、ストレスが一気になくなる!

「春眠暁を覚えず」の季節がやってきました。
ところが私は歳のせいか、あるいは寝る直前まで酒を飲んでいるせいか、3:30~5:00という中途半端な時間に尿意をもよおし、トイレに行き、ついでに水分補給をしてタバコを吸っていると半ば覚醒してしまいます。
一応その後、布団には戻るものの、スマホなんかを眺めているといつの間にか6:00になっていた――なんてことがしょっちゅうあるわけです。
したがって、3~4時間睡眠の日もよくあります。

酒を飲んだり、タバコを吸ったりと、不健康といえばそうなのでしょうが、私は世界一のショートスリーパー堀大輔さん(1日45分以下睡眠)の本を担当編集したことがきっかけで、睡眠に対しては「別に無理に寝なくてもいいや」と、罪悪感がめっきりなくなりました。


こうした意識の変化は、ことのほか精神的なストレスが緩和されることを実感しています。
かつてだったら頭に浮かんできた「きっと寝不足だから仕事のパフォーマンスが落ちるのではないか」「睡眠不足で病気になるのではないか」「眠れないのは精神的な疾患のせいなのか」という不安が払拭されるわけですから。

とはいえ、やはり「睡眠時間が短いと、早死にしてしまうのではないか」という不安を抱いている方が多いと思います。
そこで、前掲書『睡眠の常識はウソだらけ』の中から、「ショートスリーパーは遺伝で決まるという研究」「ショートスリーパーは短命なのか」という項を本記事用に一部抜粋・改変したうえで掲載しましょう。
本書ではスタンフォード大学をはじめ、睡眠の研究のお粗末さについてさまざまな実験や研究に対して疑義を呈しています。今回は抜粋箇所が短いので紹介している研究はわずかですが、このようなレベルのものが睡眠の常識をつくっていると思うと、なんだか騙された気になってしまうのは私だけでしょうか。

ショートスリーパーは遺伝で決まるという研究

「ショートスリーパーになれるかどうかは遺伝で決まるのだから、無理に短時間睡眠を目指すのは危険だ」という主張もよく見かけます。
 しかし、実際にn =1000以上の受講生がショートスリーパーになっています。彼らはもともと「普通」と呼ばれる睡眠時間でしたが、ショートスリーパーになって幸福を手に入れています。「はい、論破」と言うつもりはありませんが、ぜひ私をはじめとした受講生の遺伝子の研究をしていただきたいと思っています。
 私が1日45分以下のショートスリーパーだと話すと、半分の人はその事実をウソだと疑い、信じてくださる人でも、「それはきっと遺伝的な体質があったのではないか」と考えているようです。
 実際に個別の睡眠時間は遺伝に左右されるという論を展開している学者もおり、特に私のような極端なショートスリーパーが存在する事実を評するにあたり、このショートスリーパー遺伝子説はよく使われます。しかし、すでに述べたように、私はもともとロングスリーパーでした。1日45分睡眠に到達するまで7年もの試行錯誤を要したことから、当然ながら、遺伝子によってショートスリーパーになったという実感は、個人的にはまったくありません。
 日本睡眠学会のHP内で基礎知識として紹介されている井上昌次郎氏の「睡眠科学の基礎」では次のように記されています。

睡眠の個人差 毎夜6時間未満寝る短眠者、9時間以上寝る長眠者は遺伝的な素因にもとづく傾向があるが、必ずしも固定されたものではなく同一人で変動することもある。

 つまり、もともと8時間以上寝るロングスリーパーが、一生ロングスリーパーであるわけではなく、ショートスリーパーになれる可能性があることを意味していて、これは生物の環境適応能力から考えても、非常に理にかなっていると考えられます。
 一方、ショートスリーパーになれるかは遺伝で決まると主張し、私のようにもともとロングスリーパーだった人が後天的にショートスリーパーになれることを頭ごなしに否定している人たちは、遺伝子が変化する可能性について考えたことがないのでしょう。
 また、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)の著名な睡眠の専門家も、理想の睡眠時間は遺伝で決まると断定していますが、実際には同氏はインタビューなどで、昼型や夜型の遺伝子は、年齢によっても変わるといった発言をしています。
 そうであれば、「睡眠時間を決める遺伝子も年齢によって変化しうる」という可能性も否定できないはずです。

ショートスリーパーは短命なのか?

 睡眠に不安を抱いている方の最大の関心事は、睡眠時間と寿命の関係でしょう。詳細は第2章に譲りますが、「短時間睡眠のショウジョウバエは短命だった」ことを示す研究結果があり、これを引用して「短眠は早死にする」という既定路線に沿って語られているようです。つまり、私のようなショートスリーパーは早死にするということでしょう。
 最近、睡眠研究においてショウジョウバエが取り沙汰されることが多いのですが、これは睡眠学でショウジョウバエの研究が流行っているだけですし、ハエの研究がそのまま人に応用できるものかははなはだ疑問です。
 ちなみに、この研究で使用されたショウジョウバエは、薬物を使って遺伝子に突然変異を起こさせて無理やりショートスリーパーにさせています。人間の睡眠時間を語るうえで、参考になる情報がこのハエというわけです。
 私はよく動物と比較して人間の睡眠について論じることがあるのですが、それに対して「人間と動物を比較するなんて、そもそも間違っている!」というご批判を受けます。しかし、遺伝子操作されたハエよりはマシかな、と思っています。
 では、ヒトと同じ哺乳類である象の話を紹介しましょう 。
 野生の象と動物園で飼育されている象であれば、野生の象のほうが睡眠時間は短くなります。なぜなら、動物園で飼育されている象は、食料を自分で探す必要がなく、その分生まれた余暇を睡眠にあてるからです。
 では、この成育環境の違う象のどちらが短命だったかというと、なんと睡眠時間が長い動物園にいる象だったのです 。ということで、「長時間睡眠の象は短命だった」と言えてしまいます。
 動物園で飼育されている象は、運動不足となる一方で栄養たっぷりの食料を絶えず与えられるために肥満となります。肥満はさまざまな疾病を引き起こすために、結果として、睡眠時間の短い野生の象の半分ほどの寿命しか生きられなかったようです。
 この象に関する研究をそのまま人間に当てはめるつもりはないのですが、少なくとも薬物で短時間睡眠にさせられたショウジョウバエの研究よりは参考になる情報だと思います。
 睡眠時間は環境や生活スタイルなどで大きく変動することが自然であり、遺伝子だけの調査で睡眠時間の増減が認められたとしても、それが睡眠時間のユニーク(個性)さであると言い切ることは不可能です。
 遺伝的素養よりも、環境のほうが影響力が強く働く場合は多々あるはずです。
 たとえば、同じ遺伝子を持った人が、消防士になって定年まではたらくのか、無職でずっと過ごすのかでは、生涯睡眠時間はまったく違うことになるのは明白です。遺伝子ではなく、職業や環境で睡眠時間は変化すると考えるのが自然です。そして、当然無職のほうが睡眠時間は長くなるはずですが、肉体的ポテンシャルや精神の強さなどは、消防士になったほうが高くなる可能性は高いでしょう。
 遺伝子というと、さも科学的な印象を受けてしまいがちですが、こうした実験を根拠にいたずらに睡眠の不安を煽る、あるいは煽られる必要などありません。

睡眠不足でお悩みの方、あまり気にしなくていいですよ。
まだ「信じられない!」という方は、ぜひ本書を手にとってみてくださいね。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 いしぐろ)

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