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「で、どうしたいの?」に気づくための自問自答法
フォレスト出版編集部の寺崎です。
これまで新刊『生きるためのデザイン思考』についてご紹介してきました。
今日からはいよいよ実践編です。本書で解説する「実践する超デザイン思考」は3つのステップからなります。
❶アイデアを育てる
❷実験してみる
❸ふり返る
今日はまず最初の「ステップ❶アイデアを育てる」です。
***
五感を使って、自分の枠を超えた理想を見つける
まずは、「アイデア」というステップです。今の状況から前に進むための「理想を生み出す」のがここでの目的です。
最初に定義しておきたいのですが、この本において「理想」とは、「心が動く『これいいかも』」のこととします。
たとえばよくある「夢」や「目標」という言葉の裏には、こういう感情が隠れていたりします。
・「私の夢は〇〇です!(いや、ムリかも)」←実は自信なし
・「チームで営業成績2倍だ!(まあ、自分には関係ないか)」← 他人事
・「ベンツに乗るぞ!(周りの人にすごいと思われたい)」←他人の夢
実は、こういったものは達成されません。感情、ひいては潜在意識の影響が、想像以上に大きいからです。
心(感情)・体(行動)に、潜在意識は現れます。
人の意識において、顕在意識は5%。潜在意識は95%。
影響力の差は圧倒的です。
頭でどんなに「やらなきゃ」と思っていても、潜在意識で「やりたくない」と思っていたら、感情や行動がそれを拒んでしまうのです。
〝とりあえず掲げているもの〟ではなく、心が動いて「これいいかも!」「やってみたい!」そう思えるもののことを、この本では「理想」と呼んでいきます。
この理想をとらえるためにも、自分の中の小さな違和感を見逃さないようにします。
「どうしたいか」がはっきりする魔法の質問
その昔、サイボウズという会社にいたとき、「なんだかよくわからない」という思考の袋小路によくハマっていました。
というのも、当時の僕はいわゆる「ロジカル・シンキング」とか、「問題解決」とかそういうものはめっぽう弱く、超〝感覚型〟の人間だったからです。
なので「なんか違う」「もやもやする」みたいなことにしょっちゅうぶち当たっていました。
しかし、そんな状態で先輩に相談に行ったりすると、いつも「たった一言」でハッ!とさせられました。
先輩「ふむふむ……で、理想は?」
ぼく「え? 理想ですか? えーっと、あのぉ……。ハッ!!!」
そうなんです。もやもや・グルグル悩んでいるときは、
「どうなったら嬉しいのか?」
という〝理想〟をまったく考えてないことがとても多かったのです。
以降、何度も、この質問に助けられました。
「理想は?」と、問うことで、グルグル思考から一つ抜け出して、次に向かう道を定めることができます。
サイボウズという組織では、これが「問題解決メソッド」として言語化されていました。
議論が紛糾すると、誰かが「理想は?」と声をかけてくれて、議論が前に進んでいくシーンを何度も目にしました。
同社は「働き方改革」などの文脈では、日本の最先端を走っている企業の1つであり、その原動力に、この質問があったのです。
ちなみに、新たな事業を次々と生み出している企業「リクルート」でも同じような質問があるそうで、それが「お前はどうしたいの?」というもの。
これも、要は物事に対する「自分の目指す方向」を問うているということなので、「自分の心を動かす理想」の大切さが伺えます。
この「理想は?」という質問、何か行き詰まりを感じたときには、ぜひご自身に問いかけてみてください。
***
「アイデア」というと、ついつい身構えてしまいがちですが、要は「で、あなた(自分)はどうしたいの?」に気づくことがファーストステップです。
「自分の枠を超えた理想」とは、いわゆる苫米地式コーチングでいうところの「現状の外側のゴール」と同じ考え方ですね。以下『「言葉」があなたの人生を決める』より引用します。
いまの現状で思いつく目標は、たいていの場合、本人にとっての「理想的な現状」にすぎないといえます。
たとえば、「いま勤めている会社で能力を認められ、社長に登りつめたい」という目標があるときの「社長」は、あくまで現状を積み重ねた延長線の先にすでに見えている目標です。
そのためにビジネススクールに行ったり、スキルアップのために特別な勉強をしたり、これまでとは違った新たな努力はそれなりに必要です。しかし、目標達成のために行うそれらの選択と行動は、本質的にはいま日々行っている努力と何ら変わりません。現状にとどまったまま捉えることのできる理想的な現状を目標にしているかぎり、どんな試みも現状を肯定し、維持するための手段になってしまうのです。
現状を維持することによって将来に実現できることは、そのすべてが「理想的な現状」です。たとえ将来に、こうした理想的な現状が実現したとしても、そのときに本当に心の底から満足できる人生だったと感じることのできる人は、まずいないのではないでしょうか。
(中略)
「現状の外側にあるゴール」とは、いったいどういうことでしょうか?
つまり、簡単にいえば、いまの自分とはかけ離れ、いまの仕事や環境では考えつかないような突飛なゴールのことです。
社長になるだけでもたいへんなのに、果たしてそんなにかけ離れた人生のゴールを達成することができるだろうか……。
あなたは、そう考えるでしょうか。
当たり前に浮かぶはずのこうした疑問も、ルー・タイスなら一笑に付すに違いありません。
じつは、この考えは、まったく逆なのです。
いまの現状からかけ離れた人生のゴール、つまり現状の延長線上にはない突飛なゴールだからこそ、逆に私たちはそれを100%実現することができるのです。
社長になれるかどうかは確率の問題であり、従業員の多い大企業に勤めていればその確率はかなり低く、100%といえるはずもありません。ところが、現状からかけ離れた、とんでもないゴールは、それを本心から強く望んでさえいれば、必ず実現することになります。
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