【フォレスト出版チャンネル#223】ゲスト/金融|「お金のDX化」で、世界で勃発している争いとは?
このnoteは2021年9月21日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
38年越しの共著として出版
今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティーを務める今井佐和です。今回は素敵なスペシャルゲストをお呼びしています。フォレスト出版から『デジタルマネー戦争』という書籍を出されていらっしゃいます、株式会社GVEのCEO、房広治さんと、株式会社ライフシフトのCEOであり、多摩大学・ルール形成戦略研究所・副所長も務めていらっしゃいます、徳岡晃一郎さん、そしてフォレスト出版・編集部の貝瀬さんです。どうぞよろしくお願いいたします。
房・徳岡・貝瀬:よろしくお願いします。
今井:それでは早速なんですけれど、房さん、徳岡さんから簡単に自己紹介をお願いいたします。
房:房広治でございます。私はGVEと言う、フィンテック会社のCEOをしておりますが、それ以外にオックスフォード大学のオックスフォード・ワクチングループというところの特別戦略アドバイザーを5年間。あと、昨年の11月にガーディアンと言う新聞紙で、ユニバーシティ・オブ・ザ・イヤーになりました、アストン大学という大学があるんですが、そこのサイバーセキュリティイノベーションセンターの教授に、今年の3月からなっております。それから、もう1つはEcmaインターナショナルという60年前に出来ました、ITの国際規格、これをやっておりますジュネーバベースのところのコミュティメンバー をやっていると。今、この4つの違ったものがスティーブ・ジョブズの言う、コネクティング・ザ・ドッツということでいっぱいになったのをきっかけにこの本を徳岡さんと一緒に出版させていただきました。以上です。
今井:ありがとうございます。では、続いて徳岡さん、よろしくお願いいたします。
徳岡:はい。皆さん、こんにちは。徳岡です。私は、ライフシフトという会社を、私がちょうど還暦の時に創業しまして、現在はそこでは、これからの人生100年時代めがけて、ビジネスパーソンがどうやって自分のキャリアをつくっていくのかという、研修とコンサルトをやっております。同時に多摩大学の大学院の教授もやっていまして、人事・コミュニケーションの世界を教えているんですけども、併せてこれからイノベーションの時代にはルール形成がものすごく大事になるだろうということで、ルール形成戦略研究所っていうのをつくりまして、そこの副所長をやっております。房さんとは、このワクチンを縁に、久々に、20年ぶりぐらいにお会いして、意気投合して、これからの世の中を創っていく。ルール、それからデジタル、それからマネー等々ですね。その辺を含めて一緒に発信しようということで、この本に結びついています。よろしくお願いいたします。
今井:よろしくお願いいたします。元々お二人は20年前からお知り合いだったんですか?
房:38年ぐらい前かな。
徳岡:そうか。そんな前か(笑)。
今井:38年も前から!それが、それぞれお互いに色んな道を辿っていって、先ほど房さんからもコネクティング・ザ・ドッツなんていうお話もありましたが、点と点がつながって、また出会ってというところで、今回この『デジタルマネー戦争』という本が生まれたということなんですね?
徳岡:そうですね。本当に偶然の出会いです。
今井:ありがとうございます。ところで、貝瀬さん、こちらの『デジタルマネー戦争』という本なんですけれども、どのようなきっかけで企画が生まれたんでしょうか?
貝瀬:はい。実は昨年、キャッシュレスに関係した企画を担当して、それ以降、バーコード決済とか、ネットバンキングとか、その企画のために使い始めたんですけども、まあこれが実際やってみると便利だし、あと今そういうキャッシュレスを利用することで、ポイント還元というのがあるわけですね。生活費が一回の買い物で2~3%もお得になるみたいな。そういったことで、キャッシュレスに関して関心を持っていましたし、あとビットコイン、ブロックチェーンみたいな。そういう技術、お金の世界が変わるよねっていうことを、ビジネス書の編集者ですから、当然関連書籍もある程度は目を通していたんです。そんな矢先、今年の春に徳岡先生から、「房社長というフィンテックのベンチャーをやっている方がいてさー。本を出さない?」っていうので、房社長の色んな媒体に載ったインタビュー記事を見せていただいて、それでちょっとびっくりと言うか、「こんなすごいことをやっている日本人がいたんだ!」みたいな。今、房社長はイギリスを拠点にしてご活躍されているんですけど、本当に最先端の技術、そういうお金のデジタル化という最先端の分野で、最先端の技術で、多額の資金を調達してみたいな。すごいことをやられている方がいてっていうのを知って、「これはすぐに本にできるんじゃないか」と思って、企画を出したところ、「これ、面白い」ということで、かなり早く決まったという。そんなような・・・。例によって、ちょっと個人的な趣味から始まっている記憶があるんですけど(笑)。そんな感じで始まりました。はい。
「お金のデジタル化」とはどういうことか?
今井:ありがとうございます。デジタルマネーと言うと、やはり去年にコロナが始まってから、なんとなくデジタル化みたいなかたちで、「クレジット払いだとお得だよ」というキャンペーンをやっていたりですとか、「マイナンバーカードだとちょっとポイントが付きますよ」なんていうところで、ポイントっていう言葉が入ってくるようになったなんていう印象があるんですけれども、房社長、お金のデジタル化について簡単な説明をお願いできますでしょうか?
房:はい。本書で論じているお金のデジタル化とはいうのは、大きく言いますと、「5Gとか、IoTの時代がきます」というお話を皆さんは聞いたことがあると思いますが、24時間、365日、全てがオンラインになるという時代がもうそこに来ているわけなんですね。その一番根本的なものというのが経済活動をやっていると、必ずお金のやり取りがある。これが基本的に硬貨とか紙幣、ここからデジタルになると、こういうことを言っております。あるいはマネロンが不可能になる時代。そういうことを色んな方面から、色んなことをおっしゃる方がいらっしゃいますが、どれも同じことを言っている。これがお金のデジタル化だと思っています。
じゃあ、このお金のデジタル化が実現することで、世界はどう変わるのかと言いますと、今は世界で、年間、1月1日~12月31日まで、世界中の78億人の人間が大体2兆円の決済をしているというふうに予測されます。これに対する流通コストというのは、実は一回当たり100円~150円くらいかかっていると。結局300兆円ぐらいのお金がかかっちゃっているということになるんですが、これがデジタル化すると100分の1のコスト。一回あたりの流通コストは1円ぐらいにまで下げられると。こういう世界がくるということなんですね。
これどういうことかと言うと、皆さん考えていただいたらわかるように、毎日どこかでATMマシーンに、お金がなくならないように、あるいは増えてしまったら移動させるように、現金輸送車が走っていますよね。この現金輸送車っていうのはコストもかかりますし、あとは二酸化炭素も排出していると。これがスマホとクラウドだけで、デジタル化されれば、とんでもなく100分の1どころじゃないコストで終わると。そういうふうなことを考えていただければと思います。
あとは今、私はお金のデジタル化の最前線で戦っている状況を申し上げますと、アジアインフラ投資銀行、AIIBのメンバーの中で特に発展途上国ですね、そこに向けて中国がデジタル化したデジタル〇〇システム、これを売り込んでいるというところと、我々はしょっちゅう戦っているんですが、基本的には今、諸外国での動向としては先進国のドルとかユーロとかイギリスではなく、完全にデジタル元ですね。中国との戦いというのがまさに今、我々が戦っているところであると言えると思います。お金のデジタル化というのは、実はDXの本丸なので、そこは是非また徳岡先生に今井さんから聞いていただければと思っております。
お金のデジタル化に伴うルールづくり
今井:ありがとうございます。では、徳岡先生、お金のデジタル化というお話が、DXの本丸ということで出てきたんですけれども、こちらが世界のルール形成競争の最も重要な部分であるっていうところの解説をお願いしてもよろしいでしょうか?
徳岡:はい。これはちょっと難しいと言うか、複雑な話でもあるんですけれども、ごく簡単に言うとですね。まずそのルールとかDXっていう話がありましたけれども、DXっていうのは、結局、デジタルトランスフォーメーションで、今やっている色んなプロセスであったり、やり方っていうのをデジタルで変えていく、ガラッと変えてしまうというのがDXですね。そうすると、ただ単に自分のやり方だけを変えるんであればいいんですけども、規模が大きくなってくると、色んな人と干渉してきますよね。「これまでこういうふうに私がしたんだけど、あなたも合わせてください」とかっていうふうに、変わってきます。そこでルールが登場するんですね。今までのやり方におけるルールっていうのが、DXをやることによって違うルールに置き換えないと通用しなくなるっていうことが起きてきますということで、ちょっと抽象的な話になりましたけれども、ルールっていうのは法律とか規制とか標準とかですね。みんなが色んな活動をする時に従っていかないと混乱してしまうというところをつくっていくのは、ルールですね。「右側通行しましょうね」っていうのもあれば、「排ガスは何パーセント以下じゃないとダメですよ」っていう、「そうじゃないと税金が安くなりませんよ」っていうことですね。色んなルールが世界にはあります。で、お金っていうのは、結局、房さんの話にもありましたけれども、色んな経済活動の基盤ですよね。だからそこには当然ルールがついていて、「勝手にお札を発行しちゃいけない」とか、あるいは世界っていう意味で言うと、「基軸通貨っていうのはどういう役割を担うのか」とか、変動相場制とか、為替のルール、これもみんなお金っていうのは全てこのルールがちゃんとしてないと世界で通用しないということになるわけですね。そういう意味で、お金が今度はデジタル化していくっていうことはどういうことかって言うと、今まではリアルのコインとかお札とか、そういうもので、一定の仕組み、ルールの中で動いていたのが、デジタルになってくると、今度はそういう実物のものがなくなっていくので、非常に使い勝手がよくなっていくんですね。一方、お金っていうのは、常に流通とか、互換性とか、安定とか、あるいはセキュリティとか、そういったものに守られていかないと、流通していかないということで、リアルの時のそれを守るルールがデジタルになると書き換えられちゃうということですね。違うルールでもってやらないと今度はデジタルマネーっていうのが上手くいかないっていう話ですね。ですので、今まではリアルのお金は、ある意味ドルが基軸通貨として通用するようなルールで、うまくいっていたと。ユーロも出てきましたけども、ユーロはユーロでヨーロッパの中では非常に便利なルールなんですね。で、今度はデジタルになると、ドルがデジタルで通用するようなルールをちゃんとつくれるのか、もしくは先ほど房さんがおっしゃったように、挑戦してきているのは中国ですね。中国がデジタル人民元っていうのを一生懸命流通させようとしているわけですけども、そうなると今度はお金の世界のルールを中国が握ってしまうんじゃないかということで、デジタルにお金が切り替わる瞬間に、ドルの覇権から中国が世界を握りかねないという、そういう戦争が起きつつあるということですね。以上、ちょっと難しい話なので、ごくごく簡単に言うと、そんな感じだと思います。
今井:ありがとうございます。
貝瀬:ありがとうございます。そうなんですよ。お2人がおっしゃったように、お金のデジタル化ってよく言われていますけど、それは単に我々の生活が便利になります、単にポイントが還元されます、それでウハハハみたいな。そういう小さいレベルじゃないと。それをお2人の話を聞いたり、原稿を読んで本当にもう目を開かれたと言うか。お金の在り方が変わってしまうので、それってもう私たちの生活のルール、世界のルールが変わる。国際社会そのもののルールにも及んでくる。そういう話をお2人から聞いて、お金のデジタル化というのは未来の世界の覇権を巡る戦いだったのかいうのを、本当に勉強させていただきました。
今井:ありがとうございます。
ルール化の肝になるのが「セキュリティ」
徳岡:ちょっと付け加えちゃって大丈夫ですか?そういう意味で、そのルール関連で大きな部分がセキュリティなんですね。セキュリティの技術って、ものすごく重要で、そこで房さんが今、最新の技術開発に成功しているということで、この辺の知見が非常に本には盛り込まれているという感じです。
今井:ありがとうございます。中国の人民元とどうなるかっていう、戦争の話が先ほどあったんですけれども、ちょっと思い出したのが、一昔前にブルーレイとHD DVDっていうのが2つあって、どっちになるかっていうところで、始めはHD DVDが出ていたんですけども、あっという間にブルーレイの方がグっと出てきて淘汰されたっていうようなのをなんとなく思い出しまして、デジタルマネー戦争もそんな感じで今競っているところからグッとどっちかが出てってなってしまうのかなっていうのを、ドキドキしながら思いました。お金のデジタル化を制する者が未来の世界の覇権を握るっていうのは、本当に興味深いお話だなと思いました。また、その辺りも詳しくお聞きしていきたいんですけれども、時間になりましたので、明日改めて詳しくお話を伺っていきたいと思います。房さん、徳岡さん、貝瀬さん、明日もどうぞよろしくお願いいたします。
房・徳岡・貝瀬:よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)