#377【ゲスト/UXライター】「読み手ファースト」の文章術とは?
このnoteは2022年4月21日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める今井佐和です。今回は素敵なスペシャルゲストをお呼びしています。後払いサービス「ペイディ」を運営している、株式会社PaidyでUXライター、コピーライターとしてご活躍されている宮崎直人さんと、フォレスト出版編集部の貝瀬さんです。よろしくお願いいたします。
宮崎・貝瀬:よろしくお願いいたします。
今井:早速ですが、宮崎さんはフォレスト出版から『秒で伝わる文章術』という書籍を出されていらっしゃるのですが、宮崎さん、簡単に自己紹介をお願いいたします。
宮崎:はい。今、ご紹介いただきました株式会社Paidy の宮崎直人と申します。よろしくお願いします。簡単な経歴をご紹介させていただきますと、まず、立命館大学理工学部を卒業していまして、大学では脳の研究をやっていました。コピーライターって文系の人がやるイメージがあるんですけれども、本の中でも書いたんですけども、理工学部を出てコピーライターをやっているというのが、自分の文章術に影響を与えているというか、特徴的なことなんじゃないかなと思っています。で、その後に2年間大学院に行きまして、卒業した後に日経グループの広告会社で、日本経済社という会社があるんですけれども、そこに新卒で入社しました。そこで一年間だけ営業をやりまして、その後に部署が変わりまして、クリエイティブ局の配属になって、コピーライターというものをやっていました。広告業界で、10年くらいコピーライターをやったんですけども、その後にちょっと自分のキャリアを考え直す機会がありまして、そこで楽天に転職しました。楽天ではポイント戦略のコピーライティングだったり、楽天の「お買いものパンダ」というキャラクターがいるのですが、そのラインスタンプの企画とかをやっていました。その時にアプリとかのテキストを考える仕事をしていまして、出会ったのがUXライターっていうもので、それが今の自分のメインの仕事になっているという感じです。そして、2021年にもう一回転職をしまして、今はPaidyという会社で働いています。
お客さんに対して届けるほぼすべての言葉の責任を持つ仕事
今井:ありがとうございます。そうすると今は、コピーライティングはコピーライティングでもUXコピーライターが主なお仕事になっているということでしょうか?
宮崎:そうですね。Paidyという会社で、いわゆるコピーライティングという広告に使われるものと、UXライティングっていうサービスだったり、アプリだったり、プロダクトと呼ばれる部分の領域で使われるもの、両方のことをやっていまして、「ペイディ」というサービスでお客さんに対して届けるほぼすべての言葉の責任を持つようなポジションで仕事をしています。
具体的に言うと、例えばテレビCMみたいなものの、マーケティング施策のコピーのディレクションとか、自分でコピーを書くっていうことをやったり、あとさっき言ったアプリとかサービスのUXライティングっていうものをやっていて、いわゆるブランドボイスって呼ばれるものがあるんですけど、そのサービスのブランドというもの自体がどういう声を持っていて、どういう人格を持っていて、お客様に対してどう語りかけるのか、どういう話し方をするのかみたいなのことを考えてデザインしていく、言葉をデザインするような仕事をしています。
今井:他にも文章を教えるお仕事などもされていらっしゃるんですか?
宮崎:そうですね。本業と言いますか、Paidyの仕事以外で言うと、「宣伝会議」で文章力養成講座の講師をしていまして、それ以外にもオンライン学習サービスの「Schoo(スクー)」で以前に講師を担当させていただいて、動画が上がっていたりするんですけども、そういうところでどうすればわかりやすい文章、読み手に伝わる文章が書けるのかっていうのを、皆さんに知っていただけるようなお話をさせていただく活動もしています。
noteの記事がきっかけとなり書籍化が決定
今井:ありがとうございます。理系から営業、そしてコピーライティングの世界へということで、なかなか異例のキャリアを積んでいらっしゃると思うんですけれども、今回フォレスト出版から『秒で伝わる文章術』という本を出されるわけなんですけれども、こちらはどのようなかたちで企画が生まれたんですか?
貝瀬:はい。企画をリサーチする中で、最近はネットでnoteなり、ツイッターなりで話題になっている記事っていうものの中から企画を立案するんですが、たまたまリサーチ中に宮崎さんがお書きになったnoteの記事がツイッターで非常に話題になっていました。そのタイトルが「UXライターが解説する 超実践的UXライティング入門」という記事だったんです。
貝瀬:確かにここ数年、UX(ユーザーエクスペリエンス)、UI(ユーザーインターフェース)って、非常に言葉として話題になっているので、全然専門外なんだけどちょっと読んでみようと思って読んでみたんですが、その記事がUXライティングについて非常にわかりやすく書かれた素晴らしい記事だったので、これはすごいなと。この人の文章をもうちょっと読みたいなって思ったので、宮崎さんの他の記事も読んだんですが、どの記事も非常にクオリティが高いので、正直びっくりして、noteに掲載されている記事の文章をまとめるだけでも本が2、3冊は作れちゃうなと思ったんですね。
ただ、一つ問題だなと思ったのが、フォレスト出版はどうしても一般ビジネスマン向けの本を出す会社なので、UXライティングそのものをテーマにした企画だと、内容が専門的すぎるなということで、宮崎さんがUXコピーライティングの技術を一般のビジネスパーソン向けの文章術にするっていう、デジタル時代の文章術みたいな企画はどうかということで、そのかたちにして会社に提案したところ、無事に通過して、今回の出版に至ったという次第です。
今井:なるほど。実は私も宮崎さんのnoteの記事を個人的に前から読んでいまして。
宮崎:ありがとうございます。
『秒で伝わる文章術』の非常識なコンセプトとは?
今井:UXライティングという言葉を知らない時に読んだんですけど、UXライティングって本当に面白いなあって。まさに「秒で伝わる」じゃないですけど、「存在が消えることがいい」っていうような感覚がすごく目から鱗で感動した記憶があるので、「まさかこれが弊社から出版されるなんて!」と、実は喜んでいました。
宮崎:すごくうれしいです。ありがとうございます。
今井:UXライティングだと一般的ではないとのことで、ビジネスパーソン向けに「伝わる文章』というかたちにして出されたということなんですけれども、宮崎さん、今回のこの本のコンセプトですとか、一番お伝えしたかったことなど、もしありましたら教えていただいてもよろしいでしょうか?
宮崎:はい。そうですね。まず、自分自身もビジネス書を読むことがすごく好きで、今までも色々と読んできたんですけど、その中で結構多いのが、文章術の本だったら「元々文章が苦手な私が○○をやって、うまく書けるようになりました。だから、あなたもできます。」みたいな感じで文章術のテンプレートみたいなものが書かれている本があると思うんですけど、そういう方にはあまりいきたくなかったというのがあって。そもそも自分は文章が得意という自覚があるので(笑)、そういう「苦手でした」っていうのは書けないというのがあったのと、そういう一個人の体験とかだと、たまたまその人が成功したからよかったけど、他の人にもちゃんと適応できるのかみたいなことを考えていて、誰がやっても同じように同じ成果が出せるようなテクニックだったり、技術を伝える方がいいんじゃないかなと思っていました。なので、自分の経験とか、自分がこうだからうまくいったっていう話よりも、過去の文献だったり、データで証明されているとか、客観的にうまくいったことがわかるようなものを中心に文章の書き方みたいなのを構築するようなことを考えていて、誰でも再現できるようなルールを伝えるように心がけて書きました。
今井:そうすると、どんな人でも再現性高く、分かりやすい文章が書けるような内容がぎっしり詰まっているという感じなんですね。
宮崎:はい。そういうところをすごく意識したのと、あと読者の皆さんが持っている前提とか常識みたいなものを逆転させようっていうのを考えて書いていまして、例えば自分が書いた文章って、書く時は絶対みんなが読んでくれると思いがちなんですけど、文章っていうのは基本的にみんな読んでくれないものなんですよとか、文章っていうのはすごく便利で使いやすいスキルって言われていると思うんですけど、そんなことはなくて、文章っていうのはものすごく不便なものであるとか、文章なんて誰でも書けるっていいますけど、文章なんてみんな苦手ですみたいな。今まで当たり前とみんなに思われていたことを逆転させて、そうじゃないんですっていう前提から書き始めようって思っていて、そういう前提に立って文章を書いていけば、今までも文章術の本はたくさんあると思うんですけども、ちょっと違った切り口の本が書けるんじゃないかなと思って、そういう考え方で書いています。
今井:そうすると、今までの常識が覆るような、目から鱗の内容が盛りだくさんという感じなんですね。
UXライティングの記事を集中的に投稿し始めた意外な理由
今井:ちなみに私は宮崎さんのnoteを結構読んでいるんですが、noteにUXライティングとかコピーライティングに関する記事をたくさん投稿されていらっしゃるかと思うんですけれど、なぜ投稿するようになったんですか?
宮崎:そもそもは楽天に入って1年ぐらい経った時に書き始めたんですけど、自分が10年ぐらいコピーライターとして広告業界で当たり前にやってきたことが、転職してITだったり、デザインだったりという分野に行った時に意外と知られてないというか、自分の知見がすごく重宝されるというか、役に立っているみたいな実感がすごくあったんですね。なので、自分がまずそれを文字にするというか、一つのかたちにして発信することで、もっと色んな人の役に立つんじゃないかなって思ったのがきっかけでした。そこから最初の方はとにかく色んなことを自分の書きたいように書いていたんですけど、たまたまUXライティングっていうものについて書いた記事がツイッターとかでかなり拡散されたんですよ。
で、自分が発信できる情報の中で、世の中で必要とされているとか、読み手にとって役に立つものがUXライティングの記事だということに、そこで気づきまして、今回の本にも書いているんですけど、自分の書きたいことじゃなくて、読み手が本当に読みたいものを書くっていう。「読み手ファースト」って呼んでいるんですけど、そういう方針に変えたんです。で、UXライティングって新しい分野だったので、日本語で発信している人がほぼいなかったんです、特にnoteでは。そういうところで自分がUXライティングの記事をバンバン出していたら、noteの中ではUXライティングについて書いているのはこの人みたいな、自分のイメージができるような気がしたんですね。そこで集中的にnoteにUXライティングのことを書いていこうと思って。
もっと言うと、日本語のウェブ全体で、例えばGoogleとかで「UXライティング」って検索した時に、どういう経路かで最終的には自分のnoteにたどり着くようなことがもしかしたらできるかもしれないと考えて、noteをどんどん変えていくようなことをやっていました。で、最終的には本とか出せたらいいなと思っていたんですけど、こういうチャンスをいただけたのですごくありがたいし、ずっと書いていてよかったなってすごく思っています。
今井:まさに宮崎さんの意図した通りになったということなんですね。
宮崎:たまたまなんですけどね(笑)。
書く上でビジネスパーソン向けに意識したこと
今井:今回はビジネスパーソン向けにということで、文章術の本を単行本としてまとめられてきたかと思うんですけれども、その時に意識したことは何かありますか?
宮崎:そうですね。やっぱり自分の書く文章っていうのは、ビジネスで使われる文章なんで、具体的な数字を上げることを意識していまして、他のそれこそ小説とかエッセイとかだったら、自分の書きたいことを書けばいいんですけど、私が書く文章っていうのは、例えばマーケターだったり、プロダクトマネージャーだったり、UXデザイナーというような、依頼をしてくれる人がいるんですね。その依頼してくれる人が求めている文章を書くっていうのは、例えば利用者数だったり、利用率だったり、コンバージョンって言われるものがあったりするんですけど、そういう具体的な数字のKPIっていうものをどんどん上げていくようなものを求められていると思っていて、そういうところでしっかりと結果を出せるような文章を書くっていうのが、ビジネスで書く文章にはすごく大事なんじゃないかなと思っていて、それでデータとかに強いところが、最初に言った自分が理系であるっていうところに関わってくるんですけど、そういうところが他の文章とはちょっと違うところかなって思っています。
「文章術の本を書くのに苦労した人の文章術の本」は信用できない
今井:ありがとうございます。こちら、執筆する時に色々なご苦労もあったかと思うんですけれども、一番苦労したことは何でしたか?
宮崎:文章を書くこと自体はめちゃくちゃ得意なので、そんなに苦労しなかったんです(笑)。書くのもめちゃくちゃ速いので、noteのストックとかもあったので、集中して書いたのは実質1か月ぐらいで、ガッと書いたみたいなことがあって。僕は文章術の本を書いているので、文章術の本を書くのに苦労した人の文章術の本って信用できないと思って(笑)。
今井:(笑)。
宮崎:書くこと自体はスラスラ書けたって言ったら言い過ぎですけど、そんなにめっちゃ大変だったっていう記憶はあんまりないですね。それよりも本を出すっていうこと自体がはじめてだったので、本というプロダクト、製品っていうものを作るプロジェクトを考えた時に、例えばデザインとか表紙とかタイトルとか、文章以外の部分で考えないといけないことがたくさんあったので、そっちの方が結構苦労しましたね。
今井:さすが文章術の先生ということで、すごく早く出来上がったんですね。
宮崎:はい。書くのは(笑)。
今井:UXのnoteの記事を見ていて、すごく面白いなって思ったのがユーザー体験っていうところで、相手の視点に立つというか、ただ事実を書くのではなく、体験に寄り添うっていうところの話がすごく面白いなって思って、文章術の執筆内容自体はそんなに苦労はなかったっていうことだったんですけど、デザインとか表紙、タイトルっていうのも、まさにユーザー体験に当たる部分じゃないですか。宮崎さん的には大変だったっていう話があったんですけど、そういったところもすごく楽しんで、色々と考えられたのかなって聞いていて思いました。
宮崎:まさにその通りで、本の中にも書いたんですけど、見た目が9割みたいなこともあるので、文章を書く時って、文章だけを見て書いてる、考えている人っていっぱいいると思うんですけど、文章を読むという体験を考えた時には、一番最初に目に入る情報、視覚情報からはじまるので、デザインとかがすごく大事になってくるみたいなところで、まさに自分が苦労したところだなって思います。
今井:ありがとうございます。最後にこちらの本では読者のみなさんに何を一番に伝えたくて、読者のみなさんにどうなってほしいという想いを込めて書かれましたか?
宮崎:はい。例えば文章力というのは100点満点で評価された時に、「自分はあんまり文章がうまくなくて50点ぐらいです」みたいな自己評価の方がいたとして、この本を読んだだけでいきなり100点満点みたいなことは難しいと思うんですけど、でも80点ぐらいまでなら誰でもなれるし、そこまでいければ、普段仕事をしている時とか、就活する時とかに「自分の文章術が原因でうまくいかなかった」みたいなことってなくなるんじゃないかと思っているんです。この本読んでもらえれば、そういうところまではきっともっていけるんじゃないかと思っていて。なので、この本を読んで、文章力によって人生がうまくいかないみたいな体験とか、経験がなくなるような状況を作っていきたいなと思います。
貝瀬:そうですね。宮崎さんがおっしゃったみたいに文章でご苦労されている方は今非常に多い。今はテキストコミュニケーションっていうのが、かつてに比べて非常に重要になってきていると。それで先ほど宮崎さんがおっしゃいましたけど、だけど、人間の脳っていうのは文章を読むのがあんまり好きじゃないと。だからこそなるべく短く伝わる文章を書く必要があるけど、それを教えられるのが宮崎さんのコピーライティングであり、UXライティングで培った技術であると。そういったところを今回の本というのは素早く確実に読み手に伝わる短い文章を書く技術。それは「読み手ファースト 7つのルール」というかたちでまとめて、解説しつつ、各ルールにきちんと練習問題を用意していたりします。さらに購入者特典で実践ドリルも付いているので、単に読むだけじゃなくて、自分で用意された練習問題とかドリルを実践トレーニングすることで、伝わる文章を書く力っていうのを身につけられるようになっています。若手のビジネスパーソン、学生さん、文章力を向上させたい全ての人たちに読んでいただきたい、非常に実践的な内容の本です。
今井:ありがとうございます。まさに至れり尽くせりの内容になってらっしゃるんですね。おそらくこの「読み手ファースト」という文章術が、宮崎さんご自身のUXライターですとか、コピーライターとしての実務経験でしたり、「宣伝会議」などの文章講座などで多くの方の指導された中から生まれた賜物だと思います。そんな「読み手ファースト」の文章術が誕生した裏話なども色々とお聞きしたいところなんですが、本日はお時間になりましたので、また明日改めて詳しくお聞きしたいと思います。宮崎さん、貝瀬さん、明日もどうぞよろしくお願いいたします。
宮崎:よろしくお願いいたします。
貝瀬:よろしくお願いします。
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)
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