#331【ゲスト/心理】裏切者は「顔」に出る
このnoteは2022年2月16 日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
土屋:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める土屋芳輝です。本日も、昨日に引き続き、顔の表情やしぐさの専門家で、株式会社空気を読むを科学する研究所、代表の清水建二さんがゲストに来てくださっています。本日も編集部の寺崎さんとともにお伝えしていきます。清水さん、寺崎さん、今日もよろしくお願いします。
清水・寺崎:よろしくお願いします。
最新のウソ検知法のうち
使えるものだけを厳選
土屋:昨日は、清水さんの研究内容について詳しくお聞きしました。まだお聞きになられていない方は、昨日の放送もチェックしてみてください。そして本日は、中央公論新社さんの「中公新書ラクレ」から出された清水さんの最新刊『裏切り者は顔に出る――上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』の内容について、詳しくお聞きしていきますので、楽しみにしていてください。まずは今回の新刊『裏切り者は顔に出る』の内容について清水さん本人から、簡単にご紹介いただけますでしょうか?
清水:はい。こちらの本は、『裏切り者は顔に出る――上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』というタイトルなんですけど、基本的に私の専門分野、微表情、微動作に込められた心の読み解き方とか、ウソの見抜き方というものが掲載されています。特徴としましては、最新の科学知見を基に、実際に様々な業種の方に科学知見のウソ検知法を使ってもらって、現場の声をフィードバックしていただきまして、さらにどれが使える科学知見で、どれが使えない科学知見か、どれが使えるウソ検知法か、どれが使えないウソ検知法かっていうのを試行錯誤しながら、最も使える、最も使いやすいウソと心理を見抜く方法をまとめた本になります。
寺崎:かなり実践的というか、本当に実験して試して、役に立つものだけを厳選したって感じですか?
清水:そうなんです。元警察官とか、各経験則の本もありますし、それはそれで楽しい本でいいんですけど、よくあるのが科学論文だけ書いて、それをバーっと羅列してある本とかありますけど、あれだと本当に使えるかどうかってわからないんですね。実際、自分で使ってみて、研修生の方に使ってもらって、本当に使えるものだけを集めたということですね。
寺崎:それはなかなか、これまでにはないですよね。
清水:はい。
土屋:かなりヤバイ本ですね。
寺崎:結構久々の新刊じゃないかなって気がするんですけど、今回の企画はどういった経緯で進んでいったんですか?
清水:これは5年ぶりの新刊ですね。2017年12月にある本出して以来、単著としては本を出していなかったんですね。連載とかは色々とあったんですけど、単著としては5年ぶりで。で、2016年ぐらいに中央公論新社さんから、ある雑誌の取材を受けたんですね。そこで取材の記事を担当してくださった、担当者の方が微表情、微動作のことを覚えていてくださったんですね。その取材で微表情、微動作について聞かれていたんですよ。で、雑誌になりましたと。その方が時を経て、本の編集の方に移動になったと。そこで自分も企画を出したい、と。そういえば、2016年に清水建二いたなと。微表情、微動作、面白かったな、と。そこで、「一緒に本を作ってくれませんか?」っていうことで、「ぜひぜひ!」と。私も5年ぶりで、新作をアップしたいという想いもありましたし、2016年の昔の1回の取材を覚えていてくださったという熱意にも心を動かされまして、ぜひ一緒に仕事をしましょうということで、やりました。
寺崎:へー。じゃあ、結構温まって、温まっての企画なんですね。
清水:そうですね。
ウソつきのウソを暴く「五感質問」
土屋:これから出版されるということで、まだ本は僕らの手元にはないんですけれども、中には色々と取り上げられているものがありまして、その中で、ちょっと面白そうだなと思うものをいくつかピックアップしてお話をお伺いしたいんですけれどもよろしいでしょうか?
清水:はい。どうぞ。
土屋:色々と面白い見出しが並んでいるんですけれども、「本音を引き出す7つの質問」とあるんですけれども、これがちょっと気になりまして、この7つの質問で本音が本当に引き出せるんでしょうか?
清水:そうですね。これ、色んなパターンがあるんですけど、「五感質問」っていうのがあって、五感は5つの感情ですね。例えば、夫婦でも恋人でもいいんですけど、「2月14日、一緒に過ごそう」と言われたけど、「2月14日は仕事があって、その後は飲み会があるんだよ」なんて言いますよね。で、本当に会社の飲み会に行ったのかどうかを知りたい時に、五感情報っていうが使えるんですね。五感情報っていうのは、触るとか、匂いとかね、見るとか、音とか、こういった感覚について聞くんですね。「居酒屋さんに行ったのね?」「そう」「その居酒屋さんの広さはどれくらい?」とか、「居酒屋さんでどんな会話したの?」とか、「どんな匂いがあった?」「どんな音楽が流れていたの?」とか、感覚に関係する質問っていうのは、本当に体験していないとなかなか答えられないですよね。
ウソつきって、そこまで考えていないんですよ。どんな匂いがあったとか、どんな音楽が流れていたとか、どんな広さだったかとかっていうのはウソつきは普通は答えられなくて、本当に体験した人しか感覚に関連する言葉っていうのは出てこないんですね。ですので、そういう五感質問、感覚に関連するような質問をすると、ウソか、本当かっていうのが見えてくるよっていうことですね。
寺崎:恐ろしいですね。
土屋:今、おっしゃっていたような質問が7つあって、それを駆使すれば、本音が引き出せてしまうと。
清水:はい。
土屋:他のものも気になりますね。
清水:でも、今は結構早口でしゃべっていますけど、実際はもっとゆっくり、普通の会話の中に混ぜ込んでいくんですね。いきなり尋問みたいにできるのは警察官とかはできるかもしれませんけど、普通の会話において、尋問みたいにしたら、相手は緊張しちゃうので。日常会話において、「あなた、昨日はどこに行っていたの?」「会社の飲み会だったんだよ。」「そっか。飲み会だったの。」「どこのお店で飲んだの?」「最近の居酒屋さんって、どんな音楽を流しているの?」とかね(笑)。そういうふうに聞いていく中で、「あれ、おかしいな」って思えるかもしれない。
4年以内に「離婚率90%」の
ある表情とは?
寺崎:ちなみにこれが放送されている時にはすでに新刊として出されているので、リスナーの皆さんはすぐに手に取って、この7つの質問を確認できると思うんですけど、我々はまだね。実は発売前に収録しているので、アマゾンの情報しかないんですけど。私が気になったのは、この「離婚率90%の表情」っていうので、「離婚率90%の表情」ってどういうことですか?
清水:これは結構恐ろしい研究でございまして、夫婦が喧嘩をしますね。夫婦喧嘩。夫婦喧嘩中の夫婦の表情を計測するんですね。夫婦喧嘩中の夫婦の表情を計測すると、普通は怒り顔ですね。怒っている。怒って喧嘩します。で、怒って喧嘩する夫婦は離婚しないんですよ。大丈夫。
しかし、怒りに加えて嫌悪感。嫌悪って鼻に皺を寄せる顔ですね。臭いものを嗅いだ時の顔。嫌悪感とか、軽蔑。軽蔑っていうのは片方の口角が上がる顔。
寺崎:片方の口角だけが上がる?
清水:はい。夫婦喧嘩中に嫌悪とか軽蔑の表情が出ると、4年以内に90%が離婚するというデータがあるんですよ。これはヨーロッパの研究で、日本人がどうかまではまだちゃんと確認されていないんですけども、ただ、このロジックをちゃんと理解すると、日本人もありえるなと思うんですね。なぜかというと、夫婦っていうのは、お互い尊敬し合っていますよね、ある程度。この人のここが素敵だと、素晴らしいと思って、お互い尊敬の念があるから一緒にいられる。
しかし、軽蔑というのは相手を見下す感情なんですね。相手を道徳的に見下す感情。そうするともう相手をいいなと思っている感情とか、相手のことを素敵だなとか、素晴らしいなあと敬意を抱いている感情を捨て去ることになるんですよ、軽蔑っていうのは。
次に嫌悪ですね。嫌悪というのは、この場合においては、コミュニケーションをしたくない。もっと言うならば、喧嘩というコミュニケーションすらしたくない。喧嘩もしたくない。それが起きてしまうと、もはや夫婦喧嘩すらしなくなっちゃうんですね、今後ね。夫婦喧嘩すらできなくなってしまう。つまり、コミュニケーションを全くしなくなっちゃう。嫌なことがあっても、何も言わない。好きにすればっていうことですね。
寺崎:喧嘩するほど仲がいいっていうやつですね。
清水:そうですね。喧嘩もしなくなっちゃうともう終わりですね。4年以内に90%が離婚するというデータが、ヨーロッパで出ています。
寺崎:マジか~。土屋さんち大丈夫ですか?
土屋:どうですかね。もし自分が、今そうかもと思う人がいた場合って、修復する方法とかってあるんですか?そこまでいっちゃうと難しいんですかね?
清水:自分が嫌悪を抱いた場合ですか?相手が抱いた場合ですか?
土屋:両方・・・。
清水:まあ、自分が抱いた場合は簡単ですよね。簡単と言うか、相手の心を変えるよりは自分の心を変える方が簡単なので、自分がもし嫌悪を抱いちゃったら、自分が相手を好きになった時のことを思い出してください。なんで相手のことを好きになったのか、なんで結婚しようと思ったのかとか、もう1度思い出して、相手の尊敬できるところってなんだっけって、忘れていなかったかなということを思い出していただければ、嫌悪とか軽蔑の念は薄くなったり、消えたりするかもしれないですね。
営業のシーンで使える
微表情トレーニング
寺崎:土屋さんは他に気になるものはありますか?
土屋:そうですね。せっかくなので、「営業、商談、交渉、ビジネスで活きるテクニック」ってあるんですけども、1個くらい教えていただけないでしょうか?
清水:最も単純なものを紹介しようと思います。例えば「この商品1つ、2000円ですよ」ってお客さんに言います。お客さんが「えっ!」っていうパターンと、「えっ?」っていうパターンと。今は声だけなのでわからないと思うんですけど(笑)。1つ目パターンで、「2000円ですよ」って言われたお客さんは眉を上げて目を見開いたんですね。これは、驚き。もう1つのパターンは「2000円ですよ」って言われて、鼻に皺を寄せているんですね。これは嫌悪です。
この表情の違いによって、営業パーソンはアプローチする方法を変えるべきなんですね。例えば、驚きというのは、情報検索と言って、もっと知りたいという意味なんですよ。2000円と言われた時に、「2000円の理由がもっと知りたいよ。もっと私に情報ください」っていうのが驚き顔。
嫌悪というのは、不快なものを排除したいという気持ちですから、「2000円は嫌です。買いません」ですから、値下げをするのか、2000円の価値がある理由を積極的に説明するのかですね。「1950円でいいですよ」とかね。驚きだったら、2000円で通していいですよ。まだまだ2000円で売れる可能性は全然あるんですね。嫌悪だった場合は、2000円より下げるか、2000円を納得してもらう金額にするための説得をしないと売れないよっていうことです。このように表情によってこちらが取るべき作戦が変わってくるよってことですね。
土屋:僕なんか「え?」って言われたら、どれでも値下げをした方がいいのかなと思っちゃうんですけど、そうじゃないってことですね。
清水:それが面白いですよね。言葉に乗せられる想いが表情によって違うことがわかるっていうことですね。
寺崎:なるほど。よく凄腕営業マンっているじゃないですか。凄腕セールスパーソンみたいな。そういう人って、そういうところも無意識に見ているのかもしれないですね。
清水:そうなんですよね。そういう方は多分見えていて。ただ、単純に経験的にそれを体得しているので、部下に聞かれても、わからないっていうかね(笑)。「とにかく俺のことを見てろよ」と、そうなっちゃうんじゃないかなと思いますけどね。
寺崎:なるほどね。
土屋:すごいですね。今は音声なので、表情のところが伝わりづらいかもしれないんですけども、ぜひ本をチェックしていただければと思います。これはかなり使えそうですよね。
本当に「おいしい」と感じたとき
人はなぜ無表情になるのか?
寺崎:あと、気になったのが、「美味しい表情は無表情」っていうのはどういうことなのかなって。
清水:これも夫婦喧嘩の種になるかもしれない(笑)。皆さん、美味しい時ってどういう表情をされていますか?すごく美味しいと有名なラーメン屋さんで食べたら、本当に美味しかったと。どんな表情で食べていますかね?
寺崎:無言で必死に食べていますね。
清水:そうですよね。それが普通なんですよね。笑って食べているなんていうのはテレビの中だけの世界であって、普通は無表情です。これ、不味いものを食べると鼻に皺を寄せる嫌悪表情とかが出るんですね。なんでかっていうと、元々我々って、進化生物学的に、不味いものを食べたら、体に悪いかもしれないから、吐き出そうとするんです。周りに伝えるんですね。「これは美味しくないから、毒が入っているかもしれませんよ」とか、「食べてはいけないかもしれませんよ」とか、周りに伝えるためでもあるし、自分が吐き出すためにも、嫌悪の顔をするんですね。鼻に皺を寄せると、鼻に蓋ができますから、これ以上ものが入ってこないような、香りも入ってこないような顔になるんですね。
寺崎:なるほど。
清水:で、基本的には不味いものを排出させるために、表情筋っていうのは、ある意味発達しているんですよね、食事に関しては。で、美味しいものに関しては、美味しいものっていうのは栄養価が高いものですね。これは独り占めしたいんですね。
寺崎:はぁー。
清水:誰にも渡したくない。ですから、食べていても顔に出ないんですね、美味しいものは。
寺崎:なるほど。それは生物としての反応なんだ。
清水:甘い物に関しては、高血糖になりやすいっていう傾向が出ていますけども、基本的には美味しいものを食べても無表情。ですので、家庭だからこそ、家庭で奥さん、彼女が作ったものが美味しいと感じたならば、意図的に顔に出したほうがいいですね。出さないと無表情になっちゃうので、誤解されます。
寺崎:(笑)。うちも娘が1人いるんですけど、僕と奥さんが、美味しく出来た料理があった時に無言で必死に食べたりするんですよ。そうすると娘が、「パパとママ、なんかしゃべったら」とか言って(笑)。
清水:美味しいものを食べていても普通は無表情になるのが生物なので、我々は生物を一歩超えたいということで、演技したほうがいいかもしれないですね。
寺崎:なるほど。これ、面白いな。
犬は飼い主の表情を読んでいる
寺崎:あと、もう時間的に最後になるかもしれないんですけど、リスナーの皆さんの中でも、ペットを飼われている人って多いと思うんですけど、「犬とのコミュニケーション」っていう項目って、犬と表情でコミュニケーションが取れるとかですか?
清水:そうですね。色んな研究があって、面白いこともいっぱいあるんですけども、犬は飼い主の表情を読んでいる。例えば犬と散歩していて、公園でやばい人が来たと。この人おかしい感じだなと。公園でフラフラしていると。犬はその人に近づいていいか、いけないかって、飼い主の表情を見て判断するんですよ。
寺崎:そうなんですか。
清水:例えば、あやしい人が「犬、かわいいね」って言ってきたとしても、飼い主が「こいつ、やべえな」って思ったならば、その表情を犬が見てくれれば、犬は基本的には見てくれるんですけど。「あ!この人にしっぽを振っちゃいけないんだ」とかを判断して、愛想を振りまかないようになると。あと、これは本で確認していただきたいんですけれども、しっぽを振る時も、右の方に振るのか、左の方に振るのかによって、犬の感情が違うっていうことも書いてありますから、ぜひ読んでみてください。
寺崎:へー。そうなんだ。それは、犬だけなんですかね? 猫とかは使えない?
清水:基本的には犬のことは分かりつつあるんですけど、まだちょっと他の動物はあまりわかっていないですね。ただ動物を飼っていたり、動物と触れ合っていると、多分気持ちは通じ合っているから、他の動物とも同じような、犬と同じかどうかはわかりませんけど、同じような傾向はあるんじゃないかなと思いますけどね。
寺崎:なるほど。表情ひとつとっても、犬の話まで出来るんですね。面白いなあ。
土屋:ということで、そろそろ時間も迫ってきました。ありがとうございます。今回お話しいただいた新刊『裏切り者は顔に出る――上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』は、このチャプターにアマゾンのURLを貼っておくので、興味ある方はチェックしてみてください。
寺崎:今回の新刊は新書なので割とサクサクっと読めるタイプの本かなと思うんですけど、フォレスト出版から出ている『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』っていう本は、そこそこ分厚い単行本で、実際の微表情の写真なんかもふんだんに盛り込んで、ちょっと気合を入れすぎちゃった感もある書籍なんですけど、『裏切り者は顔に出る』を読んで、この世界のことが気になった方は、実践書として使えるものになっています。例えば、「相手を見抜く実践エクササイズ」と最終章にあるんですけども、これは先ほどの交渉とか商談に使えるようなケーススタディなんかも入っていて、この辺りはかなり面白いので、ぜひ『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』もご一読いただけるとうれしいです。
土屋:ぜひ、気になる方は、フォレスト出版の『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』もあわせてチェックしてみてください。清水さん、最後にリスナーの皆さんに一言、メッセージをお願いしたいんですけれども、よろしいでしょうか?
清水:はい。本日は2回にわたって、どうもありがとうございました。表情というのは、我々の身近にありつつも、意外に知らないことがたくさんあります。興味深いことがたくさんありますので、ぜひとも『裏切り者は顔に出る』と、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』を読んで、表情の楽しさを実感していただけたらと思います。ありがとうございました。
土屋:ありがとうございます。清水さん、寺崎さん、本日はありがとうございました。
清水:ありがとうございました。
寺崎:ありがとうございました。
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)