「自分のモノの見方にはバイアスがある」というバイアスをかけよう
フォレスト出版編集部の寺崎です。
先日、こちらの記事を投稿しましたが、じつはこの3つの落とし穴のほかにも、面接官が陥りやすい罠があるのをご存じでしょうか。
それは・・・「バイアス」です。
「思い込み」と言い換えてもいいかもしれません。人は誰しも「思い込み」を外すことができません。無意識にバイアスをかけて人をみています。ただ、それが面接の場面ではネックになるということです。
それでは今日も凄腕ヘッドハンター・小野壮彦さんの『人を選ぶ技術』から一部抜粋してご紹介します。
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「自覚的なバイアス」と「無自覚のバイアス」を熟知する
人を見る達人を目指すうえで、さらに重要なテーマとなってくるのが、どれだけ「バイアス」をなくすことができるかということだ。
その前段としてまず、バイアスの存在そのものに目を向けよう。
バイアスには自覚的なバイアスと無自覚のバイアスがある。先ほどから述べている通り、人間の心は多元的で、言葉で説明ができる心の動きの世界と、言葉では説明できない心の世界があり、それがそのまま自覚的なバイアスと無自覚のバイアスにつながっている。
自覚的なバイアスとは、正しい情報や事実を知らないことや、歴史的・社会的文脈によって刷り込まれる「先入観」である。
例えば、アフリカの人はみんな足が速いとか、ゆっくり話す人は頭が悪いなどというのは完全な思い込みである。こういった先入観によるバイアスは、人種、性別、宗教、性的嗜好、障害、社会的地位に対峙したときに多く現れる。
これらは多くの場合、自覚的なバイアスなので、正しい情報や知識を得られれば解消できるが、逆に自覚的だからこそ悪質な場合もある。差別や偏見がその典型だ。
一方、無自覚のバイアスは、認知心理学や社会心理学の世界で「認知バイアス」と呼ばれる。これは「なんとなく気に入らない」とか「なんとなく好意が持てる」といった類のもので、研究によれば、その数はなんと175もあるそうだ。とても全部は挙げられないので、人を見る際に陥りやすい認知バイアスをいくつか紹介しよう。
親近感バイアス
これは似たもの同士を高く評価してしまうというバイアスだ。
例えば、ポテンシャル・モデルには「好奇心」「洞察力」「共鳴力」「胆力」の四つの要素があると前に紹介したが、ものすごく胆力の強い面接官は、やはり胆力の強い人を素晴らしいと言いがちである。
同族をひいきするのである。
ちなみにぼくは好奇心族なので、好奇心ドリブンな人と会うと好きになってしまう。単純に評価するだけでなく好きになってしまうので、面接のときはそうならないように注意している。
逆に違うタイプの種族を厳しく見ることがある。
好奇心族は胆力族をあまり評価しない。ミクシィの笠原さんをぼくが最初評価しなかったのはまさにこれだ。洞察族は共鳴族をあまり評価しない。それぞれに、プラスとマイナス、N 極とS 極のように相反する部分があるのだろう。
コンテクストによるバイアス
例えば、SNSでフォロワーが多い人はすごいと思ったり、「本を出しています」と聞いただけで賢く見えたり、有名人がすすめた店は美味しいに違いないと思い込んだりするバイアスだ。ハロー(後光)効果とも呼ばれる。
面接でよくあるのは、「社長の知り合いの誰々さんの紹介です」というケース。これは注意が必要だ。ぼくは今ベンチャーキャピタルで働いていて、投資先に人を紹介するときがあるのだが、相手は「小野さんが紹介したのだから大丈夫」と全面的に信用し、独自のチェックをせずに採用してしまうことがある。
これは実は怖いことで、先にも述べた通り、その人の才能を見抜くのはともかく、その会社に合うかどうか見立てるのは難しいからだ。すくなくとも、どのポジションにふさわしいかぐらいは検討してほしい。
ビューティバイアス
これは、先に挙げた二つのバイアスとは趣きが異なる。より美しい男性、女性に魅力を感じてしまうという話である。
特に異性に対してはその影響が大きい。世の中を見渡しても、美人スケーターやイケメン力士といったふうに、何でも〝見た目の美しさ〟でくくってしまう傾向があるが、採用の場面では決してマイナスばかりだとは思っていない。無理に排除する必要はないとぼくは考える。魅力的な人に惹かれてしまうというのは人間の本能であり、結果として魅力的な人ほど成功しやすいからだ。
ここで誤解してほしくないのは、外見だけのルッキズムの話をしているわけではないということだ。ルッキズムは明らかに差別である。しかし、世の中には一般的な美人やハンサムではないけれど、魅力的な人がいる。例を挙げるのは差し控えるが、「どうしてこの人、こんなにモテるんだろう?」と驚いてしまう人は少なくない。
そうした人物も含めた〝ビューティー〟と理解してほしい。
このようなバイアスが人間にはあるということを理解したうえで、それを逆手に取り、むしろ魅力的な人ばかりを採用してしまうという手もある。営業職など対面仕事の人はもちろん、内勤の職場でも人間的な魅力がある人のほうがコミュニケーションが円滑になるだろう。
もちろん外的な美しさにだけこだわって人間的魅力に乏しい人はいる。それは真の美しさではない。そうした美や魅力という部分を冷静に判断するバランス感覚が、人を選ぶ立場の人間は問われているのだ。
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アタマではわかっていても、なかなか取り外せないのが「バイアス」ってやつです。人を選ぶ立場にある方々は、くれぐれも気を付けないといけませんね。
より詳しくはこちらの書籍をご覧ください。