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女性から女性へのミソジニー(女性蔑視)傾向の意外な側面

2週に渡って紹介してきた喜入暁『心の中の悪魔』。

ダークトライアドが高い人には興味深い特徴があるのですが、今回はジェンダー感についての記述を転載します。
ダークトライアドが高い男性がミソジニー傾向があることはなんとなく想像できるのですが、意外なことに女性も同樣の傾向があるそうです。どういうことでしょうか?


男女ともに低いフェミニズム傾向&高いミソジニー傾向

 ダークトライアド傾向が高い人は、恋愛パートナーに対してモラハラをしやすいということを先述しました。これには他者に対する攻撃性が影響していそうだと紹介しましたが、ジェンダー観が影響していることもあるかもしれません。
 特に、男性から女性に対するモラハラは、ミソジニー(女性蔑視)的な態度などの関連が疑われます。
 実際、ダークトライアドが高い人ほど,フェミニズム傾向(女性は男性と同等の権利を持っている、などと考える傾向)が低いことが示されています(Douglass et al., 2023)。
 ダークトライアドが高い男性がフェミニズム傾向が低いという関連はなんとなく納得できますが、興味深いことにこの研究では、ダークトライアドが高い女性もフェミニズム傾向が低いということが示されました。
 この点はまだ謎に包まれた部分ですが、1つの説明として、ダークトライアドが高い女性は他の女性と協力したり権利を主張するよりも、現在の男性社会を支持するほうが得なのかもしれません。男性社会のほうが得なことなんてあるのか? と思われるかもしれませんが、たとえば、女性が働く権利を主張するよりも、男性が働いて自分は専業主婦でいたい、という人がいることを考えれば少し納得できます。
 また、男性参加者を対象としてダークトライアドと性差別(sexism)の傾向(女性は簡単に気を悪くする,女性は男性に愛され守られるべきだなど)との関連を検証したナバスら(2021)の研究でも,ダークトライアドが高い人ほど性差別、特に女性に対して否定的な性差別の傾向が高いことが示されました。より直接的にダークトライアドが高いほどミソジニーの傾向が高いことも示されています(Pineda et al., 2024)。
 女性でもダークトライアドが高い人はフェミニズムの傾向が低かったことを考えると、女性に対する性差別の傾向が女性参加者で見られてもおかしくありません。 事実、男性上司からセクシュアルハラスメントを受けた女性のシナリオに対して,ダークトライアドが高い女性ほど男性上司よりも女性本人を非難する傾向が示されています(Brewer et al., 2021)。
 筆者らも、女性蔑視傾向(女性は男に従うべき,女性を暴力・脅迫で支配することは正当だと思うなど)がダークトライアドと関連するかどうかを検証してみました。結果、やはりダークトライアドが高いほど女性蔑視傾向が高く、特にサイコパシーとの関連が特徴的でした。
 このように、ダークトライアドが高いと男性優位社会を支持するような傾向があります。この現象を考えると、男性から女性へのモラハラなどは攻撃性だけでなく性差別による影響もありそうです。また、興味深いことに女性自身もダークトライアドが高いほど男性優位社会を支持する傾向があります。
 先ほどの専業主婦を求める例の他にも、男女で食事に行ったら男性がおごるべき、というような考え方を、自己利益を求めるダークトライアドの高い女性は持ちやすいということです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 い し黒)

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