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【続編】あやうく言語沼にハマるところだった。

フォレスト出版編集部の寺崎です。

今日は先日ご紹介したおすすめ本『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』(堀元見・水野太貴著/あさ出版)の続きです。

「えーっと」と「あのー」の違いとは?

我々は会話をするうえでよく「えーっと」とか「あのー」と、言葉と言葉をつなぐ無意味な言葉を使うことがよくあります。

これは「フィラー」と呼ばれるそうです。

フィラーには意味がないように思えますが、じつはそれぞれふさわしいシーン、ふさわしくないシーンがあるそうです。

たとえば次の事例。

「僕に九九の問題を出してみてください」
「8×7は?」
「あのー……56です」

なんか変ですよね。

「8×7は?」
「えーっと……56です」

「えーっと」に置き換えると自然になりました。

逆にこれはどうでしょうか。

あなたが街を歩いていて、知らない人に声をかけられたとします。

「あのー、ちょっといいですか?」

はい、自然ですね。
では、これは。

「えーっと、ちょっといいですか?」

なんか不自然ですよね。
なんなら、ちょっと腹立ちませんか?

さて、ここまで読んで「えーっと」と「あのー」の決定的な違いがわかったでしょうか。

ヒント:独り言のときのフィラーを想像しよう。

「えーっと、財布どこだっけ?」は自然ですが、「あのー、財布どこだっけ?」と独り言を言う人はいないでしょう。

【答え】
◎「えーっと」は心の中での作業に手間取っている時に使う
◎「あのー」は伝え方を決めるのに手間取っている時に使う

だから、人に話しかける時には「あのー」だし、独り言のときは「えーっと」になるわけです。

こんな使い分けを私たちは無意識にしていたとは!
ちょっと驚きました。

ちなみに子どもも無意識にこれらを使い分けられるそうです。

「えーっと」を意図的に会話で応用する方法

「あのー」の「伝え方を決めるのに手間取っている」という性質を逆に利用できるシーンが「依頼を断る場面」です。

編集者「この日までに原稿を書いてください」
著者「ちょっとそれは厳しいです」

なんだか、イラッとします。笑

ところが・・・

編集者「この日までに原稿を書いてください」
著者「えーっと、ちょっとそれは厳しいです」

「えーっと」が入るだけでイライラ度がかなり下がりました。

水野 先ほどは、人に話しかけるシチュエーションでした。しかし、こんな状況だったらどうでしょう?堀元さんは編集者から、「この日までに原稿を書いてください」と依頼されたとします。そのときに、「ちょっとそれは厳しいです」と答えるより、「えーっと、ちょっとそれは厳しいです」と言った方がなんだか丁寧じゃないですか?
堀元 ホントだ! どうしてだろう。
水野 「えっーと」は、頭の中に浮かんでるアレコレを隅に追いやって、ある物事を一生懸命考えるときにも使われます。さっきの九九のときにも「えーっと…56です」と言ってましたよね。アレです。
堀元 ふむふむ。
水野 ということは、編集者からの依頼に「えーっと」をつけるのは真剣に実現可能性を検討してるっていうアピールになるんです。
堀元 あー、そういうことか!「今、僕はあなたの依頼にマジメに向き合ってます」って表現してるわけだね。

『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』より

フィラーを撲滅しようとした新庄監督

水野 でもね、ここからは余談なんですけど、フィラーのようなものは、しょっちゅう撲滅されかけてきたんですよ。
堀元 えっ、そうなんですか!?
水野 たとえば、2021年から北海道日本ハムファイターズの監督に就任した新庄剛志さん。
堀元 現役時代からスターだった新庄さんですね。えっ、新庄がフィラー撲滅運動をやってるの!?
水野 彼は、選手のヒーローインタビューの言葉遣いを矯正しようとしてるんですよ。
堀元 そうなんだ。全然知らんかった。
水野 ヒーローインタビューで選手がよく「そうですね」って言いますよね。
堀元 あー、めちゃめちゃ言ってますね。
水野 あれ、どういう意味ですか? 何に同意してるんですかね?
堀元 えーっと……「勝利投手になった気分はどうですか?」とかに対して「そうですね」だから……何にも同意してないですね。
水野 ですよね。だからあの「そうですね」は意味がない言葉で、フィラーとみる研究者もいます。
堀元 なるほど。たしかに考える間のつなぎ言葉だもんね。フィラーだね。
水野 で、新庄さんは選手に対して「そうですね」を禁止しました。つまり、新庄さんはフィラーを消そうとしてると考えることもできるワケです。

『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』より

なるほどー!

たしかに編集の世界でも企画会議で意見を求められたときに「そうですね」を差し込んでから話し出すことが多い気がします。

「そうですね」も「あのー」とか「えーっと」と同じフィラーだったとは!

この話でふと思い出したのが、話題を切り替えるときに「ちなみに……」を差し込むケースが最近多い気がします。自分も含め。

「ちなみに」は「ところで」「そういえば」といった言葉に近いはずですが、なぜか便利な言葉なので多用しがち。

「ちなみに」もフィラーになる日が近いのだろうか。

そんなことを思った次第です。

ちなみにフォレスト出版からこんな本も出ています。
(あ、また「ちなみに」使ってしまった!!!!!!!!!!!!)


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