「OR」ではなく「AND」という発想を持つ
フォレスト出版編集部の寺崎です。
われわれはつい「A or B」という発想をしがちです。
働き方においては・・・
リアル出社 or リモートワーク
・・・という具体にです。
この「A or B」という発想をしがちなのは、日本人の国民性にあるそうです。今日はそのことについて『現場が動くマネジメント』(中尾隆一郎・著)からひもといてみます。
「不確実性回避」が高い国民性を持つ日本文化
異文化理解のフレームワーク「ホフステードの6次元モデル」をご存じですか。
これは6つの尺度で国を比較することができるフレームです。その6つの尺度の1つに不確実性の回避(Uncertain Avoidance =UA)というものがあります。
日本はこのUAが世界で(ギリシャ・ロシア・ベルギーに次いで)4番目に高いことが分かっています。UAが高いとは、不確実なこと、曖昧なことを嫌う文化だということです。
不確実なことが嫌いなので、白黒をつけたがります。不確実性が脅威なので、取り除くためにルールや規則を作りたくなります。同じく、(学生は)「正しい答え」を求め、教師がすべての回答を示すことを期待します。つまり、不確実性回避が高い国民性は、正解を欲しがります。だからAorBを決めたくなるのです。しかも、日本は「達成志向」が高い国でもあるので、HOWを決めてプロセス通り例外なく進めたがる傾向になりがちです。
したがって、日本の国民性からみると、曖昧なAandBがなかなか受け入れられません。だから、「リアル出社」か「リモートワーク」かを白黒つけたくなるのです。
しかし、実際はAandBであることがよいケースが多かったりします。
「営業訪問」「電話」「郵送」「電子メール」のどれが最適か?
まさにそんなAorBの議論があった昔話にお付き合いください。
今から約20年前の2002年当時、私はリクルートの企画部門にいて、「営業活動を科学する」が私のミッションでした。
当時のリクルートは、まだ「ザ・営業会社」で、営業活動で解決すべきテーマは、「営業活動では『顧客訪問』すべきか、『電話を活用』すべきか、『メールや郵送』を活用すべきか」ということを真面目に議論していました。
まさにAorBorCの議論をしていたのです。
またリクルートでは、新規顧客開拓のために「ビル倒し」という営業活動を真面目にやっていた時代もありました。ビルの最上階からすべての顧客の事務所の扉を開け、「飛び込み営業」をするのです。
その一方で新規顧客のリストをもとに営業電話をかけて営業成果を上げている人もいました。
そこに急速にパソコンが普及し、2002年当時、事業所のパソコン保有率は93%、インターネットの人口普及率が初の50%を超えて54・5%(総務省)になったころ、ちょうど時代が大きく変わり、営業活動も変わりつつあるタイミングでした。
ちょうどそのタイミングで、私はリクルートからフランスのINSEAD(欧州経営大学院)のマーケティングコースに行く機会を得ました。
そこで1枚のキーチャートを見せられました。
縦軸に顧客へのインパクト(強度)を横軸にリーチの広さという2軸を取り、営業訪問、電話、郵送、電子メールの位置づけを図示しています。
例えば営業(対面での訪問営業活動)は顧客へのインパクトは大きいが、リーチは小さい。つまり活動量に限りがある。一方で電子メールは、顧客へのインパクトは小さいがリーチはとても広い。電話や郵送は、両者の中間だということを表しています。
そして、今後インターネットの普及に伴い、メールなどでの営業活動がより高度化するはずだという講義内容でした。
では、この図をどう解釈するのか。
結論からいうと、それは「営業訪問ORメール」ではなく、「営業訪問ANDメール」が正解なのです。つまり、顧客の状況に合わせて、営業訪問、電話、郵送、メールを組み合わせるとよいということなのです。
これは時代が証明しています。
あれから20年たった2023年現在、営業活動は様変わりし、まさにさまざまな営業手法を組み合わせて、しかも分業して実施するようになっています。
リアルで出社するのか、リモートワークにするのかという問題も同じ議論ではないでしょうか。ホンダは原則出社の一方で、NTTグループは原則在宅勤務の方針だそうです。20年経ってもやはり「OR」の発想なのです。
結論として、組織の多様性という観点からみても、出社とリモートワークを組み合わせるのがこれからの時代の最適解ではないでしょうか。
***
なんと、われわれの「OR」の発想は民族的、文化的なな傾向だったとは。不確実性回避の傾向の強いTOP3のギリシャ、ロシア、ベルギーですが、ロシア正教はじめ、いずれの国もカトリックが色濃いところに何か理由がありそうです。
なかなか興味深いですね。
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