元少年院の先生が書いた、10代の少年少女とその保護者のための新刊 #キミ傷
Twitterのタイムラインを眺めていたら、「私が見てるのは宮台先生が出てるやつと、かなえ先生くらい」みたいなことが書いてあるツイートが目に入りました。
かなえ先生の名を知ったのは、このときがはじめてです。
え!? 宮台先生と並べて名前を出すような、私の知らなかった先生がいるの?とテンションが上りました。
そして、「かなえ先生」で検索してたどりついたのが、こちらのYouTubeチャンネル。
Vチューバーでした(Vチューバーの動画を見たのはこれが初めて)。
属性は全然宮台先生と異なりますが、さすが宮台先生推しが見ているだけあり、メチャクチャ尖っているな、と思ったものです。
「お、元少年院の先生なんだ。きっと何か持っているはず……!」と思ってアプローチした結果生まれたのが、今月の新刊で早くも重版が決まったコチラの本です。
本書は10代の少年少女とその保護者向けの本です。
この2つの層に対する本を読んだことがありますが、非常に物足りないんですよね。というのは、できるだけどちらも刺激せず、核心には触れず、毒にも薬にもならないような、フワフワしたことばかり書いてある。
10代が本当に知りたいことって、親に聞けないものですよね。
一方、親は子に本当に伝えたいことは話しづらいはずです。
そこでかなえ先生には、そうした2つの層が本当に知りたい、あるいは伝えたいことを、少年院の先生としての経験や「犯罪学」の観点から語っていただきました。
たとえば、「10代同士でハメ撮りしたら犯罪になりますか?」とか……。
もちろん、性的なものばかりではなく、10代にとって切実な「いじめ」については1章分語っています。
私はこの「いじめ」関連の章を読むだけでも、本当に価値が高いと思っています。私がもし学校でいじめられていたら、これほど頼りになる味方はいないと思えるほどのことを教えてくれます。
さて、そんな犯罪学教室のかなえ先生『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』の「まえがき」をお届けします。
興味のある方は、ぜひ手にとってみてください!
まえがき キミが被害者にも加害者にもならないために
あなたは、自分が犯罪の被害者や加害者になることを想像できますか?
きっと、イメージできないという人がほとんどではないでしょうか。
では、質問を変えます。
あなたは、自分がいじめの被害者や加害者になることを想像できますか?
きっと、リアルにイメージできた人が増えたのではないでしょうか。
しかし、犯罪もいじめも同じ「悪いこと」です。そして、いじめそのものに犯罪の要素があったり、いじめの延長線上に犯罪が顔を出すこともあります。
誰もが、犯罪やいじめなどの被害者にも加害者にもなる可能性があるのです。
特に体も心も成長中の10代は、ふとしたきっかけや気の迷いで、足を踏み外すもろさがあります。
大人は子どもに何かを教えようとするとき、「寝た子を起こすな」とばかりに、つい無難な言葉を使うことがあります。
たとえば、「犯罪はいけません」「いじめはやめよう」みたいな。
こうしたスローガンは「つらくてもがんばろう」「いつかいいことがあるさ」などと一緒で、なかなか心に響きません。「またか」とうんざりする人もいるでしょう。
しかし本書では、少し難しいと感じる箇所もあると思いますが、10代の子とその保護者にとって、犯罪やいじめなどの被害者にも加害者にもならないためのできるだけリアルで、ごまかしのない、役立つ情報を伝えることを意識してまとめました。
私は「犯罪学教室のかなえ先生」という活動名でユーチューブチャンネル「犯罪学教室のかなえ先生 V Criminologist」を運営しているVチューバーです。
もともと少年院法務教官(いわゆる少年院の先生)をしていた経験もあり、「犯罪学」の視点をベースに事件や事故などを解説しています。また、私自身のいじめ被害・不登校経験から、いじめに苦しんでいる子どもたちや保護者にアドバイスをしています。
この活動を続ける中で、視聴者から「かなえ先生の視点で書かれた子育ての参考書や10代向けの教育書がほしい」という声をいただくようになりました。
日々、研究されている諸先輩方を差し置いて、本当に自分がこのテーマで書いていいのか、自分よりももっとふさわしい著者がいるのではないか……、と悩みました。
しかし、少年院に勤務していたときに、階段の踏み外しに気づかないまま犯罪者になってしまった多くの少年たちと関わりました。また、ユーチューブを始めてからは、かれらの過ちに巻き込まれてしまった被害者とも接するようになりました。
知識があれば防げたことがたくさんある。
被害者にも加害者にもならずにすむ方法がある。
そんな思いが強くなり、人生の土台となる10代の時期に起こりうる、困りごとや悩みに関して、自分の言葉で伝えたくなったのです。
プロローグでは、私の解説のベースになっている「犯罪学」について一緒に学んでいきます。実は、犯罪学という視点を手に入れることは、防犯にもつながります。さらに10代の自分をとりまく環境や社会を見る目が大きくアップデートされます。
第1章では10代であれば避けて通れないいじめ問題を考えていきます。そして、具体的な解決策を伝えます。
第2章では日常とは切っても切れないネットやSNSのつきあい方についてまとめました。炎上も怖いですが、SNSは犯罪の入り口にもなっています。
第3章では、2022(令和4)年4月1日から施行された改正少年法と、少年犯罪の現状、非行少年、そして新しく生まれた「特定少年」について解説しています。
第4章では、痴漢や闇バイトなど、10代の身近にある犯罪の、被害者にも加害者にもならないためのアドバイスをします。
そして、巻末には困ったときに助けてくれる専門機関や連絡先なども掲載しています。
本書を、自分やまわりの人を守るための盾としてご活用いただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(編集部 いしぐろ)