#330【ゲスト/心理】相手の本音は「微表情」で見抜け
このnoteは2022年2月15 日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
土屋:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める土屋芳輝です。本日は編集部の寺崎さんとともにお伝えしていきます。寺崎さん、どうぞよろしくお願いします。
寺崎:よろしくお願いします。
土屋:今日は素晴らしいゲストに来てもらっているんですよね。
寺崎:そうなんですよ。人間の表情とか、しぐさを読み解く専門家の方がゲストです。以前、本作りをご一緒させていただいた方でもあります。
土屋:そうなんですね。本当にすごいゲストの方に来ていただいております。本日のゲストは、株式会社空気を読むを科学する研究所、代表の清水建二さんです。清水さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
清水:よろしくお願いします。
一瞬の表情から相手の本音を見抜く
土屋:では、簡単に私の方から清水さんのプロフィールをご紹介させていただきます。清水建二さんは、株式会社空気を読むを科学する研究所、代表取締役。1982年東京生まれ。防衛省研修講師、特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問、日本顔学会会員、早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ばれています。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人でいらっしゃいます。微表情読解に関する各種資格も保持されているということです。このようなキャリアを誇る、清水さんなんですけれども、フォレスト出版からも本を出されたことがあるということなんですけれども。
寺崎:そうなんです。タイトルが『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』っていう書籍なんですけども、いわゆる「微表情」っていうのを解説した本で、「微表情」っていうのは、微妙の「微」という漢字を使っておりまして、人の言動に一瞬だけ現れる表情とかしぐさといったものから、その人の本音を引き出すという技術です。大きく分けて、この本ではまず1つ目に「顔の動き」、2つ目に「しぐさ」、3つ目に「声」、4つ目に「具体的な質問法」というところで、相手の本音を引き出す方法がまとめられているんですけども、言ってみれば表情やしぐさからただ漏れる潜在意識が露わになってしまうっていう、なかなか恐ろしいメソッドです。
土屋:そうですね。なかなか恐ろしいメソッドですね。これは本当に興味深いところなんですけれども。早速ですが、清水さんに色々と質問させていただきたいんですけれども、現在はどのようなお仕事をされているんでしょうか?
清水:簡単には分析業務、表情分析の業務と研修活動ですね。分析業務というのは、平たく言えば色んな国家元首とか、何かやらかした政治家、有名人が謝罪している時にどんな感情なのか、それをニュースで解説することもあれば、ある機関に頼まれて、その人の心理を表情から分析する。そんな仕事と、あとは研修活動でして、研修は色んな業務に携わっているんですけども、よくあるのが社員研修ですね。お客様の気持ちをちゃんと理解しようとか、あとは医療従事者が患者さんの気持ちに沿ったケアをどうすればできるかは表情にヒントがありますよってことなど、色んな業界に向けて研修活動をしております。
土屋:なるほど。研修と、あとは分析のお仕事なんですね。よくテレビで見ますよね。この人は何を考えているのかとか。
清水:そうですね。謝罪会見で、「本当に謝罪の気持ちがあるんですか?」とかね。そういうのを聞かれて、なかなか難しいんですけどね(笑)。
寺崎:ちなみに、プロフィールに防衛省研修講師ってあったんですけど、防衛省では何を教えているんですか?
清水:それ、聞きますか(笑)?防衛省でも表情の読み解き方、表情にどんな情報が込められているのかっていうのを教えていますね。すみません、抽象的な言い方になってしまうんですけど、そういうことです。
寺崎:ちょっと国家機密的な部分もあるんですか?
清水:なんでしょうかね。ちょっと分かりません、それは・・・。
寺崎・土屋:(笑)。
微表情研究のきっかけとなった狂言誘拐事件
土屋:なかなか言えないのかもしれないんですけれども、なぜこの研究ジャンルに興味を持たれたんでしょうか?
清水:はい。これは長くなるので、短くしますけど、興味があったらもっと聞いてください。簡単に言うと、狂言誘拐事件に巻き込まれたんですね。仲の良かった女性がいたんですけれども、その方が誘拐されたということで、警察と共に捜索するわけですね。で、色んな捜索をして、なんとか彼女が見つかったんですね。あるホテルにいることがわかって、警察が彼女を保護して、一緒にいた男を逮捕したんですね。そこで取り調べをして、男に「なんでお前は誘拐をしたんだ?」って聞いても、男は的を得ないと言うか、「誘拐なんかしてないよ」っていう話になったんですね。おかしいですよね。誘拐事件で、誘拐犯が「誘拐なんかしていないよ」って。で、彼女を問い詰めると、彼女が誘拐犯になりすまして、メールなどを駆使して、「自分でこの事件を起こした」って言ったんですね。「身代金要求も自分でした」って言って、自分でその誘拐事件を起こしたと。こういった狂言誘拐事件、自分で自分が誘拐されたってことを狂言として起こすということもすごかったんですけれども、警察の捜査で明らかになったことがありまして、彼女が私に伝えていた名前と年齢と仕事が、全部ウソだったんですね。
土屋:えー。
清水:全く関係のない人格を彼女は演じていて、私の近くにいたんですね。そういうことがあって、彼女自体がどんな人間なのかちょっとわからなくて、おかしい人なんですけど。結局、逮捕されてからは全然関係がなくなっちゃったので、わからないんですけど、そんなことがありまして、人間とは何なのか。人がウソをつく時ってどういう動機なんだろうか。どうすればウソが見抜けるんだろうかというところに興味を持ち、たまたまウソ検知の方法を探している時に、「微表情」というものに出会ったので、この研究ジャンルを突き詰めていったということになります。
土屋:すごい体験をされていますね。
寺崎:その親しかった女性っていうのは、当時の彼女っていうことですか?
清水:いや。彼女ではないんですよね。仲のいい女性でしたね。動機はわからないですけど、単純に色んな人に寂しさを求めて近づいてしまった人かもしれない。ちょっとわかりませんけどね。当時は私も20歳だったので、人間に対する見極めっていうのが出来なかったんですね。
土屋:ちなみにその女性は同じぐらいの年代の人だったんですか?
清水:女性は当時、16歳って言っていたんですけども、実年齢は23歳。
土屋:(笑)。年齢もウソか。
清水:年齢もウソだったんですね。
微表情で本音を見抜かれてしまう怖さ
土屋:すごい・・・。今、「微表情」っていう話があったんですけれども、そもそも「微表情」って、何なんでしょうか?
清水:「微表情」というのは、抑制された感情が、無意識のうちに一瞬だけ顔に出てくる現象です。具体的な数字としては0.2秒だったり、0.5秒ぐらいと言われていますね。ウソをついている時が一番典型なんですけど、例えば小さい子がイタズラをして、「〇〇ちゃんがやったの?」って聞くと、「僕、ウソついてないよ」と言いながら、一瞬ニコッと笑っちゃうとかね。わかります?
土屋:なるほど。
清水:会食の席に招待されました。食事を食べます。「美味しいですか?」って聞かれて、「美味しいです」って言うんだけど、一瞬だけ鼻に皺が寄っているとかね。そんな一瞬の出来事。これが「微表情」。感情を我慢しても出てきてしまう。それが「微表情」です。
土屋:本当にその一瞬なんですね。
清水:そうです。一瞬ですね。
土屋:それで分かってしまうというと。すごい。
寺崎:0.2秒とか、0.5秒でしたよね。
清水:そうですね。「微表情」は1960年代に発見されまして、その時は0.2秒ぐらいだって言われていたんですね。で、ずっと研究がされてきまして、近年、2000年以降で「平均は0.5秒ぐらい」ということで、昔よりはもう少し長い時間出ている現象だとわかってきたんですけども、それでも0.5秒ですから、なかなか肉眼で見るのは訓練しない限りは難しいと思いますね。
寺崎:清水さんは普段から相手の「微表情」を読み解いちゃう癖がついていたりしますか?
清水:そうですね。よく音楽が何でも音階で聞こえる方っていますよね。絶対音感。おそらく、絶対音感みたいな感じですね。普通にしゃべっていて、普通に表情の変化が全部入ってきますね。
寺崎:なるほど。本の打ち合わせで、一番初め、清水さんと会うのが怖かったですよ。
土屋:僕も今日怖いです。
清水:よく言われます(笑)。「そんなに皆さん、本音を隠しているんですか?」って聞きたいんですけど(笑)。
土屋:じゃあ、逆に一瞬を見抜けなかったら、なかなかわからないっていうことなんですか?
清水:そうですね。だから、私は結構自然に見えてしまうんですけども、普通の方で「微表情」を訓練し始めた方は集中して、ある質問を投げかけた瞬間とか、その瞬間に相手がどう思っているかって集中しないと、普通は見えないですね。慣れてくれば、いつ何時見ればいいかとか、わかってきますね。
微表情にはおもに7つのバリエーション
寺崎:よくこっちの思い込みで、この人はこういう人だって、ずっと付き合ってきたけど、何か事件が起きて「ええ!こんな人だったんだ!」っていうことがあったりするじゃないですか。だから、土屋さん、僕らも採用面接とかするじゃないですか。採用面接に清水さんに入ってもらって、人を見てもらいたいなって思いました。
清水:「第一志望です」とか、言いながら、鼻に皺を寄せるような・・・。鼻に皺を寄せるって嫌悪の表情なんですけども、「第一志望です」っていいながら、嫌悪が出たら、多分それは自己嫌悪なので、本当は第二志望、第三志望なのかもしれない。
寺崎:あと、どういう「微表情」のバリエーションがあるんでしたっけ?嫌悪が鼻に皺を寄せるっていうのと。
清水:基本的には7つありまして、もっといっぱいあるんですけけど、代表的なものが7つですね。幸福、軽蔑、嫌悪、怒り、悲しみ、恐怖、驚き。この7つが、万国共通、人類普遍、と言われているんですけども、その感情が表情に一瞬だけ「微表情」として、出ますよということです。
寺崎:それはもうウソがつけないんだ。
清水:そうですね。
土屋:日本人だけじゃないんですよね。万国共通なんですね。
清水:そうなんですよね。それが面白いですよね。
寺崎:しぐさは万国共通ではないっていう話がありましたよね。
清水:表情もしぐさも、文化的なものってたくさんあるんですけれども、特に表情に関しては万国共通で普遍的なものっていうの研究が進んでいたんですね。しぐさに関してもいくつかは万国共通のものはあるんですけどね。
寺崎:なるほど。土屋さんは、何か質問はありますか?
土屋:そうですね。逆にこれがわかっちゃうと、ちょっと人付き合いが大変になりそうとか、ちょっと怖いなってイメージもあるんですけど、そんなことはないんですかね?
清水:どうですかね。慣れなんじゃないですかね。例えば、仕事で相談を受けて、相手にアドバイスをすると。そのアドバイスに対して「そんなアドバイスもう分かってるよ」って、相手が思ったとするじゃないですか。あなたが言ったアドバイスなんてとっくに通り過ぎていますよと思ってしまいますよね。その時に嫌悪とか軽蔑とかが出るんですけども、それを見つけたとしても、相手の自尊心を認めてあげられるというか。そっか、そっか。相手はもうそんなことはクリアしているんだと。私は相手の悩みのもっと深いところまで理解できていないなと思えることができれば、人間的により大きくなれるんじゃないかなと思っていますね。
微表情が出ない人はどんなタイプか?
寺崎:基本的には抑圧された感情が出るわけですよね?
清水:そうです。
寺崎:そうすると、逆に全然「微表情」が出ない人もいるんですか?
清水:いらっしゃいますね。色んなパターンがありますけど、典型的なのは、感情が弱い方。感情が弱いというのは、精神疾患、うつ病とか。そうなってくると感情が死んでくるので、感情を抱かず、表情にも出ない。
寺崎:なるほど。
清水:なので、表情が死んでいる方っていうのは、心が病んできている証拠なので、リーダーとして、もし部下をたくさん持っている方だったら、よく見てあげたりとか、同僚だったり、家族だったら、絶対心配してあげるべきだと思いますね。
寺崎:そういう意味では抑圧された感情を抱えながら「微表情」に現れてしまうっていうのは、健全な証拠でもあるということなんですか?
清水:そうですね。
寺崎:なるほど。
微表情を自分でコントロールする方法
土屋:逆に「微表情」を習得するいうか、自分でコントロールってできるんですか?そこはもう完全に出来ないものなんですか?
清水:しようと思えば出来ますね。大きく分けると2つのやり方があって、1つは物理的に自分の表情筋、あらゆる表情筋を意図的に動かせるようになればいいんですね。例えば悲しくないのに、ハの字眉毛が出来るようになれば、悲しみが生じても、それを抑えることが出来ます。聞いている方はハの字眉毛をやってみていただきたいんですけども、多分意図的には出来ないです。眉の上げ下げは出来ますけど、眉間に皺を寄せるとか、眉を上げて額に水平の皺を寄せるとか、それは簡単だと思うんですけども、ハの字眉毛だけをきれいにするって結構難しいんですね。そうすると、我慢しようと思っても、ハの字眉毛が出てしまうっていうことですね。ただ訓練すれば、出来るようにはなります。
もう1つは物理的な方法じゃなくて、心の方法で、マインドコントロールですね。自分がウソをついていても、そのウソが悪いウソと思わなきゃいいんですね。このウソはより大きな大義のためにつかなきゃいけないウソなんだと。もし、マインドコントロールができるならば、例えば罪悪感とか嫌悪とか自己嫌悪とかは出てこないですね。それはおそらく高等技術でしょうね。
土屋:難しそうですね。
寺崎:でも大成する政治家とか、そういう人はやっぱりそういうのが上手いんですか?
清水:そうかもしれないですね。おそらく「Aというところには犠牲になってもらうけど、Bのために、より大きな利益のためにウソつくんだ」っていうのが、正当化出来るのであれば、出ないかもしれないですね。
寺崎:なるほど。面白いですね。じゃあ、清水さんもその表情は訓練をされて、出来るんですね?
清水:どんな表情でも出来ますね(笑)。
寺崎:今、ハの字眉毛を見事にやってのけていましたね。さらっと。すごいな。
清水:「微表情」をよく知っていると、意図的に動かせる筋肉と、動かせない筋肉の表情筋があるので、上手い役者さんとか、下手な役者さんがわかりますね。
寺崎:なるほど。そっか。
清水:やっぱりちゃんと感情が乗っている役者さんは表情もリアルなので、心を動かされると言いますか、上手いなと思うけど、いわゆる大根役者さんは感情も乗っていないし、表情もウソっぽいので、動くべき表情が動いていないんですね。恐怖の演技をしているのに、恐怖の表情筋が動いていなんですね。そうすると「変だな」って思ってしまう。
寺崎:ピクサーとか、ディズニーのアニメに、その「微表情」の研究が取り入れられているっておっしゃっていましたよね。
清水:そうそう。そうなんですよね。よりリアルなアニメーションを作るにはどうすればいいかということで、取り入れられていますね。
土屋:我々が感動しているっていうような作品は、いい役者さんが出ていたり、そういうところがちゃんと研究されて、そのようになっているっていうことですね。
清水:そうですね。
寺崎:今のアニメーションとかって、すごいですもんね。その辺の表情とかね。
清水:そうですね。本当の人間と変わらないような、CGとかもすごいですよね。
土屋:本当に表情って、奥が深いですね。ということで、ここまで清水さんの研究内容を中心に色々お伺いしましたが、ちょっとお時間が来てしまいました。明日もゲストにお越しいただけるということで、明日は、なんと今月、清水さんが出される最新作『裏切り者は顔に出る――上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』。興味深いですね。こちらの本が出版されたということで、こちらの新刊の内容を中心に詳しくお聞きしたいと思います。ぜひ明日もお聞きください。清水さん、寺崎さん、本日はありがとうございました。
清水・寺崎:ありがとうございました。
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)