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ショッキングな数字――子どもの虐待死、一番多いのは「0歳0カ月0日」

国際女性デーの3/8のYahooニュースで、毎日新聞の「生後0日の虐待死、20年間で176人 父親の半数は『不透明』」という記事が掲載されていました。

みなさんは、子ども虐待死が一番多いのは生後何日だと思いますか?
実は、「0歳0カ月0日」なのです。
非常にショッキングな数字です。「なんて酷い親だ。信じられない」「鬼畜とはこのことだ」「親も同じように苦しんで死ね」なんていう怒りの感情が湧くのではないでしょうか。
しかし、その背景を知ると、一般にイメージされている「虐待」とは異なる、別のさまざまな問題が絡んだ結果の悲劇だということが見えてきます。上記の記事でも、「男性の無責任さ」や「境界知能」に関する問題を言及していました。
以下は、今月発売されたチャリツモ『大人も子どもも知らない不都合な数字』の関連箇所からの抜粋記事です。


子ども虐待死が「0歳0カ月0日」が一番多い理由として、毎日新聞に記された理由のほかに、10代の若者の妊娠や外国籍の母親への社会的な支援や制度上の穴などについて触れています。子どもの虐待死を、その親1人(あるいは2人)のパーソナルな問題として見ると「死ね」の一言で思考停止してしまいますが、私たちが暮らす社会の問題として捉えると、自分の日常と地続きであることに気づくのではないでしょうか。


子どもの虐待死、一番多いのは「0歳0カ月0日」

#10代の若者 #外国籍の母親

2021 年度、日本国内で虐待により死亡した子どもは74人。そのうち心中により死亡した子どもは24人でした。
心中以外による虐待死をした50 人の子どものうち、亡くなった年齢で最多だったのは0歳児の24人(48%)。
子どもの虐待死のケースでは、0 歳児の中でも、とりわけ生まれたその日(日齢0日)に亡くなる子どもの割合が多いことがわかっています。
厚生労働省が2007 年から2021 年までの15 年間の子どもの虐待死を調べたところ、亡くなった747 人のうち、28.6% に当たる214 人が0 歳児で、そのうち過半数の127人が日齢0日で亡くなっていました。
日齢0 日児の虐待死が多いことは、さまざまな困難を抱えた出産が虐待死につながっていることを示唆しています。社会の中には、10 代での若年妊娠や、思いがけない妊娠、性被害の結果身ごもってしまったケースなど、妊娠したことを誰にも相談できないでいる妊婦が少なくありません。
誰にも打ち明けられないまま妊娠が進行してしまうと、病院で必要な検査を受けず、行政などの支援も得られぬまま、孤立出産にいたります。そうしたケースが赤ちゃんの虐待死につながることが、ままあるのです。厚労省の調査によると、過去20年間で虐待死した日齢0日児176 人のうち医療機関で生まれたケースは1 つもありません。母親たちは自宅のトイレや風呂場などで、たった1 人で出産(孤立出産)をしていたのです。

#孤立出産 #性教育 #特別養子縁組

「孤立出産」や「日齢0 日児の虐待死」の背景には、私たちの社会が抱えるさまざまな課題があります。
性教育が不十分であることや緊急避妊薬(アフターピル)を手に入れるのが困難なこと、人工妊娠中絶の経済的なハードルが高いこと、経口避妊薬も含めて人工妊娠中絶の際に配偶者の同意が求められるために女性が自分ひとりで決められないといった制度上の問題があります。
妊娠や中絶に対する社会の強いタブー意識や自己責任論もまた、妊婦が助けを求める声を上げづらくしています。
また、思いがけない妊娠などで生みの親が子どもを育てられない場合、生まれた子どもを養親が引き取る「特別養子縁組」という仕組みの周知も課題です。特別養子縁組は家庭に恵まれなかった子どもの命を救い、温かい家庭の中で健やかに育つ環境を用意するために1988年にスタートした制度です。制度ができてからすでに35 年以上が経ちましたが、いまも救われない子どもの命があります。
少子化が国難となっている日本は、「産めよ殖やせよ」といわんばかりに出生数を増やすことにやっきになっています。しかし、実際に生まれた子どもたちは、幸せに生きることができているでしょうか?
今も生まれて間もなく消えていく命があります。すべての命が安全に、健やかに育つことができるようサポートするのは、社会の責任です。

●こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第19次報告)(こども家庭庁、2023年)
https://www.cfa.go.jp/councils/shingikai/gyakutai_boushi/hogojirei/19-houkoku
●「こうのとりのゆりかご」第5期検証報告書(熊本市、2021年)
https://www.city.kumamoto.jp/hpKiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=36001


『大人も子ども知らない不都合な数字』では、上記のほかにも、さまざまな社会問題を、数字を切り口にイラストやグラフを交えながら70項目取り上げます。

社会問題に関心をもつきっかけになったらうれしいです。

(編集部 いし黒)

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