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#451【出版の裏側】書籍編集者が「これだけは譲れないこと」とは?

このnoteは2022年8月2日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める、今井佐和です。本日はフリートークで、Voicyハッシュタグ企画「これだけは譲れない」をテーマに編集部の森上さん、寺崎さんとお話していきます。どうぞよろしくお願いいたします。

森上・寺崎:よろしくお願いします。


「書籍タイトル」と「カバーデザイン」

今井:「これだけは譲れない」というテーマなんですけれども、森上さん、寺崎さん、いかがでございますか?

森上:せっかくなので、このテーマで本作りとか、そのあたりのお話ができたらなと思うんですけど。

寺崎:何かあります? 森上さんの「これだけは譲れない」ポイント。

森上:色々とありますけど、どの段階で、何に対してということによって変わってくるかなと思うんですけど。寺崎さんは何かあります?

寺崎:段階を追って言うと、まず企画をして、企画の段階の「これだけは譲れない」って何かあったかな・・・。

森上:1番わかりやすいのは、著者さんとのやり取り。そこが意外と「これだけは譲れない」と感じることが結構多い感じがするんだけど。例えば、「タイトルを決めます」っていった時。もちろん社内でも色々と検討するし、それを著者さんに提案するとかあると思うんだけど、その時になかなか・・・。特に著者さんの初めてのご本だったりすると、なかなか決まらないことって多くないですか?

寺崎:ありますね。タイトルとカバーデザインに関しては、やっぱり出版社がリスクを負うことだから、こっちで決めたいというところは譲れないっていうのはありますけど、おっしゃる通り、初めての本を出す方とかはこっちに預けてくれない、任せてくれないっていう、それは“あるある”だよね。

森上:あるある。売れる本を作りたいというところでは、同じゴールだと思うんだよね。ゴールは一緒のはずなんだけど、ちょっとずれているというか。これ、言っちゃっていいのかわからないけど、初めてのご本だから、意気込みもすごいじゃん。そのエネルギーって、めちゃくちゃ大事だし、我々もそのエネルギーをうまく活用したいなっていうのはあると思うんだけど。ただそのベクトルがたまに自分の方に向いちゃっている。著者さんご自身に。半径1m以内とか、3m以内の仲間にちょっと聞いてみたとか。そこじゃないじゃん、読者対象は。だから、ベクトルの向きが違う時があるんだよな。

寺崎:そこはどの著者も共通だと思うんですよ。やっぱりその方の周りってある程度は同質性を持って集まるんですよ、同じ嗜好性を持った人たちが。だから、そこで判断されちゃうと偏っちゃうんですよ。

今井:確かに市場とは違う枠組みですよね。

森上:そうなんですよ。1番難しいところなんですけど。我々が狙うべき読者さんはもっとその外側にいる人たち。もちろん著者さんの周りの方も当然大事。応援してくれる人もいるだろうから。でも、その中だけで判断されると困るっていうパターンはあるよね。

寺崎:そうですね。もちろん著者さんの名前で商品として出すからには、十分に尊重する必要があるし、それを我々はむげに「こっちで決めるんだ!」って言っているわけではないんですけど。

森上:もちろん、もちろん。

寺崎:そのせめぎ合いが毎回ありますね。

森上:ありますね。

著者とのせめぎ合いはどう解消する?

今井:そのせめぎ合いになった時はどうされていらっしゃるんですか?

森上:色んなパターンがあるにせよ、当然著者さんのご意向っていうのは最初は受けます。受け取った上で、こっちもそれなりに本作りのプロではあるので、客観的な情報っていうのをどう組み立てて整理するかっていうところだよね。

寺崎:そう。そうしたいカバーなり、タイトルなりの後付けの客観的な材料をたくさん用意して、例えば「今はこういう方向性がマーケット的に求められているから」みたいな話とか。そういうふうにして、なるべく主観でないかたちで説得していくっていう感じですよね。

森上:そうですね。これを言っちゃうのは1番最後なんだけど、「自費出版じゃないぞ」っていうところがあるんだよね。

寺崎:それは言ったことない(笑)。

森上:俺も直接は言ったことはないんだけど。「これは自費出版じゃないよね」っていうのが、この裏にある。

寺崎:そこまで言っちゃうと、もうけんか腰だよね(笑)。

今井:(笑)。

寺崎:「自費出版じゃねーんだぞ!」みたいな(笑)。

森上:いやいや(笑)。まあ、一言で言うとね。やっぱり出版社としてもリスクをそれなりに背負った中で、一緒にやっていく。でも、ゴールはお互いに変わらない。1人でも多くの人に買ってもらいたい。そこは変わらないということを常に共有しつつ、意見をぶつけ合うと。でも、経験上なんですけど、どっちの意見もどんどん融合していって、どんどん取り入れていくと・・・。

寺崎:だめ!

森上:だめだよね。

寺崎:絶対だめ!

森上:丸くなって、何の本かわからなくなるよね。

寺崎:方向性がわけわからなくなるよね。「結局、これは誰に向けた本なんだっけ?」みたいなことで(笑)、大概だめですね。多分、エネルギーの問題がある気がする。

森上:わかる。

著者と編集者が互いにリスペクトしあう関係が理想形

寺崎:エネルギーとか波動が乱れる。一本ダーンっと筋が通ったエネルギーが放たれないというか・・・。だから、逆に全部お任せしてくれる著者さんっているじゃないですか。タイトルもデザインも何でも。

森上:それはプロだからってことでね。

寺崎:そうそう。「プロフェッショナルですから」ってことで、全部をお任せしてくれる場合は経験上、うまくいく可能性が高いですよ。

森上:高いね。

今井:そうなんですね。

森上:だから、お互いにリスペクトし合っている関係。著者さんは中身、内容についてのスペシャリストなわけじゃないですか。それで本を作る、コンテンツ化するといったことは編集者がプロであると。プロ同士のリスペクトと信頼関係、それがハマっている場合はやっぱり上手くいくことが多いですね。

寺崎:著者さんから教わったんですけど、僕が初めて単行本の企画が通った時で、最後にタイトル、デザインを決めるところに差し掛かって、最初の単行本だから不安で不安で、いちいち著者さんに「タイトル、こんな感じですけど、どれにしましょう?」とか、「カバーデザインはこういうふうにしたいんですけど、この案とこの案があって・・・」って、相談ベースで連絡したら、「寺崎さん、タイトルとかカバーって編集者が決めるもんですよ」って。「著者が決めるもんじゃないですよ」って言われて、それで「あっ!」と思って。

森上:その著者さんは、そう言うっていうことは、結構分かっている・・・。

寺崎:そう。もう当時で何冊も本を出されていた方なんだけど。だから、その方も基本的には口出しすることはなかったですね、本作りにおいては。

森上:そういうことだよね。

寺崎:まあ、原稿は当然こだわって作るわけですよ。そこは著者さんの「これだけは譲れない」だと思うよね。

森上:編集者の「これだけは譲れない」っていうのは、やっぱりそこだよね。それが言いたかったんだけどね。

今井:(笑)。

森上:言いたいことまですごく時間がかかっちゃったけど、結局そういうことだよね。

今井:信頼がベースにあって、あとは任せたみたいな感じでやると、「これだけは譲れない」がうまくいって、売れるという感じなんですかね。

寺崎:そう。だから、「自費出版じゃないんで」って言われたら、もう終了だな。

森上:終了だよね。関係性崩壊だよね(笑)。

寺崎:それはね。

森上:だから、実際にそのあたりっていうのはどういうふうにリスペクトし合うか、そこは関係性っていうか・・・。どうなのかな。本を作っている最中は本文の方は大丈夫だけど、タイトル、カバーになった途端にいきなり崩れ始めるみたいなことってあったりとかしない?

寺崎:ありますよ。

森上:やっぱりタイトル、カバーのところってそういうことが結構多いのかな。

寺崎:そうだね。最後にプロダクトとして、名前を付けて、パッケージをどうするかっていうところは著者さんもそれなりのイメージをお持ちだから、そことこっちのイメージがずれるとキツイね。

森上:キツイね。まあ、「そこは譲れない」と言いたいね。そんな感じですね。

今井:心に秘めた「これだけは譲れない」はタイトルとカバーということで、本日はVoicyの#企画「編集者のこれだけは譲れない」をテーマにお送りしてまいりました。森上さん、寺崎さん、どうもありがとうございました。

森上・寺崎:ありがとうございます。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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