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4つだけ!仕事ができる人がいつも考えていること

その昔、ロジカルシンキングの講師に、「ふだん、ロジカルシンキングを意識して仕事をされているのですか?」と質問したところ、「ぶっちゃけ、意識することはほとんどない」と言われたことがあります。
「意識するまでもないほど、ロジカルシンキングがアタマに染みついていて自然と使えている」と解釈することもできるかもしれません。
一方、私個人の実感としては、ロジカルシンキングの本を読むとアタマが良くなったと満足する一方、それを意識的に日々の仕事に落とし込むことはできていません。
率直に難しいからです。
同樣の人は多いのではないでしょうか。
しかし、今月の新刊『仕事ができる人は4つのことだけを考える』(富沢裕司)でお伝えするロジカル思考は非常にシンプル。「合目的」「構造化」「論拠」「網羅」という4要素を少し意識するだけで、勝手にロジカル思考ができてしまうのです。本書はこれまでのロジカルシンキング本のなかでもっとも「シンプル」で「使える」本になっているはずです

以下、本書の「まえがき」を全文公開いたします。
「話がわかりやすくて仕事が早い人」になりたい方は、ぜひ手にとってみてください!


まえがき 本当に仕事で使えるロジカル思考

 本書は「話がわかりやすくて仕事が早い人」になるための方法を解説します。その方法とは、ずばり本書で私がお伝えする「ロジカル思考のスキルやコツ」です。
「ちょっと待ってよ、今さらロジカル思考?」と思うかもしれません。
 一般に「ロジカル思考」というと、基本的な考え方として帰納法、演繹法、弁証法など、 具体的な手法としてMECE、仮説思考、ゼロベース思考、ピラミッドストラクチャー、さらにさまざまなフレームワークを使った方法をイメージする人もいるでしょう。ロジカル思考とは一般にロジカルシンキング、論理的思考と呼ばれている考え方のことです。
 しかし、これらは学ぶのが難しいうえに、実際のビジネスシーンに落とし込むのは容易ではありません。 「本を読んで理解したつもりだけど、意識して仕事に活用することができない」という声をたくさんいただいています。同様の実感を抱いている読者も多いはずです。
 もちろん、できるだけ平易に噛み砕き、実践法を説くビジネス書もあります。しかし、それらと比較しても、私の「ロジカル思考」はもっとシンプルです。
 具体的には、「合目的」「構造化」「論拠」「網羅」の4つの要素からなる方法です。これらの要素を意識して実践することで驚くほど仕事がはかどるようになります。しかも、メールや資料作成、報連相といったコミュニケーションなどの日常業務から、大切なプレゼンや商談などの重要案件、そして問題解決まで、幅広く活用できるのです。
 私がこの方法を見つけるまでには、当然のこと、試行錯誤や紆余曲折を経たのですが、それは私のビジネス遍歴とともにありました。
 私は大学卒業後、三洋電機(現パナソニック)で経理財務の仕事からスタートし、5年目にドイツのフランクフルトに転勤して7年近く駐在し、最後の2年間は拠点長を務めました。ヨーロッパでの仕事では合理性、論理性を求められたため、実践的にロジカル思考を試すことになりました。
 欧米人の思考や行動は論理的で、日本人は論理的思考が苦手だという意見がありますが、実際は欧米人が得意で日本人が苦手ということはありません。ただ、日本人のほうがロジカル思考を重視していないことに気づきました。
「日本は生産性が低い」とずっと言われ続けています。それはロジカル思考が本当の意味で根づいていないからです。みんな教育程度も高く、真面目に業務に取り組みますが、ムダなことが多すぎて、日本は多くの時間を使ってしまいます。生産性が低いのはそのためです。
 その後、コンサルとメーカー勤務を経て、人材育成会社のプレセナ・ストラテジック・パートナーズで10年間ロジカル思考の講師を務めました。同社はロジカル思考の研修においてグロービスと双璧の会社です。そこで培った経験と知識をもとに2016年に人材育成を事業としたマキシマイザー株式会社を立ち上げて、独立後、引き続き企業向けの研修講師として現場に立っています。
 具体的にはロジカル思考、問題解決、経営戦略といった科目の研修を担当しています。これまでの13年間で研修の仕事をした企業は100社以上、一例としてトヨタ自動車、本田技研工業、パナソニック、日本製鉄、住友重機械工業、日本精機、大同生命保険、三井不動産、イオン、グンゼ、ヤマト運輸、リクルート、楽天、Yahoo、メルカリなど、さまざまな業種、業態の会社で研修を提供してきました。
 私は研修講師を務めながら、受講者が学んだことを十分に使いこなせないことに気づきました。みんなロジカル思考を仕事に活用しようとしながら、空回りしています。
 日本のビジネスパーソンのロジカル度が低いのは、既存の方法論に問題があるのではないかと感じて、ロジカル思考の本質をつかむために関連書を読み込み、理解しやすく、かつ実践しやすい方法はないか、従来のロジカル思考はなぜ使いづらいのかを考えました。
 その結果、「使えるロジカル思考」にするためにつかんだのが先にあげた4つの要素だったのです。「合目的」「構造化」「論拠」「網羅」の活用が、ロジカル思考の始めの一歩であり、究極のゴールだったのです。
 多くのビジネスパーソンは、ロジカル思考の大切さを認識しながら、自分の仕事の進め方がロジカルかどうかチェックできずに悩んでいます。しかし、それはこの4つで確認すればいいのです。

 合目的か?
 構造化されているか?
 論拠は整っているか?
 網羅しているか?

 報連相をしたときに、上司から「それで、要点は何?」と言われたことのある人がいるかもしれません。会議で発言したときに、「それじゃないよ」「話が長いな、何が言いたいの?」「本当か? 理由は?」「それだけ? ほかには?」などと言われたことのある人もいるでしょう。ロジカル思考ができていれば、上司、先輩、取引先などからこのような反応は生まれません。
 あなたが上司の立場で、部下に対して「そうじゃないんだよ」「理由は?」などと言うこともあるでしょう。あなたの仕事をスムーズに進めるためにも、部下にロジカル思考を身につけてもらう必要があります。
 そして、本書の内容を理解して活用すれば、きっとあなたは、そしてあなたの部下は、「話がわかりやすくて仕事が早い人」になっていくはずです。
 それだけではありません。
 現代はVUCA(変動性・不確実性・複雑性・あいまい性)の時代といわれています。状況がよくわからないまま急に変わる難しい状況、という意味です。だから何もわからない、のではありません。何がわかっていて、何がわかっていないのか。それを一歩一歩、ロジカルに整理していく必要があります。
 また、これからは仕事で生成AIを活用する場面も多くなっていきます。何のために何をAIに聞き、どのようなアウトプットをさせるのか? 生成AIは便利な道具ですが、手段の1つでしかありません。
 そして、AIを使って何のために何を導き出すか、果たしてAIから出てきた情報は正しいのか、その判断を行うのは人間です。AIは回答を「構造化」して提案してくれますが、それが「目的に合致」しているのかどうかを確かめる必要があります。そしてAIの答えを仕事で使っていいのかどうか判断するためには、「論拠」や「網羅」で確認します。
 これらはAIの主人である人間の役割です。本書でロジカル思考を身につければ、AIを効果的な道具として使いこなせる人材になれるのです。

 本書では、序章で総論として「ロジカル思考とは何か」を説明し、第1章以降でロジカル思考の具体的な方法である「合目的」「構造化」「論拠」「網羅」を、事例を交えて解説します。そして最後には実践編として、報連相、メール、プレゼン、会議など、具体的な仕事の場におけるロジカル思考の活かし方をお伝えします。
 本書を読めば、ロジカル思考の本質がわかり、ロジカル思考を活用した働き方ができるようになるため、ムダな時間が減るとともに業務の質が上がります。余った時間を活用して、次の新しい仕事にとりかかったり、あるいは学びの時間を増やしたりすることで、ビジネスパーソンとしてさらに成長することができます。
 本書の内容を実践すれば、明日からあなたの「仕事」が変わります。

 ロジカル思考の話に入る前に、ここで1つ強調させてください。
 それは「人は感情で判断し、論理で説明する」ということです。意味は、人は感情的に良いと感じたからその理由を後づけで話す。あるいは感情的に嫌だと感じたからその理由を後づけで話す、ということ。つまり判断を先に行うのは感情である、ということです。
 私の失敗談をお話ししましょう。ロジカル研修の講師になって自信がついてきたころ、お客様企業の人事部長と打ち合わせをする機会がありました。私が提案する研修を採用したいということです。その打ち合わせの場で、人事部長のお考えに対して、研修の専門家の立場から「それは違いますね、無理です」とストレートに伝えました。
 さて、この人事部長から感謝されたでしょうか。私の伝えた内容は有益だったと思いますが、その後、「別の研修会社に頼みます。イメージが違うので」と言われてしまいました。ほとんど採用が決まっていた研修が失注したのです。
 論理が正しくても、感情に配慮しないとビジネスはうまくいかない。そう気づきました。
 とはいえ、もちろん仕事では論理的な説明が求められます。ですから論理、ロジカルは大切。よって本書があるわけです。
「相手の感情は大切である」という前提のもと、論理、ロジカルのスキルを上げるためのコツや方法を一緒に学んでいきましょう。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 いしク”ろ)

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