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賢い人・偉い人も、「見たいもの」だけ見るとバカになる

私も一応Twitterのアカウントを持っているのですが、完全に見るだけ専門。著者になりそうな人や面白いことを発信している人などをフォローしています。
しかし、「面白いこと」といっても、判断するのは完全に私の嗜好が反映された主観。
タイムラインを眺めると、同じような思想的傾向を持った人が大半です。当然、共感できる意見が多く、「そうだよな」「よく言った」と膝を打つのですが、一方で、「世の中の大半の人は自分の考えに近い」と錯覚しそうになるので、脳内バランスを取るのがたいへんです。

「もしかして、私が耳を閉ざしてしまう意見や、唾棄すべきと感じている人の意見のほうが、実はファクトに近かったり、マジョリティかもしれない。もう少し俯瞰的に物事を判断しよう」と自分に言い聞かせるのです。

私が見るだけ専門に徹しているのは、一度自分の意見を書き込んだら、そうした距離を取りづらくなることがなんとなく想像できるというのが、理由の1つです。

事程左様に、人は「見たいもの」だけ見て、それ以外に目や耳を閉ざしがちです。それは意識的にそうしているばかりではなく、無意識的なこともあるので余計にたちが悪い。
そうした傾向をどこかで見直さないと、偏屈・狭量・意固地・狷介……といった人になってしまいます。

最近では、ある優秀な実績を残している研究者が、内輪だけが参加できる鍵付きアカウントでミソジニーを露呈していたことが発覚し、批判されたことが記憶に新しい出来事ではないでしょうか。
また、高齢の父親にタブレット端末をプレゼントしたら、ネトウヨや陰謀論者になってしまった、なんて恐ろしい話も増えていますが、これも偏った情報によって思考や人格まで偏らせてしまった典型例ですね。

そんな毒となる情報も氾濫している時代だからこそ、ここ最近増えているのが、情報を正しく選択するための方法を記した本です。
代表的なのが100万部を突破した『FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』。

最近では、ビル・ゲイツや読書猿さんが推薦してベストセラーになっている『Numbers Don't Lie: 世界のリアルは「数字」でつかめ! 』(NHK出版)も同ジャンルの本です。

以上の2冊は、統計や数字という側面からファクトに基づいた世界の見方を解説している本です。
一方、同様のコンセプトでも、数字ではなく「認知バイアス」という角度から解説したのが、本日2刷が決まった4月の新刊『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』です。

有隣堂アトレ恵比寿店様で『Numbers Don't Lie』と併売していただいてます。どうもありがとうございます!

「認知バイアス」という言葉をご存じでしょうか?
簡単にいえば、偏見や先入観、思い込みなどの、心のクセのことです。
たとえば、以下のような現象も認知バイアスです。

●恐怖からくるドキドキを恋愛感情と勘違いしてしまう「吊り橋効果」
●「押すなよ、絶対に押すなよ!」と言われると押したくなる「心理的リアクタンス」
●つい、周りに合わせてしまう「同調圧力」

こうした「心のバグ」ともいえる現象が、私たちの情報の受け取り方を大きく偏らせているのです。
そこで本書では、論理学・認知科学・社会心理学3つの専門分野それぞれで必要不可欠な20項目を厳選し、合計60項目にまとめ、図版やイラストを交えて解説しています。私たちの認知を歪ませる現象の多さに驚き、自分の偏った情報の受け取り方に気づかされることでしょう。
しかし、それこそが情報を正しく見るための第一歩。
なぜなら、認知バイアスを知らずして、自分が認知バイアスに陥っていることに気づくことは難しいからです。
ぜひ、本書を読んで世界や自分自身の見え方をアップデートするきっかにしていただけるとうれしいです。

(編集部 石黒)

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