「理想的な現状」から描いたビジョンはゴミである。
フォレスト出版編集部の寺崎です。
前回、人生のゴールは「現状の外側」に設定するという話をしました。
「でも、現状の外側にって言われても、なんだかよくわからない」
そう感じる方が多いのではないでしょうか。
そこで今日は「現状の外側にゴールを設定する」という、その具体的なやり方について、ふたたび苫米地英人博士の『「言葉」があなたの人生を決める』から抜粋・引用してお伝えします。
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人生のビジョンを描く練習
ルー・タイス自身も高校教師を辞めるに当たり、自らのビジョンを優先させました。
当時、コーチングという概念もビジネスもなかった時代に、彼は漠然とそういう仕事をやりたいと考え、確固としたビジネスプランもないままに職を辞しました。
ルーの行動は無謀に映るかもしれませんが、現状を脱しようとする人間というのは、多かれ少なかれこのようなものです。
ルー・タイスの言によれば、彼がそのとき一番に思い浮かべていた目標は収入でした。高校教師だったときの2倍の収入を得たい。自分はそれだけの価値がある人間だ。
こうした考えが、彼が自らの将来のビジョンを描いていく、入り口になりました。
ところで、ビジョンという言葉は、この21世紀、すでに手垢にまみれた言葉になっています。「ビジョンを説明してくれ」とか「あの人にはビジョンがない」とか、あらゆることにこの言葉が多用されています。そのいっぽうでビジョンとは何かという定義や内容は、嘆かわしいことに、ほとんど問題にされません。
ルーと私は、ビジョンを次のように定義しています。
「ビジョンとは、現状の外側にあるゴールを達成した将来に、その人が見ている自分と世界の姿のことである」
この定義が意味する重要なポイントは、現状を維持することで実現できる将来の「理想的な現状」をいくら思い浮かべても、それはけっしてビジョンになりえないということです。
とはいえ、人生のゴールの設定のしかたに慣れないうちに、私たちの定義に沿って厳格にビジョンを描きなさいというのは、いささか酷な話です。
そこで、あなたにはリラックスして、自由に、将来の自分の姿や、将来の自分が見ている世界の姿を思い浮かべることから始めてもらいたいと思います。
やり方は、あなたが自分の人生に何を望んでいるか、具体的に思い浮かべていきます。
まずは、どんな職業を望んでいるか。
どれくらいの収入か。
仕事ではどのような人々に囲まれているか。
どのようなクルマに乗っているか。
どのようなコミュニティに属し、どのような家に住んでいるか。
家族はどのような様子か。
そして、どのような精神生活を送っているか。
単に豪奢な生活がしたいとか、豪邸と高級車が欲しいといった、射幸心をもとにしてはいけません。いまの10倍の収入を得たいというのであれば、責任ある立場で辣腕をふるい、その対価として望みの収入を手に入れている自分の姿を具体的に思い浮かべていきます。
さらに、そのときのあなたはどういう人なのか、どんな行動をしているのか、周囲の人々にどのような影響を与えているのかなど、具体的により深く考えていきます。
これが、あなたが向かうことになる「目的地」決定への第一歩になるわけです。
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苫米地メソッドの重要な概念の一つに「コンフォートゾーン」という考え方があります。これは「居心地のよい空間」という意味ですが、今の自分にとって居心地のいい空間、場所にずっと居続る限り、人生は永遠に変わることがありません。
コンフォートゾーンから一歩抜け出すこと、これがつまり「現状の外側」を意味しているのだと思います。
とはいえ、居心地のいい現状はまさに「居心地がいい」からこそ、とどまっているのですから、なかなかその一歩を踏み出すのは勇気がいるかもしれません。