GXリーグの“適格カーボン・クレジット” 【ブルーカーボン】とは?
こんにちは。
一般社団法人フォレストック協会事務局の川西です。
先日4月19日GXリーグが「GX-ETSにおける適格カーボン・クレジットの活用に関するガイドライン」を公表しました。
適格カーボン・クレジットとして認められるクレジットの方法論は、
次の4つです。
① CCU(Carbon dioxide Capture, Utilization)
「二酸化炭素回収・利用」という意味で、分離・回収したCO2を利用する技術。
② 沿岸ブルーカーボン
海洋生物によって大気中の炭素が取り込まれ、海域で貯留された炭素。
③ BECCS(Biomass Energy with Carbon Capture and Storage)
バイオマス燃料を燃焼する際に発生するCO2を回収し、地下などに貯留する技術。
④ DACCS(Direct Air Capture with Carbon Storage)
大気中のCO2を分離・回収し、地下などに貯留する技術。
①③④は、まだ商業的に実用化されていないので、すぐに適格カーボンの申請が出されることはなさそうです。
今回の要件緩和で、最初に適格カーボン・クレジットとして認められそうなのが、②の沿岸ブルーカーボンです。
今日は、これから注目度が上がりそうな「ブルーカーボン」について解説いたします!
ブルーカーボンとは
ブルーカーボンとは、藻場・湿地・マングローブ林など、海洋生態系に取り込まれた炭素のことです。
日本でのブルーカーボンの取り組みは、藻場での海藻(コンブやワカメ)が中心になっています。(海外ではマングローブ林が中心)
海藻は大気中のCO2を光合成によって吸収しています。
実は、海洋は陸上よりも多くのCO2を吸収していて、特に海洋全体の
約40%を沿岸域(面積は0.8%)が吸収していると言われています。
つまり、沿岸域の藻場を維持・回復させることは、より多くのCO2を大気から吸収することにつながり、地球環境の保全にとって重要な活動なのです。
ブルーカーボンのしくみ
海藻とは、コンブやワカメのこと。
コンブやワカメって収穫されて、最終的には私たちが消費しているから、
クレジットなんてできないんじゃない??
と思うかもしれません。
でも実は、収穫されてもブルーカーボンクレジットは生まれるんです!
これを理解するには、ブルーカーボンが、どこに貯留された炭素量を認証しているのかを知る必要があります。
グリーンカーボンと比較してみてみましょう。
グリーンカーボンとは、森林が吸収する炭素量のことですが、これは植物の体内に固定される炭素量のことです。
50~80年で主伐(収穫)されれば、それまでに吸収した炭素の全量が排出されたことになります。
ブルーカーボンとは、生体そのものに固定される炭素量ではなく、生体を通じて吸収され、土壌や海水中に貯留される炭素量のことです。
コンブやワカメ自体にに固定された炭素ではなく、海底や海水中に貯留された炭素量を認証するので、収穫されてもクレジットが生まれる、というわけです。
土壌や海底、海水中で、炭素は数百年~数千年程度貯留されるので、グリーンカーボンよりも持続性が高い、という特徴があります。
Jブルークレジット
日本では、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が、2020年よりブルーカーボンに特化して認証を行う国内ボランタリークレジット制度を運営しています。
開始年の2020年にはプロジェクトは1件のみ、認証量は22.8トンでしたが、
2022年はプロジェクト21件、認証量3,733トン、2023年はプロジェクト29件、認証量約6,000トンと徐々に増えてきています。
プロジェクトの申請者は、漁業組合、自治体、企業、大学などで、それぞれが連携して共同プロジェクトとして申請されることが多いです。
Jブルークレジット認証事例
【プロジェクト名】
「北海道白老町いぶり海岸の人工リーフにおける藻場つくりと漁業振興」
【申請者】
いぶり中央漁業協同組合・公益社団法人北海道栽培漁業振興公社・白老町環境町民会議・白老町
【取り組み内容】
人工リーフにおける持続的な藻場の保全活動と漁業振興の両立を進めています。また、海に関する環境教育や海岸清掃などの啓発活動を通して、海の環境保全を進めています。
●いぶり中央漁業協同組合➡人工リーフにおけるウニの漁獲(間引き採取)、水産資源のモニタリングや資源管理
●北海道栽培漁業振興公社➡ウニ間引き、藻場保全に関する助言や取組協力、ドローン調査、環境教育への協力
●白老町環境町民会議 ➡環境教育(しらおい夏の海塾)や海岸の清掃活動(ヨコスト海岸クリーンアップ)
●白老町➡これらと連携した各種活動支援、ゼロカーボンシティへの挑戦を表明(R5.6)
このプロジェクトは今回の申請で、合計22.3トンのクレジットが認証されました。
参照:https://www.blueeconomy.jp/wp-content/uploads/jbc2023/2/shinsei/jbc00000029/jbc00000029-gaiyou.pdf
Jブルークレジット購入企業と購入理由
これまでに、商船三井や東京海上日動火災保険、丸紅、東ソー、JFEエンジニアリング、日本ゼオン、トクヤマ、東京ガス、など100社以上がJブルークレジットを購入しています。
なぜ買うのか。
JBEが実施したアンケート調査によると、
「地元での活動を応援したかった」
「活動している人や団体との付き合いがあり、応援したかった」
「活動プロジェクトそのものを知っていて、応援したかった」
など、地元企業や付き合いのある企業の活動を応援する、という理由が多いようです。
価格については、高値がついています。
21年度は、1トン当たり平均7万2816円。さらに22年度は同7万8036円に上昇しており、Jクレジットの森林吸収系と比較しても7倍近くと、かなり高いです。
購入理由を見ると、お付き合い?で買っているような印象も受けますが、
今後GX-ETSにおける適格カーボン・クレジットとして認められれば、取引が拡大していくかもしれませんね。
今後の動向にも注目していきたいと思います。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
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