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「ドライブ・マイ・カー」私の車で運転してください。

 『女のいない男たち』村上春樹の同名の短編を映画化。濱口竜介監督による2021年8月20日公開の日本映画。

言語 
日本語、英語、韓国語、北京語、ドイツ語

冒頭の "私の車で運転してください" 誰が?何処で?何故?あなたの車で運転をするのですか?が隠されています。

 舞台俳優であり演出家の家福 (かふく)の姓は珍しい。現香川県である讃岐国阿野郡福家村が起源(ルーツ)らしい。

彼の車の運転を頼むのは寡黙な専属ドライバーの渡利みさき

渡利姓は山陰地方、島根県の大田市江津市あたりの発祥らしい。しかし、彼女は「上十二滝村」の出身。(ロケ地となったのは赤平市)

 何が言いたいのか…
映画鑑賞は観る人それぞれに切り口があってよいと思う。

 濱口竜介氏は優等生の映画監督。極若い時に、自ら黒澤明監督と比較される偉業に「とても光栄」と語る。
世界中で彼の偉業は語り尽くされている。

 広島から北海道まで "渡利みさき" が運転する赤いサーブはスウェーデンの車で雪道にとても似合う。実際、暖房も素晴らしい。

 スウェーデンに住んだ事がある。運転していた…

五木寛之氏とスウェーデン南部のガラスギャラリーで出会った事がある。戸外の透明な空間も取り入れた美しい建物だった。

連れの女性と一緒だった。朝早い時間で他に人はいなかった。
後にその方の愛車がサーブ900だと語る記事を見た。すでに遠い話。

 『サーブは1947年、スウェーデンの航空機メーカーであるSAABの自動車部門として設立された。

空力を意識した独特のボディデザインや、航空機由来のターボエンジンなどが特徴だ。
1977年には量産車では世界初のターボエンジンを搭載した99ターボを発表。

1978年発表の後継モデルである900は、アメリカをはじめ日本でもヒットし、特にコンバーチブルモデルは熱狂的とも言える人気を博した。

その後、2010年にはGMからオランダのスパイカー・カーズに売却されるも経営破綻。

現在は経営を引き継いだ企業が製造再開を目指している。』 

「15年乗って故障がない。」家福が語る。ここに村上春樹のこだわりがある。

 三浦透子と西島秀俊が並んでサーブのサンルーフから煙草を指に挟んでしばらく差し出すシーンは観る人の心を捉える。

前から、後から、横から、空から走る、停まる、ドアを開ける…何度も何度も繰り返し映画の中で赤いサーブは撮られた。

彼らは広島から北海道にフェリーで渡りさらに北上すると雪の中。ノーマルタイヤで走行してスノータイヤを乗せている訳はない。

途中、長靴や防寒着を調達したシーンは確かにあった。雪国ではスノータイヤに履き替えないと走れない。監督は雪国の方ではないので最重要視点ではなかった…

 現実、チェーホフ『ワーニャ伯父さん』どころではなくなってしまうところ物語にのめり込んでいく。

キャスト

『西島秀俊(家福悠介)
三浦透子(渡利みさき)
霧島れいか(家福音)
パク・ユリム(イ・ユナ)
ジン・デヨン(コン・ユンス)
ソニア・ユアン(ジャニス・チャン)
アン・フィテ
ペリー・ディゾン
安部聡子(柚原)
岡田将生(高槻耕史)』

 濱口竜介監督の映画は「悪は存在しない」を初めて観ました。

イタリア版イラストのビジュアルポスターは目を惹きましたが、パンフレットのあらすじの内容が当地での経験と重なり興味を持ちました。

各地でコロナ以後、同じような経験した方々はたくさんいらっしゃると想像します。

『濱口作品はテキストを、感情を入れずにゆっくりと読ませ、体に染み込ませていく手法。
監督自身の演出技法とのこと。』

この独特の「演技技法」に多くを語ったから理解して貰ったと思うのは大きな間違いだったと気がついた。

 実際にグランピング説明会での住民との話し合いは内容よりそれぞれの方々の個性がでて切羽詰まるものがあり次回に持ち越した。

善、悪の判断ではなく置かれた立場により考えも変わると感情論にはならなかった。(立場論を論ず学者もいる)

責めるのではなく気持ちを伝える。監督の言うテキストを読むことが相手の心に落ちる。

 しかしながら、濱口竜介監督は「個」になると感情が露呈する。
息を呑むようなエンドと化する。

故に、濱口映画は想像力を増し、深く印象づけられる。


追:この映画での家福こと「西島秀俊」は漫画家よしながふみの「きのう何食べた?」でシロ役(Netflix)で知った。真面目な弁護士役(自炊人)

友達に同姓同名もいて、インパクトのない姓名ですぐに忘れる。
逆手にとっているのか丁寧に役を生きている。(雑感)

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