【最速公開】どこよりも早い、池田良子「実子誘拐ビジネスの闇」(飛鳥新社)読書ノート【ネタばれあり】(その5)
〔写真〕あまりにも表紙が恥ずかしいので、カバーかけてもらいましたw
【前記事】
こんばんは。
もはやミッションコンプリートだけが使命となった惰性感漂う本連載はさっさと終わりにしたいと思っています。
今日は第4章P.128から。
ちょっと書き方を変えて、第4章と第5章のあらすじを書いておきたいと思います。
第4章 「片親疎外という児童洗脳」
(要約)
題材は、2020年4月16日の最高裁第一小法廷決定から。(本書では「判決」と書かれているが誤り)
これは、ロシア人の父と日本人の母との間に生まれた子どもの返還をめぐる裁判で、いったんなされた返還命令に、子が拒否したため、母親が国内実施法117条1項に基づき、終局決定の変更を求め、最高裁判所はこれを認める決定をしたものです。
筆者は、これを、①国内実施法の悪用、②子の意思のデュープロセス違反(なんだそりゃ?)、③法の支配の放棄と非難しており、その背景に、判検交流の存在(はあ?)、片親疎外をけしかける弁護士たちの存在、妄想判決を下す裁判官の存在などを挙げ、最後は星の王子様まで繰り出して(w)、日本の司法が親子を引き裂くと嘆いて見せる云々。
片親疎外はただの似非科学である
まず、本書で筆者が論拠として挙げる片親疎外でありますが、これはただの似非科学です。
例えば、共同親権推進派は、アメリカのDSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)に掲載されているとか、WHO(世界保健機構)のICD-11に掲載されているといったデマを主張しますが、いずれも事実ではありません。
ICD-11の策定過程でいったんはインデックスに載りましたが、科学的エビデンスがないことから削除されています。
日本の専門書籍でも片親疎外の紹介をされる際は、「科学的エビデンスはない」「医学上の根拠はない」旨の脚注が入ることが一般的です。
著者の池田氏は、非科学的な主張を鵜呑みにしているに過ぎません。
判検交流という陰謀論
筆者は、前掲(要約)で掲げた国内実施法の”穴”が、判検交流で法務省に出向した裁判官によって作成されたという趣旨の主張をしています。
「法務省に出向している裁判官は最高裁のコントロール下にある。したがって、この骨抜きになった国内実施法作成過程に最高裁の意向を反映しているのは疑いない。」とし、2020年4月16日の最高裁決定を「自作自演」と非難しています。(P.131)
国内実施法の返還拒否事由はスイス法が参考にされている
しかしながら、そもそもこれは国内実施法の制定経緯を全く無視しています。
まず、国内実施法の制定にあたって法務省は原案を作成していますが、その後2年近く法制審議会で議論がされています。また、2011年の国内実施法案策定時にパブリックコメントを実施し、アメリカなど6か国の政府から意見書を受け取ってもいます。
筆者の池田氏が問題にしている返還拒否事由については、スイス法が参考にされていることが分かっており、日本の”裁判官”たちの自作自演は到底ありえません。前回記事でも述べたように、DV対策を事実上の国際公約として批准方針を表明したわけですから、実施法にDVを理由として返還拒否が可能となるのは何らおかしなことではありません。
そもそもでいうなら、著者の池田氏は前章までと同様、自己の主張になる根拠をほとんど示すことはなく、空想に基づく強弁と罵詈雑言を並べ立てているだけです。
第5章 家族を壊す日弁連という危険分子
この暴走は、第5章に最高潮を迎えます。
おそらく彼女にとっては、最大の標的であろう、弁護士バッシングです。
この記事でもご紹介しましたが、まあ、有名弁護士の名前が挙がること、挙がること。。。
「危険分子」「赤い旗を振り回す」「イデオロギーで妄想」「ナチス将校(どっちがじゃい)」…「収容所群島」や「ザ・フェデラリスト」まで繰り出して、悪口雑言罵詈讒謗。
この章の最後は北朝鮮拉致問題で締めくくられています。
。。。読後感としてはなかなか要約が難しい(要するにバカバカしい)内容なのですが、よくもまあ、ほぼ面識がないであろう弁護士の先生方を、こうもまあ悪し様に。。。
自分の至近距離で殴られる心配がない、という絶対の自信を感じます。
この章は、「養育費ピンハネビジネス」だの「子ども拉致国家」だののキーワード繰り出していますが(日弁連にそんな国家権力があるなら、是非もっと発揮していただきたいw)、読後感としては、そこは著者にとって本当に大事なところではない。
要するに「実子誘拐ビジネス」に借口したサヨク批判本(ネトウヨ本)なのです。サヨクが叩けるから実子誘拐と批判しているだけなのです。
なので内容の検証も省略します(手抜き)。
なぜ、私が「妄想」ではなく、推理としてそれを語れるのか。
私の推理に強力な根拠を提供してくれる人物が、次章に登場するからです。
(この連載もラスト2回!!)
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