【最速公開】どこよりも早い、池田良子「実子誘拐ビジネスの闇」(飛鳥新社)読書ノート【ネタばれあり】(その7・完)
〔写真〕ついに裁断処分w
こんばんは。今夜はちゃちゃっと、1時間で集中してまとめを書いておきます。
第二の「日本国紀」なみのコピペ本
ます、本の体裁としては、ノンフィクションの体裁すら守っていない代物です。
これまで検証してきたように、ほとんど取材していない。
著者の主張の根拠となる材料は、ほぼ全てネットで手に入ります。
やってはみせていませんが、ハンナアーレントだのハイエクだのソルジェニーツィンだののの引用箇所も、かなり有名な部分を引いているので、ネットに落ちているのでは?とすら思っています。
途中、瀬木比呂志氏と森炎氏の著作が引用しますが、両氏の著作の論旨が意図しない形で引用がなされています。
おそらく、取材は卒田氏へのインタビューを1回やっただけです。
これはもはやノンフィクション(創作が混じらない)ではない。
本を作る誠実さが全く欠けています。
吹き荒れる誹謗中傷と罵倒の嵐
ずっと読んでいて思っていたのですが、この本、共同親権推進派にとって面白い本なのでしょうか?
反対の立場に自分が立ったとしても、面白さが全く分からない。
説得力のない、誹謗中傷と罵倒を書き連ねているだけだからです。
あと、陰謀論。
「そうだそうだ!」とか思いながら読んでいるんですかね?
だとしたら、読み手としての知性が死んでいますね。
後述しますが、ネトウヨ雑誌「Hanada」で掲載された連載一覧と、本書の構成はかなり食い違っています。
当時の連載を読んだ方なら、もっと期待したはずです。
ところが、告発スクープの共著者の記事が消え、三谷氏の寄稿記事も一部引用にとどまり、膨大な罵詈雑言が追加されています。
共通する部分はそのまま転載され、書き下ろしは行われていません。
こんな「進化」を読者として期待していたのでしょうか?
そういう問いを自分に向けない人は、知性が死んでます。
メルトダウンした主張
(その6)で検証したように、最終章で著者の主張はメルトダウンを起こしてしまいました。
フレンドリーペアレントルールがそんなに大事なら、第3章や第4章でハーグ条約に触れる必然性は全くないし、DVシェルターの話もいらない。
(その6)で取り上げたように、著者の中ではフレンドリーペアレントルールが、実子誘拐ビジネスの様々な組織を一網打尽にする万能薬という位置づけなのでしょうが、とすると、共同親権が論理的には不要になる、というジレンマがあるはず。
が、著者には、論理的整合性はどうでも良いのでしょう。
それが詰まるところ、フレンドリーペアレントルール激推しという結論なわけです。
フレンドリーペアレントルールは誰に向けての発言なのか?
特に最終章は、離婚後共同親権推進派に対する訴えと読んで良いと思います。
どうしてそう断言できるのか。
共同親権推進派の冷ややかな反応
twitterで「実子誘拐ビジネスの闇」と検索してみてください。
すぐに見終わりますよ。
今、やってみせましたが(2021/4/30 23:30)、4分で全部チェックできました。
この本は新刊であるにもかかわらず、100ツイートも反応がない。
amazonのレビューも10もないですね。
よくあるビジネス本のレビューと桁違いに少ない。
日本国紀フィーバーに対峙したこともある身としては、当惑を覚えます。
有名アカウントで反応しているのも、この人くらい。
書店の配置状況も偵察してみましたが、売れるような置き方でもありませんでした。
彼らの冷ややかな反応だけではなく、状況証拠はまだあります。
消えた共著者と消えた登場人物
もとになった連載は、ネトウヨオピニオン誌「Hanada」での連載ですが、このような内容でした。
2020年5月号 第1弾 牧野のぞみ「告発スクープ! 「実子誘拐ビジネス」の闇 人権派弁護士らのあくどい手口」※第2章に相当
2020年6月号 第2弾 池田良子「告発キャンペーン第2弾! 「実子誘拐ビジネス」の闇 ハーグ条約を"殺した"人権派弁護士たち」※第3章に相当
2020年8月号 第3弾 三谷英弘「諸悪の根源は「単独親権」 : 「実子誘拐」告発キャンペーン第3弾」
2020年9月号 第4弾 池田良子「「実子誘拐」告発キャンペーン第4弾! 「片親疎外」という児童洗脳 : 司法の黒い霧」※第4章に相当
2020年12月号 第5弾 池田良子「「実子誘拐」告発キャンペーン第5弾! 家族を殺す日弁連という危険分子」※第5章に相当
おそらくこれに加わる連載として
2021年6月号 橋本崇載八段独占手記「『実子誘拐』は犯罪だ」
が加わるのでしょう。
実は、第1弾の牧野氏の連載記事は、非常に反響を呼んだらしく、異例の大増刷がかかるほどでした。
この時は、英訳版まで配信されています。
ところが、本書で第1回の連載記事を担当し、実質的に第2章を担当したといっていい牧野氏の名前が本書にはない。
これは著作権法上、同一性保持権の侵害リスクがあります。
ところが、牧野氏は不気味に沈黙しています。
この1週間ほどtwitter上で調べてみましたが、告発スクープの"共著者”であるはずの牧野氏からは何もコメントはなく、ご自身が別メディアに載せた記事で冒頭紹介したうえで、このツイート。
※ご本人は明言していませんが、Hanadaでの「牧野のぞみ」名義の連載記事は、経歴がほぼ共通する、下記の牧野佐知千子氏とみられます。
三谷氏も今のところはコメントありません。
そんな中で、一人で空回りするほど本書を推しているのは、参議院議員の嘉田由紀子氏です。
橋本氏とも手際よく面会したばかりか、早速国会質疑にこの本の「見本」なるものを引用して質疑しています。
※嘉田氏への批判記事はまた改めて。
要するに大がかりではない。
それから本書ではノンフィクションを騙っていますが、なぜか実名が挙がっていない登場人物が少なくとも3人います。
P.81でFPICへの国会質問をぶつけた公明党の浜地雄一氏。これは本書では、公明党・創価学会は「敵対勢力」認定されているため、自己に有利な質問をした公明党国会議員の名前は伏せておきたかったのだと思われます。
そのほか、P.98の「中立的立場にある弁護士」は、おそらく安藤一幹弁護士と考えられます。(名古屋ヒラソル法律事務所代表)
バリバリのフレンドリーペアレントルール支持派の弁護士であり、全く中立ではありません。
P.103の「ある女性弁護士」が名前が伏せられていますが、これは(その3)でご紹介した通り、共同親権推進派である古賀礼子弁護士。
この2人については、中立を騙って元妻側弁護士たちを糾弾する役割を担っています。
ただ、本人たちにこうした引用方法の許諾を取ったかは明らかではありません。
それから、虚偽DVを盛んに喧伝しながら、最後まで虚偽DV訴訟を取り上げなかったのは不可解の一言に尽きます。
盛り上がりに欠ける新刊キャンペーン
また、今回、いくつか書店を回ってみましたが、新刊の扱いは非常に冷ややかで、平積みで置かれている書店はほぼありません。
発売時期が、新型コロナウィルス対策の一環として、都内の大型書店が全て休業している煽りもあったでしょうが、ネットでの展開とは反比例した冷ややかさです。
おそらく、初版はそんなに刷られていない。
あるいは、緊急事態宣言解除後に仕掛けたいのか。
新型コロナウィルス感染拡大と重なったため、推理が難しいところです。
ネトウヨ本は量産されることに意味がある
この本自体の検証はこれで終わりですが、この本の意義について一言。
ない。
ただし、この1冊では。
小林よしのりの本を嚆矢とする、ネトウヨ本の流布のキモ・要諦は、本の中身ではありません。
大事なのは量産されること。
悪貨は良貨を駆逐する、という諺通り。
良書を駆逐し、書店の棚を「占拠」し、ヘイトスピーチが市民権を得るがごとき状況を作出する。
中谷彰宏氏の本ではありませんが、一冊一冊は、"製造単価”は安いのです。
この本もほぼ1回も取材していませんから、単価は激安のはず。
量産し、多彩なヘイト本をラインナップ化して棚にならべ、占拠することで読み手の思考を奪い取ることが真の目的です。
そうやって離婚後共同親権を着実に手繰り寄せる。
本を売るのに知的誠実さのいらない時代というのは、まことに不幸なものですね。
(この連載終わり)
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