行政事務職員の私がなぜ社会福祉士の資格を取得したのか?vol.2 社会福祉士って何?
「行政事務職員の私がなぜ社会福祉士の資格を取得したのか?」について、シリーズものでお届けしています。
目的は、次のとおりです。
・行政事務職の方に社会福祉士を知って欲しい。
・社会福祉士をめざしている方を応援したい。
・地方公務員をめざしている方に福祉行政の仕事をお伝えしたい。
前回は、”はじめに”と題して、行政の事務職と専門職について述べました。
また、私は「福祉分野をライフワークにするための基礎固め」として社会福祉士の資格を取ったと述べました。
これからは、本編ということで、次の〈目次〉の構成で何週かに分けて述べていきます。
<目次>
1 社会福祉士って何?(今回の内容)
(1)社会福祉士の概要
(2)社会福祉士の技能
①福祉制度などの知識とは?
②相談援助スキルとは?
③倫理観について
(3)社会福祉士の活躍の場
(4)社会福祉士の資格をとるメリット・デメリット
以下、次回以降に予定している内容
2 なぜ行政事務職員の私が社会福祉士をめざしたの?
3 どうやって社会福祉士になったの?
4 実際に勉強してみて基礎固めになったか?
5 これから私はどうしたいか?
6 社会福祉士に興味を持たれたあなたへ
今回は、”1 社会福祉士って何?"について述べます。
この問いへの一般的な答えは、ネット検索で調べたら豊富に出て来ますが、ここでは、行政事務職員の私にとって新鮮だった要素を中心にご紹介したいと思います。
1 社会福祉士って何?
(1)社会福祉士の概要
さて、そもそも社会福祉士ってどのような資格でしょうか?
ひと言で言うと、福祉に関する相談援助を行う人です。ソーシャルワーカー、あるいはそれを略してワーカーとも言われます。
でもそれとは別で、社会福祉とは何か?と言った疑問も出て来そうですね。このことについて、古川孝順氏は、次のように述べています。
単に、"福祉"と言うと"状態"を表しているように思えますが、"社会"がつくことによって福祉に関する課題の"動的"な解決を図るための"仕組みづくり"と"実践"を包含するように思えます。
また、法律には、次のように定められています。
法律においては、社会福祉士は、「専門的知識及び技術」をもって、「日常生活を営むのに支障がある者」の「相談」に応じ、「助言」、「指導」、「福祉サービス関係者等」との「連絡及び調整」、「その他の援助」を行うことと定義されています。
(参考)社会福祉士の概要について、厚生労働省
言葉の整理はこのぐらいにして、単純にどんな印象の方かという事を、私が3年間、福祉事務所に勤務した間に数十人ほどの社会福祉士の方々と関わった経験による主観的な印象としてお伝えしますと、その方々は介護支援専門員や精神保健福祉士などの複数の資格を持たれる方が多いですが、クライエント*主体、誇りを持ち毅然とした態度、幅広いネットワーク、明るく前向き、こんな言葉が並びます。
*(注)クライエント:社会福祉士が相談援助を行う相手のことを「クライエント」と呼ぶことがあります。それは、単に制度を利用する人という方に加えて、制度があることを知らない人を見つけ出し、制度の利用を提案する相手という意味も包含しているように思えます。このブログでもクライエントという表現を用います。
また、能力的な事としては、先ほどの法律にも一部記載がありましたが、①福祉制度などの知識、②相談援助スキル、そして根底としての社会福祉に関する③倫理観を有していることがあると私は整理しています。
ひとつひとつ解説していきます。
(2)社会福祉士の技能
(2)-①福祉制度などの知識とは?
まず、“①福祉制度などの知識”について、それはとても幅広く、年金、医療、介護、児童、ひとり親、老人、障がい者、生活困窮者など多岐にわたっています。
社会福祉士は、それぞれの制度について細かく把握する必要はありませんが、必要時にクライエントを各種制度に繋ぐ役割がありますので、幅広く最新の知識を有する努力が必要です。
また、これらの知識は、単に今述べたような公的(フォーマル)制度だけでなく、地域活動のような地域によって特性が異なる非公式(インフォーマル)なものも含めたものとなります。
(2)-②相談援助スキルとは?
次に、“②相談援助スキル”とは、冒頭でも少し触れましたが、クライエントの意思や力を尊重し信頼関係を構築しながら、当人だけでなく、その環境、例えば、地域や職場、社会全体にも働きかけて、心身や社会的に充実した生活を過ごせるよう、個々人に合わせてサポートする価値意識と言えると思います。
さらには、相談援助活動を通じて社会課題を発見し、新たに必要な社会資源を開発する(促進する)役割もあり、知識を超えた創造性が必要となってきます。
相談援助技術の基礎としての具体的な例示として、2つご紹介します。
ひとつ目はエンパワメントアプローチです。
これはクライエントが持つ力を活かした支援方法です。
支援には終結があります。利用者が自分で出来る事をしながら、ご自身では難しい事について社会制度を利用するなどして自立していけるよう支援することです。黒人の方の差別解消運動から生まれた概念のようです。
私は、エンパワメントの考え方を社会福祉という限定された分野だけでなく、普段の仕事でも常に意識してます。仕事はチームでするものですので、個々のメンバーの力が発揮されるとチーム全体として大きな力を出せるのです💪
ふたつ目は、支援する側がクライエントに向き合う際の心構えを示したバイスティックの7原則です。
7原則とは、次のとおりです。
①個別化、②意図的な感情表出、③統制された情緒的関与、④受容、⑤非審判的態度、⑥自己決定、⑦秘密保持
私は、特に④受容、⑤非審判的態度は、円滑かつ柔軟に業務を推進するためのコミュニケーションの基本として、仕事の中でも大事にしてます。
少し掘り下げてお伝えすると、受容で勘違いしやすい事は、クライエントを理解する事では無いということです。
何を考えているかが分からなかったとしても、クライエントの発言があったことを事実としてただただ受け止めるのです。
例えば、ピンクが好きだという人がいるとします。あなたは、それを不思議に思えるかもしれません。
そこで、あなたは、その人がなぜピンクが好きなのかを理解しようとして、「なぜ好きなの?」と聞きます。しかし、それに対する返事が理解できなかったとします。
あなたは無意識のうちに焦ってしまい、何とか理解しようと探り続けたり、あるいは理解出来ないことであなた自身が落ち込んだり、はたまた、相手を理解できない人だなあと決めつけるかもしれません。
受容するとは、ただただ、ピンクが好きなことを個性として穏やかに受け止めることです。
ただし、これがチームで行う仕事ですと、仕事の目的や役割分担などについて、メンバーが理解し合わないと目標は達成できませんね。
今回は詳しく述べませんが、受容はコミュニケーションの基礎となる信頼関係構築の要素であり、それがあって初めて相手はこちらの話にも耳を傾けてくれるものだと感じます。
次に、非審判的態度です。留意する点は、“的”と“態度”が付いている点にあります。
審判とは、相手を一方的に裁くような、上から見下すような感じがします。
ここで気をつけることは、相手を注意するという目的があったとして、審判にならないようにすることです。
つまり、相手が行った行動、考え方のつじつまが合わない部分のみに焦点を絞り、相手の人格全体を批判する事のないようするということです。主語は相手の丸ごとでは無く、相手が取った行動にするのです。
そのために、言葉遣いはもちろん、審判のようにならないようにするという、態度にこそ注意が必要だと思います。礼儀と言ってもいいかもしれません。無意識のうちに感情が顔に出たりすることがあると思うのでなかなか難しいことだと思いますが。。
詳しくは次のホームページなど、説明が沢山ありますのでご覧くださいね。ちなみにバイスティックとは人名です。
(2)-③倫理観について
③倫理観については、次のソーシャルワ-クのグローバル定義をご紹介します。
これだけご覧いただくと抽象的なことばかりで何だか分かりにくいかと思います。私自身、最初に見た時に違いがよく分かりませんでした。しかし、このような価値意識を念頭に置き、定期的に反芻することで、視野を広く持ち、多角的な視点で物事を捉えることに繋がると思います。
また、ソーシャルワークと言えば個別支援をイメージされる方が多いかもしれませんが、そうした個人や家族などのミクロレベルの支援から、地域を含めたメゾの活動、地方や国の政策レベルからグローバルといったマクロの視点もあります。
(3)社会福祉士の活躍の場
では、社会福祉士は、実際にどのような職場で活躍しているのでしょうか。
実際に活躍する場としては、例えば司法書士の方のように事務所を持って働くような社会福祉士の割合はごく一部であり、介護施設や医療施設、福祉施設、行政など組織に所属している方が多いようです。この話は、この程度に留めておきます。
(4)社会福祉士の資格をとるメリット・デメリット
社会福祉士は名称独占の国家資格です。社会福祉士国家試験に合格し登録すると名乗ることができます。一方で医師や理容師のように業務独占ではありません。
一般的には、公的相談機関の専門職採用枠の任用資格として、社会福祉士などの資格に加え、実務経験を有するという採用枠があるため、働き口が広がるという物理的メリットはあるかと思います。
また、私個人としては、社会福祉士会に入会する事で、そこが主催する専門研修に一社会福祉士として参加して継続的に学んだり、意見交換の中で現場の情報を多角的に仕入れたり出来るメリットがあると考えています。
心理的メリットとしては、基本的なスキルを身に着けることで、より適切な支援につなげることができるという自信、というか決して諦めず前向きに考えていく力になると思います。度が過ぎると自己満足になりかねませんが。
次に、デメリットを考えてみました。
私が思うに、社会福祉士の理念と組織のミッションに齟齬が生じた場合、そのジレンマに悩むことであるとも言えるかと思います。
例えば、限られた時間の中で支援をしていく中で、本当なら時間をかけてこういう支援がしたかったという理想とのギャップに悩むことが出てくるかもしれません。
しかし、例えジレンマを抱えてその場の支援は終わったとしても、このような課題に対する根幹的な解決策を見出し進める意志が社会福祉士として大切なことだと思います。
さて、今回は、社会福祉士って何?というテーマでお届けしましたが、ここまでです。
次回は、なぜ行政事務職員の私が社会福祉士をめざしたのか?について述べていきたいと思います。概ね1週間後に掲載します。
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