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#8 三重大学環境ISO学生委員会での取り組みから千葉エコ・エネルギー入社。中村浩俊さんに聞いた20代に伝えたいこと「リアルな場での体験を大切に、自分の軸を決める」

for 20's第8回目のインタビューのお相手は株式会社日本総合研究所の中村浩俊さんです!千葉エコ・エネルギーに入社され、主に「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」に関する業務に従事された後、日本総合研究所に転職。

そんな再生可能エネルギー関連事業について取り組まれる中村浩俊さんに、20代の羅針盤となるような経験談やマインドセットを聞いてきました。

【中村浩俊さん】
三重大学を卒業後、千葉エコ・エネルギー株式会社に入社。再生可能エネルギー関連事業に従事し、福島第一原発のある福島県大熊町の復興にも取り組む。現在は株式会社日本総合研究所に在籍し、再生可能エネルギーについての取り組みを進めている。

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<聞き手・ライター:桝井孝一・金子圭介>



1. 20代前半のご経歴

原点となった環境ISO学生委員会での経験


for20's第7回目の取材のお相手は株式会社日本総合研究所の中村浩俊さんです!本日はどうぞよろしくお願いします!(インタビュワー・桝井)

ありがとうございます!よろしくお願いします!(中村浩俊さん)

早速ですが中村さんは20代前半の頃どのように過ごされていましたか?

24歳までは大学生だったので、20代前半は大学での出来事が中心ですね。高校の時にIT系の領域に興味を持ったこともあり、三重大学の工学部情報工学科に入学し、プログラミングやコンピュータの基礎的な理論を学んでいました。ですが、学業よりも課外活動に打ち込んでいることが多く、三重大学環境ISO学生委員会(以下「環境ISO学生委員会」)という学生団体に所属していました。

そうだったんですね。環境ISO学生委員会というと、千葉大学で弊社代表の馬上も所属していたと聞いたことがあります。

そうなんです。千葉大学にも環境ISO学生委員会があり、三重大学との交流もありました。そもそも環境ISOとは、ISO14001という国際規格があり、環境に配慮している組織に対する認証のようなもので、企業や工場をはじめ、全国にもいくつか認証を受けた大学があります。中でも環境分野の研究や、大学職員による省エネに関する取り組み、ごみ削減などに取り組んでいる大学は多いと思いますが、環境に配慮した組織運営の中に学生を組み込んだ大学は、今でも少ないと思います。なので、大学組織の中に位置付けられていることから、通常の学生団体やサークルとは違った形でした。

千葉商科大学のCUCのような形ですね。環境ISO学生委員会の取り組みの中で、印象に残っている出来事はありますか?

生物多様性COPの締約国会議が二年に一回あるのですが、それが大学一年生の時に名古屋で開催され、大学としてイベントの企画や海外、地元の学生の招致を行い、鳥羽水族館の案内をはじめとしたエクスカーションを実施しました。私としては、課外活動に関するイベント運営の原体験のような出来事でした。その後、大学一年生の春休みに環境ISO学生委員会の委員長になり、同じく環境活動を行う学生が集まる合宿イベントに参加するなどしていました。

大学一年生からさまざまな体験をされていたんですね。工学部で学ばれたことも生かされていたんですか?

実はそのタイミングで、ITを学んでいるだけでは環境活動に貢献できないなと思い、学部変更を考えていました。その時に、先輩から環境経済学の存在の紹介を受け、大学三年生から経済系の学部に転部することを決め、興味のある一般教養や、経済系の授業をとっていました。

学部変更されることになったんですね。でも、試験や面接など大変ですよね、、。

実は、大学三年生の転部試験の際に落ちてしまい、結果的に転部できませんでした。面接の際に、転部して学んだことを仕事にどうやって活かすかを聞かれた際、答えられなくて。確かにそのときは委員会の活動を通じて興味があって学びたい気持ちが強かったですが、仕事に活かすところまでイメージがついていませんでした。

目の前のことで一生懸命になると、なかなか将来のイメージはつきづらいですよね。その後、委員会活動も継続されていたんですか?

その後も卒業に必要な単位を取得しながら、活動は継続していました。2014年に国連が提唱する持続可能な開発のための教育活動、ESDの国際会議が名古屋で開催されることになりました。簡単にいうとSDGsの考え方を教育に取り入れる取組のようなもので、SDGsが流行る前から国連が提唱していた言葉ですね。その国際会議にあわせて三重大学としてイベントを開催することを知り、大学を半年休学して大学職員の肩書をもらってアルバイトをさせていただき、運営に携わりました。大学一年生の時のイベントで携わった時とは異なり、イベントのスケジュール作成や協賛・協力してもらう団体への依頼状を作成するなど、今思えば社会人の基礎的なことを行なっていました。

大学時代に社会人のような経験をされていたんですね。その後は就職活動をされたんですか?

そうです。就活をする際も、大学で学んできたIT領域の企業だけではなく電力やガスなどのエネルギー関連企業を中心に見ていました。ですが、大学一年生の時に東日本大震災が発生し、環境破壊の成れの果てが異常気象に繋がりかねないのではないか、また、原発はどうあるべきかを漠然と考えていました。そこで、持続可能な生活を送る環境を作りたい、再生可能エネルギーの領域を仕事にしたいと思いました。そうした時に、当時環境ISO学生委員会をやっていた際に千葉大生だった、現千葉エコ・エネルギー取締役の岡田さんらとも面識があったことや、ちょうど新卒採用の募集もあったことから千葉エコ・エネルギー株式会社の馬上さんにお会いし、面接を行ってもらって内定をいただきました。

2. 20代後半の経歴

震災復興・農業復興を経験


千葉エコ・エネルギーに入社後、どのようなことに取り組まれていたんですか?

入社一年目の四月にお客様からソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)をやりたいと問い合わせがあり、社内のサポートも受けながら完成まで携わりました。そこでソーラーシェアリングについては一通り学びましたね。その後は民間企業などの事業者の方で、発電所を建てたいという方への支援コンサルが中心でした。業務を進める中で、だんだんと取り組むスケールが大きくなり、官公庁からも相談が来るようになってきました。

その辺りで、印象に残っている仕事などありましたか?

二年以上携わったのですが、環境省の業務で福島第一原発のある大熊町の震災復興と農業復興を目的に、ソーラーシェアリングを活用する、そのための計画を作る仕事がありました。実際に現地に足を運び、帰還困難区域であった頃から一部が解除されて実際に地域の方が帰って来られるようになった時期にまたがって関わっていましたね。実際に自分がエネルギー分野を仕事にすることの原点が東日本大震災を通じて感じたことだったので、感慨深かったです。

規模も大きいですし、これまで行なってきた支援コンサルとは取り組まれる内容も異なりそうですね。

これまでは、この場所に発電所を建てたいけれどどうすればよいか、という相談を受けて支援をしていたのですが、まちづくりとなると住民の方の意見を聞いたりなど、もっと高い視点が必要になってくるんですよね。そういった意味でも自分の現在の仕事の原点になっているというか、印象深い内容でした。

その後、千葉エコ・エネルギーから転職されるまで、どのような考えでいらっしゃったんですか?

千葉エコ・エネルギーでは、自分がやりたかった再生可能エネルギー分野の仕事であったこともあり、また小規模の会社であったためやりたいことをやらせていただきました。ですが、今はソーラーシェアリングに注力しているものの、自分がやりたかった再生可能エネルギーはソーラーシェアリングだけではないと思ったんですよね。もっと幅広い視点で再生可能エネルギーを扱えるジェネラリストになりたいなと考え、三十歳手前になったタイミングで、転職するなら今かなと思い、転職をしました。

やはり三十代手前のタイミングは、転職を考えるきっかけになるんですか?

自分の転職市場での価値を考えたときに、やはりそのタイミングになってくるのかなと思いますね。三十歳を超えると、仕事のやり方が型にハマっていたり、転職しても環境になかなか馴染めない可能性も出てくるのかなと考えていました。実際に千葉エコ・エネルギーでも採用活動に携わって面接をしたこともあったので、その時の感覚もあったのかもしれないですね。

3.大切にしている価値観や考え方

「あらゆることに興味を持つ」「あえて疑問を持つ」


これまで二十代の経歴を伺ってきましたが、中村さんの中で、大切にしている価値観や考え方はありますか?

あらゆることに興味を持つこと、あえて疑問を持つことは仕事においても大事だと思います。例えば、お客さんがこう言っていたからそのまま進めるよりも、本当にその方が良いのか裏取りをして、調査結果として出すことなどが、丁寧な仕事なんじゃないかなと思います。例えば就活の時期でも、仕事をする前は漠然とイメージを持ちづらく、やりたい仕事はどの分野のどんな仕事なのかを見つけるのが難しいのですが、自分の場合は東日本大震災の経験から、日本の社会にとって何が適切なエネルギーなのか、といったところに疑問を持つようになり、就活を含めてその先の原動力になっていましたね。

「あえて疑問を持つ」ですか。確かに、多くの周りの方が同じやり方でやっていたら、疑問を持たずに進めてしまうこともありますね。

そうですよね。「周りがやっているから、自分もそうしよう」と流されることもあるかと思います。でも、そこで立ち止まって疑問に思うことで、その先の人生を変えることがあるかもしれないと、経験から感じています。最初に友人に連れられて環境ISO学生委員会に入ったのも、小さな疑問を持って行動していたからというところが大きいです。

あらゆることに興味を持って、そこから自分の中にしっくりくるものを深掘りしていく形ということですね。

4.困難な壁にあたったときの対処法

自分の行動に責任を持つ


もし困難な壁にあたったとき、中村さんはどのようにそれを乗り越えられてきましたか?

何か難しいことがあった時には、ひとしきり納得するまで自分で調べ続けるようにしています。それでも限界が来て、人に聞いた方が早いなと感じたら初めて人に頼るようにしています。自分が納得するまでやり続けることで、その後の自分の全ての行動に対して責任を負うことができるんですよね。

なるほど。確かに、私はわからないことがあると誰かに相談してしまうことが多いですね。

誰かに相談することも大切なんですが、今は情報が溢れているので、調べることで正解に辿り着きやすいと思うんですよね。なので、自分で調べて悩んでいる時間も含めて、人間の厚みみたいなものができてくるんだと考えています。

5.もし今20代に戻れるなら

再生可能エネルギーの知見を深めたい


中村さんがもし今「20代に戻れる」なら何をしたいですか?

もう一度大学に入りたいですね。三重大学にこだわらず、環境経済分野、特に再生可能エネルギーについての知見を深めたいです。再生可能エネルギーを導入することで、どうすれば地域経済のためになるのか研究をしたいです。経済効果を測る手法の研究や、全国の再生可能エネルギーの導入モデルを調査したいですね。今、仕事をしながら行うこともできなくはないかもしれないですが、もし20代に戻れるなら大学に入ってより知見を深めると思います。

6.今の20代のメリット

リアルなコミュニケーションを大切にしてほしい


中村さんが思う「今の20代のメリット」ってなんだと思いますか?

やはり、簡単にオンラインでセミナー等に参加して情報収集ができるところですかね。僕は学生時代まで三重に住んでいたこともあり、学生同士の交流イベントも東京や大阪に行かないと参加できないことが多かったので、首都圏の近くに住んでいる人は羨ましいなと思っていました。また、地方と都心部では情報格差があると感じていたので、そこの垣根がなくなっているという点では良いなと思います。

今はオンライン限定開催のセミナーなども多いですもんね。

そうですよね。ですが、やはりリアルなコミュニケーションも大切にしてほしいなと思います。簡単に情報収集ができる世の中になったからこそ、やりたいことが明確で、「本気でこのセミナーに参加したい!」と思う人にとっては選択肢が増えて良い環境だと思うのですが、逆になんとなくやりたいことを探している人にとっては情報が溢れていて、何を選べばいいのか悩むと思うんですよね。対面だからこその空気感や表情を感じ取ることや、そこでの新しい出会いを大切にしてほしいなと思います。

7.今の20代のデメリット

情報が溢れる中、自分で思考を深めることが必要


中村さんが思う「今の20代のデメリット」ってなんだと思いますか?

自分で思考を深めていく機会が少ないことかなと思います。先ほど申し上げたように、今は情報が溢れている時代なので、少し調べると「これが正解」といった形で発信されているのを見かけることが多いかと思います。ですが、一旦立ち止まって「本当にこれが正解なのか」を見極め、あらゆる情報から一度自分の中で考える時間が必要なのかなと思います。

確かに、さまざまな意見が「これが正解」として発信されていることも多いですもんね。

そうなんですよね。また、少し先ほどの話とは矛盾しますが、今はオンラインでのコミュニケーションが当たり前になっていることから、簡単に人と人が繋がれる時代だと思うんです。それは良い点ももちろんあるのですが、自分が千葉エコ・エネルギーに入社するきっかけがリアル開催のイベントだったように、リアルなコミュニケーションというのも大切にした方が良いと思います。

オンラインミーティングもそうですが、今だとSNSを通じて、簡単に人と繋がれますもんね。

今はSNSでコミュニティを形成する時代ですが、逆に言えば用のない時は連絡を取る必要もないですし、簡単にそのコミュニティから抜けることもできます。でも、利害関係なくいざというときに助けてくれるような存在の人は、無駄な時間も含めてたくさんの時間を共有してきた人なんじゃないかなとも思うんですよね。なので、全てを最短で完了することを目指すのではなく、時には無駄な時間を共有することも必要なんじゃないかなと思います。

8.20代に伝えたい人生設計における羅針盤

好きなこと・得意なことを見つける


中村さんが考える20代の人生設計(ライフデザイン)において大切なことは何だと思いますか?

自分の好きなもの、得意なことを20代のうちに見つけることが大切だなと思います。就職をするにしても転職をするにしても、自分の軸を持つことが必要だと感じています。私は学生時代から興味があり、現在の仕事にもなっている再生可能エネルギーを軸にしているので、たとえ今の仕事(自治体の計画づくりなど)に飽きが来ても、再生可能エネルギーの経済効果の調査や、設備の開発など色々な分野の仕事があると考えています。軸を決めることで、視野が広くなり選択がしやすくなるのではないかと考えています。

選択肢が無限にあるよりも、好きなこと・得意なことに絞って行動した方が、より鮮明に将来が考えられそうですね。自分の軸を見つけるために大切な行動は何だと考えていますか?

やっぱり人との対話だと思いますね。たわいもない会話も、議論する場も含めて。学生の頃に環境系のイベントに多く足を運び、リアルな場での人との出会いや対話することを心がけていたので、自然と軸が形成されてきたようにも感じています。

9.20代にオススメしたいモノやこと or ご自身が影響を受けた人やモノ・コト

リアルな体験を通じた軸の形成が必要


いよいよ最後の質問なのですが、20代にオススメしたいモノやことや、ご自身が影響を受けた人やモノ・コトなどありますか?

仕事に繋げるのであれば、本を読んだりするよりもニュースをしっかりと把握して、今起きていることをしっかりとキャッチアップすることが大切だと思います。また、環境経済について興味を持ったこともあり、大学生の頃に週刊東洋経済を読んでいました。学生でも割と読みやすい内容で、経済のことについて学んでいましたね。今はお客様も大企業の方が多くなったこともあり、日本経済新聞の電子版を読んでいます。気になるキーワードを登録することで、そのワードが登場する記事だけ抽出できる機能があるので便利です。

仕事においてもニュースに関する話題も多かったり、またそれによって取り組む内容が変わってきたりしますよね。本を読まれることも多かったんですか?

本はあまり読んできませんでした。ですが、唯一読んで面白かったなという本は、「文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの」という本ですね。さまざまな文明がなぜ滅んだのかについて書かれているのですが、例えば歴史の授業では「こういった戦いに敗れた」という出来事ベースでしか習わないと思うのですが、なぜ敗れたのかなどを科学的な視点で分析して書かれています。今私が携わっている環境分野にも近しいものがあると感じていて、文明が滅んだことを知ることで、逆に今の文明をどう存続させるかにつながる話だと思っているんですよね。

確かに、エネルギー分野にも近しいイメージが湧きました。中村さんは自分の中ではたくさん本を読まれている理論派というイメージがあったのですが、実際はリアルなコミュニケーションを大切にされていたんですね。

理屈を作るというところでは近いのかもしれませんが、リアルな場での体験は精神面の影響がすごく大きいんじゃないかなと思っています。お金を払えば手軽にさまざまな経験ができる今だからこそ、人と接することでしか得られない体験があると思うんです。目先のものに騙されないような観察眼を身につけるためには、リアルな体験を通した軸の形成が必要になると思います。

学生時代の環境ISO学生委員会のお話から千葉エコ・エネルギー入社、そして20代へのアドバイスやマインドセットなど、20代にとって勉強になる情報をいくつも教えてくれた中村さん。

個人的には、「自分の軸となるものを大切にする」といった考え方に深く共感しました。人の中にあるエネルギーや活力が存続している限り、コミュニティや取り組みは持続可能なのではないかと思います。人とのリアルな関わり合いを大切にして、将来的には各々が自立している中で一つの目標に向かって協力する、自立集合組織のような集団を形成できたら面白いなと思いました。


〈取材・文・編集・写真=桝井孝一・金子圭介〉

中村浩俊さんのSNS
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