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妹の意外な興味『#暮らしたい未来のまち』 約1500字

マサ兄まさにい、SDGsって知ってる? 」

「······急にどうした?」

 リビングで飲んでたコーヒーをこぼしそうになる。妹の真奈まながソファでスマホを見ながら聞いてきた。

「少し前からツイッターのトレンドにあがってたから。で、マサ兄はSDGs、知ってる? 」
 ツイッターのトレンドに?真奈がニヤニヤしながら俺の答えを待ってる、知らないと思ってるな。

「あれだろ、持続可能な開発目標だろ」
「おっ!さすが大学生。じゃあ、世界的目標、達成基準はそれぞれいくつある?」
「世界的?達成基準?」
「知らないの?大学生っていっても一年じゃダメだね」
 お前も一年だろ、しかも高校の。

「正解は17の世界的目標と169の達成基準でした」
「17と169?なんか多いなあ」
「呑気なリアクション。そういえば、広報にSDGsの取り組みって記事が載ってたよ」
「広報ってまちの広報誌か?」
 ちょうど手を伸ばした先に広報誌があった。中を見ると······これか。このまちがSDGsに対してどんな取り組みを行っているのか書いてある······。

「いろいろ書いてあるけど、もっとわかりやすい文章じゃないと伝わらないよな」
「それは言えるね。ダメな大学生でもわかるように書いてくれないと」
 真奈はソファでくつろぎながらスマホを見てる。いつからこんな憎たらしくなったんだ。

「SDGs以外にも地方創生とか地域経済の活性化とかいろんなこと書いてあるけどさ、やり過ぎはよくないよね」
「どういうことだ?」
「いろんなことに手を出して、変えなくていいものまで変えちゃったり、余計なもの作っても意味ないじゃん。今のまちの景観とか空気感、結構好きだけどね」
「······なるほど」 
「生活が便利になるのはいいけど、そのせいで自然が減ったり建物が増えすぎるのは嫌だなあ。駅の待合室はなんとかしてほしいけど」
 俺は真奈と会話してるよな?こんなこと考えるタイプだったか?

「でも、SDGsについて考えていろんな取り組みをやってるのはいいことだよね。私も気にするようになったよ」
「そうなのか?なんかやってるのか?」
「マイバック、マイボトル、マイ箸、マイストロー使ったり、節電とか節水。この前、お母さんと一緒に備蓄用の食料と飲料水買ったよ」
「······すごいな」
 そんなことしてたなんて。節電、節水······してないなあ、マイなんちゃらなんて一つも持ってない。備蓄用の食料と飲料水?この家のどこにあるんだ?それは教えといてくれよ。

「小さなことでもできることはやってかないと。マサ兄もだよ」
「······そうだな、気をつけます」
「じゃあ今度の日曜日、防災訓練のイベントあるけど行く?」
「はい、行きます」
「言ったね、この耳でちゃんと聞いたよ。あっ!もう時間だ!出かけてくるね」

 
 あの真奈がSDGsに興味を······こんな一面があるとは思いもしなかった。
 
 確かに、この数年で自然災害は増えてるし、秋になっても暑さが残る、今後なにが起こるかわからない。
 
 小学生のとき、夢中で白球を追いかけたグラウンド。中学生のとき、部活帰りに友達と集まったコンビニ。高校生のとき、初めて告白した海の見える公園。
 この先の未来も生まれ育ったこのまち、思い出が詰まったこのまちで暮らしたい。そのために、やれることをやっていこう。


 しかし、きっかけはなんだ?
 ツイッターのトレンドって言ってたな。見覚えないけど······まさか、この記事?

 
 人気絶頂の2.5次元俳優、SDGs広報大使に就任。


 こういうの興味あるんだ······ きっかけはなんであれ真奈の取り組みはすごい、けど······この一面は知りたくなかったな······見なかったことにしよう。






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