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【選手分析シリーズ】第1回② セルヒオ・アグエロ(プレー)
どうも、フットサークルへようこそ。
前回の続き、セルヒオ・アグエロの紹介ですが、今回はプレーの分析にフォーカスしていきます。データを参照しつつ筆者の目線から分析していきますのでよろしくお願いします。
アグエロの何がすごいのか。いくつかポイントを分けて分析していきます。
まずはアグエロはどのようにプレーし点を取るのか。どんな特徴を持った選手なのかを分析していこう。
1.プレースタイル
アグエロのポジションは3トップの中央、いわゆるセンターフォワードと呼ばれるポジションである。ただ多様化が進む現代サッカーにおいて、一括りにセンターフォワードと言っても選手の特徴やチーム戦術によってその役割は様々である。
そこで筆者はこのポジションを「センターフォワード」と「ストライカー」の2つのタイプに分けて考えている。それぞれの違いについては長くなるのでここでは簡潔に説明させてもらう(後で別の記事で解説しようと思う)が、要は古典的な大柄でフィジカルに優れたタイプが前者、小柄でスピーディーなタイプが後者だと思ってくれて構わない。もちろん例外もあるし、両方の性質を持った選手もいるので大まかな分類くらいに考えて欲しい。
アグエロはと言うと勿論「ストライカー」タイプにあたる。身長は173cmと小柄だがスピーディーで小回りが利き、足元の技術に優れている。
相手を背負いながらよりも常に動きながらDFと駆け引きを繰り返し、マークを外してボールを受けることを得意としている。ロングスプリントで相手の背後を取れるほどのスピードはないものの10m程の瞬発力、加速力は一級品で、プルアウェイや狭いスペースへ一瞬で飛び込む動き、スルーパスやクロスに点で合わせる技術は最高峰である。
また、優れた足元の技術と体幹を駆使し、狭いスペースをドリブルで攻略することもできる。
さらにはミドルレンジからのシュートも得意としておりまさに完成された「ストライカー」タイプだと言える。
なんとなくアグエロの特徴について理解してもらえただろうか。ここからはアグエロが特に優れている部分に焦点を当てて分析していく。
2.インテリジェンス
○認知・想像
アグエロは逆を取るのが上手い。一瞬で相手の逆をつきマークを外してボールを引き出す。ファーストタッチで相手の逆をついて入れ替わる。派手なフェイントを使わずにシュートコースを創り出す。
なぜ彼は簡単に逆を取れるのか。
それは群を抜いた予測能力の高さに起因する。さらに、高い予測能力をもつということは、言い換えれば認知能力の高さと想像力を併せ持つということである。
素早く周囲の状況を確認し必要な情報をインプット、その情報から次の状況を推測することに長けているのである。
故にアグエロはあっさりと相手DFの逆を取ることができる。
アグエロは体が小さく、ボックス内ではフィジカルでポジションを取ることが難しい。だが彼はその卓越した予測を持ってDFの逆を取る、あるいはDFの目を盗んで動き出すことでフリーな状況を作り出し、比較的プレッシャーの少ない状況でフィニッシュに持ち込むことができる。この特性は他ならぬシティにおいて非常に重宝される。
シティと相対するチームは自陣に引きこもって守備ブロックを敷くことが多く、スペースはごく僅かに限られる。こうなってくるとトップの選手にとって非常に難しい。高さと強さに優れた「センターフォワード」タイプであればボックス内で空中戦を挑めるが、守備網を崩すような連携に参加するには機動力が足りない。
小回りが利く、と言えば聞こえはいいが、しかし小柄な選手はスペースがなければそのスピード・機動力を活かすことが難しくなる。ジェイミー・ヴァーディーを擁するレスターが奇跡の優勝のシーズン後、ボールを持たされた途端に中々得点できなくなってしまった原因のひとつがこの問題である。直近のシーズンに限れば、マンチェスター・ユナイテッドのラッシュフォードもカウンター時こそ爆発的なスピードとシュート力で脅威にこそなれ、押し込んだ展開では沈黙することが多い。事実、チームの不調も相待って、開幕戦でチェルシーに4-0で勝利したのが嘘かのようにユナイテッドはゴール欠乏症に陥り、第8節終了時点で得点9に対し失点は8、順位も12位と低迷している。
このように優れた小柄な「ストライカー」タイプであってもベタ引きした相手から得点を取ることは容易ではない。
たが、アグエロは逆を取ることで一瞬の時間、あるいは僅かなスペースを創り出す。相手の守備網に僅かな綻びを生み出す。その一瞬の時間、僅かな空間、綻びを見逃さず魔術師シルバを中心に彼にボールが届けられることで得点を量産するのである。
一応断っておくと、比較した選手はいずれも素晴らしいプレイヤーであり、優劣をつけるために引き合いに出したわけではない事をご理解いただきたい。
○判断
予測能力が優れていれば柔軟に、即座に、正しい判断を下せる。その典型的な例がビルドアップ時に見受けられる。
本来アグエロはチームに深さをもたらすために相手CBと同じライン付近にポジションを取る。しかしチームが前進に苦戦すれば一瞬の数的優位を創り出すために中盤までボールを受けに降りてくる。これはおそらくペップの指導やチームの戦術のこともあるだろうが、そのタイミングが絶妙なのである。
むやみやたらと降りてくればチームは深さを失う。深さを失えば選手間の距離は縮まり、スペースが消え、相手はコンパクトに守ることができてしまう。そうなってしまえば一気に状況は難しくなり、もう一度作り直さなければならなくなる。アグエロが受けに降りてくることでチームが前進できる絶妙なタイミングで降りてくることにこそ意味がある。アグエロは卓越した予測能力、つまりゲームの流れを読む力が高いから効果的に自らの判断で"ゼロトップ"の役割を遂行することができるのである。
認知能力、想像力、そして判断力の高さ。これがサッカーにおいて"頭が良い"選手であることの指標であり"インテリジェンス"なのである。つまりアグエロは高いインテリジェンスの持ち主なのである。もっともそうでなければグアルディオラの戦術を体現することなど不可能だろう。
3.必殺のニアハイ
前述したようにいくら優れた"インテリジェンス"の持ち主であっても、それを実行するだけの技術がなければ活躍することはできない。アグエロはテクニックにかけても最高峰の「ストライカー」である。
南米人特有というべきか、ストリート育ちらしいというべきか、柔らかく独特なリズムでのドリブル。厳しいプレッシャー下でもしっかりと収めるコントロール。正確に枠を捉えゴールネットを揺らす左右両足のキック。ダイレクトでも確実に味方に預けるパス。おおよそFWに求められるテクニック全てが非常に高水準である。派手なスキルこそほとんど見られないが、それはそもそも必要ないのかもしれない。前項で話した通り逆を取るのが上手いのだから簡単なフェイントだけで事足りるのだろう。ヘディングも高さはないがじゅうぶんにゴールを狙うことができるレベルにある。
○ニアハイ
これだけのテクニックを誇り多彩なフィニッシュのパターンを持つアグエロだが、彼が最も得意とする、あるいは他と比べて圧倒的なシュートパターンがある。
それは「ボックス横からのニアハイ」である。
アグエロは右利きなので、本来はボックス右の深い位置では角度がなく直接のシュートは中々難しい。この位置でシュートを狙うならばGKと「パスかシュートか」の駆け引きに勝った上で限られたコースに正確に打ち抜かなければならないからだ。要は「パスありきのシュート」でなければまず入らない。
しかし、アグエロはパスの前提が無くてもこの位置からシュートを決めきることができる。強烈で速いシュートでGKの頭の上を正確に貫くのである。このフィニッシュができたのはセレソンのレジェンドであるロマーリオぐらいのもので、現役でこのフィニッシュを得意としているのは筆者の知る限りではアグエロだけである。つまり、「ボックス横からのニアハイ」はアグエロ固有の必殺技と言って差し支えないだろう。他の選手が苦手とする、他の選手には決められない位置から得点を量産するのだからまさに必殺技だろう。実際、世界最高のGKに数えられるデ・ヘアやアリソンからもこのパターンでゴールを奪っている。ついでに言えば、アグエロは両足でこのフィニッシュができるのでどちらのサイドからでも"必殺技"の発動が可能である。
↑ボックス左サイドから左足でのニアハイを別角度で2枚。強烈かつ正確なシュートはアリソンの頭上を貫いた。
4.百聞は一見に如かず
ここまでいくつかのテーマに焦点をあててアグエロの分析・解説を簡単にしてきた。とはいえまだまだ筆者も上手く言語化出来ずに伝えきれない部分も多いし、違った意見を持つ人もいるかもしれない。とにかく私に言えることはシティの試合を見てアグエロを見てほしいという事だ。ここまで語ってきた事に注意しながらアグエロを見れば、彼の凄さが分かるはずだ。
百聞は一見に如かず。是非アグエロのプレーを試合を通して見ていただきたい。
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