山羊とキャベツ
後輩に久々に会い、ボウリングに行った。一年ぶりくらいの再会かな。彼女は酒が飲めないので、コミュニケーションの変化が欲しかったのか。
初めて降りた駅の見知らぬ商店街にノスタルジーを感じながらも、行き場のない僕らの散歩が始まった。「今日の空は気持ちが良い」と、彼女が言った。僕は二日酔いと自己嫌悪で、空のことなんか気にしていなかったので、なんだかピュアな人だなあ、と思った。
歩いている途中、僕の祖母がオレオレ詐欺の電話を受けて、それを見抜いた話をした。会話の内容は以下の通り。
詐欺「もしもし、おれだけど」
祖母「誰?こうへい?」
詐欺「そう、こうへい!やばいことになっちゃって、金がいるんだ!」
祖母「いま何してるの?」
詐欺「バイト中だよ」
祖母「なんのバイト?」
詐欺「マクドナルド!」
祖母「うちにはマクドナルドでアルバイトをしているこうへいさんはいません。どこのこうへいさんですか?」
詐欺「大友康平!」
ガチャ!ツーツー……
自力で詐欺を回避した祖母を称賛しつつ、詐欺師の悔し紛れのボケがツボったので、ボウリングのプレイヤー名を「大友」と「コウヘイ」に設定した。彼女はケラケラと笑っていた。そして、淡々とヘタくそ同士のボウリングが終わり、豆腐100g分のカロリーほどのスコアを叩き出した後、また街に繰り出した。
喫茶店→串カツ田中というフルコース中に、彼女はなんだかあんまりうまくいってないんだという話をしていた。自分に自信を失ってしまったその目はなんというか、本当に悲しそうだった。いつもは底抜けに面白いやつなのに。
何もしてあげられない自分が歯がゆいのと、ハイボールチンチロでちゃっかりと半額にもっていく自分はクソバイスしかできなかったけど、串カツ田中のぼわんとした空気がそれをいなしてくれて、なんとなく店を出た。
まあ、辛いことあるけどさ、ボウリング面白かったじゃん。またやろうよ。今度は手にあのグローブみたいなやつつけようよ。そんなことを話しながら帰宅した。外はあたたかかった。