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プレミアリーグの数字がいかにスーパーかお見せしよう

欧州サッカーの王者の座は常に移ろいます。90年代から00年代初頭はセリエAが覇権を握り、リーグでしのぎを削る7クラブは”セブン・シスターズ”と呼ばれました。00年代後半からはスペインのラ・リーガ勢が勢力を盛り返し、グアルディオラがバルサでCLを制した2010年前後は、代表を含めて無敵艦隊の時代でした。

時は流れ、今はプレミアリーグが王座に座ります。し、か、も、その王座はカルチョやリーガの時代を超える広さになっています。では、どれだけその存在感が凄まじいのかを、国際比較で浮き彫りにしてみました。比較するのは、もっとも分かりやすい①売上高②移籍金です。最後に財政面からは一強時代が終焉する条件を考えてみようと思います。


プレミアでなければ人にあらず

デロイトという超有名なコンサル会社が、毎年欧州売上トップチーム20&30を発表しています。その最新版によると、21/22シーズンの売上トップ30の内、16チームがプレミアリーグのチームとなっています。

リーガはレアル、バルサ、アトレティコが何とか上位に滑り込み、セビージャやビジャレルは欧州カップ戦の効果でぎりぎりのランクイン。カルチョはトップ10に入れず、3強が11位以下に滑り込むのが精一杯です。後はドイツのブンデスから巨人バイエルンと若手売却世界一のドルトムント、フランスのリーグアンからはカタールブーストがかかったパリサンジェルマンです。

注:プレミアリーグのチームを青でハイライト

プレミアは16チームですよ。大体サッカーのリーグは16〜20チームですよね。つまり、プレミアに入っていたらもう自動的に欧州のトップチームなんです

実際、デロイトのリストとプレミアの21/22の参戦チーム一覧を見ると、降格3チームとブレントフォードを除けば全てランクインしています。かつて栄華をほこった平家の名言を借りれば、プレミアならずんば人にあらず、という世界に欧州サッカーリーグはなっているのです。

回り続ける強者のサイクル

プレミア一強は変わるのでしょうか。残念ながら、今のところ可能性は低いです。なぜなら、プレミアは強者のサイクルにどっぷり浸かっているからです。

強者のサイクルとは、○売上増加→○ビッグネーム獲得→○リーグの魅力増加→最初に戻る、というサイクルです。

このサイクルが順調に回っているかを測る指標は、ずばり移籍金です。3大リーグで比較すると、プレミアの順調さが一目瞭然です。下の図を見て下さいよ。コロナ禍前の19/20シーズンまでは、カルチョもリーガもほぼイーブンで喰らい付いていましたが、コロナ禍を契機にプレミアとの差は拡がり、もはや1/3の金額になっています。そりゃ、移籍金が3倍も違えば、トップ選手はプレミアに集まりますわな、という結果です。

23/24シーズンはまだ夏のみですが、プレミアが桁違いの移籍金を市場に投じています。今季は更にサウジアラビアが電撃参入してきたので、さらに序列が変わっています。私が個人的に応援しているスペインのラ・リーガは、サウジアラビア、セリエA、のみならずブンデスやリーグアンにも抜かれ、もはや3番手の地位すら危うい上記です。訳が分からないのは、トップ10にイングランド2部のチャンピオンシップが入っています。2部が1部を超えるあたりにイングランドの凄まじい資金力を感じます。

という訳で、足元はプレミアの強者のサイクルは続いています。これだけ差がついたら、トップ選手が他リーグに行くというのは稀有でしょう。マンチェスター・シティを契約満了になったギュンドアンがバルサに来るというニュースがかなり注目を集めたのも、裏を返せばそれだけレアケースだったからです。

一強が終わる時とは?

さて、プレミア一強が終わる時とはどんな時でしょう。カルチョの衰退、リーガの強豪(バルサ、バレンシアなど)の深刻な財政難への転落を見て来た身から言えることとしては、

借金が増える中、売り上げが落ちて来た時

だと思います。売上が増加している時は将来の売上増加を見込んで、投資、すなわち移籍金に高い金額を突っ込みます。それでも売り上げが増えると、経営者はどんどん強気になります。そして借金を増やしながら、移籍市場に高い金額を突っ込むのです。ところが、売り上げが減少局面に入ると、売り上げ増加を前提にしていた債務返済計画がすべてご破算になり、債務危機に陥ります。

例をあげましょう。我が推しのバルセロナは、2000年代前半~10年代後半の絶世時代にネイマール、スアレス、デンベレ、グリーズマン、コウチーニョなど次々とビックネームを獲得し、売り上げは伸び続けました。しかし、コロナが来て1シーズンの売り上げが落ち込むと、借金が全く返せなくなり、今日のウルトラ金欠・放送権切り売りチーム・バルサが誕生するのです。

さて、今のプレミアリーグの借金具合はいかがでしょうか。実は英国政府もサッカーチームの財政状況は心配しており、常にレポートを出し続けています

2023年9月に出た英政府レポートを見ると、21/22シーズン終了時点でプレミアクラブの純債務額は合計額が44億ポンドと、コロナ禍前より19%増加しました。年率だと6%の増加ペースなので大したことはないに見えます。ただ、この数字はチェルシーの前オーナー・アブラモヴィッチ氏がクラブを売却し相殺された債務が含まれていません。仮にチェルシー売却がなければ、純債務額は60億ポンド。年率+17%と結構なスピードになります。

純債務残高=借入 - 現金・現金同等物+移籍に伴う未払い額(未受取額はマイナス)

このように新たなオーナーが登場し、既存の債務を肩代わりしてくれると一気に債務が減ります。新オーナーが切れ目なく入ってくる間は、当分大丈夫と言っていいでしょう。
なお、トッテナムの純債務額の大きさに鑑みると、レヴィ会長が23/24シーズンの夏の移籍市場でケインを売却しなければいけなかった切なさが分かりますね。ファンの心理的には複雑ですが、バイエルンで本人が順調なので何よりです。

皆さん気になる赤い悪魔の懐事情は、オーナー問題が落ち着いてから分析したいと思います。では、本日も良いサッカー生活を!

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