欧州サッカー24年夏の移籍市場まとめ②~ラ・リーガは力を溜める~
欧州三大リーグと言えば、イングランド、イタリア、そしてスペインなのですが、移籍市場ではすっかり五番手が定着したラ・リーガ。果たして彼らに反撃の機会はあるのか、いつも通りデータと妄想を織り交ぜながら見ていきましょう。
クラブ別補強費ランキング
ラ・リーガのクラブ別に補強費(支出)を見ていくと、バルセロナ、R・マドリードの2強の補強費が激渋だったことが分かります。2強をしり目に大判振る舞いをしたのがアトレティコ・マドリード(以下、A・マドリード)。2位のビジャレアルの3倍近い補強費をかけています。
こちらが補強費の下位10チームです。近年は苦戦が続くセビージャが、苦しい移籍市場を過ごしています。後は相変わらずのバレンシア。ホームの都市の格としては3、4番の大きさを誇るので本来はこの位置にいてはいけないのですが、相変わらずオーナーのピーター・リムの方針により売却益確保を優先しています。
ラ・リーガの補強が激渋な理由
ラ・リーガの特徴として、大半のチームの移籍市場の収支がプラス(売り超)であることが挙げられます。
背景には、サラリーキャップ制により、売上を上げないことには選手の給与を上げたり、選手獲得のための新たな借金ができないシステムが影響していると考えられます。
このシステム、破綻するクラブを減らすという意味においては絶大な効果を発揮します。一方、売上が鈍ると緊縮財政を強制されるので、他リーグ対比で補強費を全く出せないという状況に陥ります(←今ココ)。
この現状を打開するために、ラ・リーガの各クラブは育成に力を入れており、かつ売上を増やすために移籍市場の収支をプラスに持って行っているという次第です。
そんな涙ぐましい各クラブの努力により、24/25シーズンのサラリーキャップは昨季対比で7%増加しました。中でもバルセロナの回復幅が大きく、A・マドリードを抜いて2番手の座を回復しています。
3強の補強戦略を占う
全般的にやや改善傾向にあることを確認した後は、個別クラブ別に補強費の動向を見てみましょう。A・マドリードを含む3強を見ていきます。
A・マドリードの今夏の振る舞いは、かなり勝負を賭けてきたと言っていいでしょう。移籍市場の収支は約-9,100万ユーロ(-142億円相当)と2018-19シーズンの約1億1,000ユーロ(-171億円相当)以来の大幅な赤字を覚悟で補強してきました。
ただ、チャンピオンズリーグ(CL)制覇などピッチ上で余程の成績が上がらなければ、このペースでの補強は難しいでしょう。A・マドリードの補強は、18/19、19/20シーズンに膨らんでいますが、これはバルセロナにグリーズマン、バイエルンにL・エルナンデス、マンチェスター・シティにロドリと大型売却を次々と決め、19/20シーズンだけで3億1,600万ユーロを荒稼ぎしたからです。
シメオネ監督就任以降の平均支出額は9,000万ユーロであることも踏まえると、今回の1億8,500万ユーロの支出は次のシーズンは続かない可能性が高いです。
2強のうち、バルセロナですが、あまりコメントすることはありません。下図の折れ線グラフだけ見て下さい。バルトメウの失策のツケを後数年は払い続けなければいけないので、補強は激渋の状態が続くと思います。
一方、レアルマドリードは余力を残しています。19/20の後は移籍市場の収支は実はプラス。本拠地のベルナベウの改装もしっかり決めて、スタジアム収入も大きく増えるので財政には問題なし。そのため、スカッドに差し迫った補強の必要性が生じれば、躊躇なく資金を投じてくるはずです。個人的にはディフェンスラインのバックアッパー大丈夫かなと思うのですが、皆さんはどうでしょう。
ビジャレアルも面白いかもよ
3強以外で注目はビジャレアルです。金額で言うと目立たないのですが、クラブの歴史の上では18/19シーズン以来の大金を移籍市場に投じました。
ビジャレアルは売れないと買わないスタイルのクラブなので、え?何を期待するの?と見えてしまうかもしれません。
ビジャレアルの魅力と言えば、選手選びの選球眼の素晴らしさです。セグンダ(2部)降格時点では一時終わったと思ったのですが、なんなく1シーズンで1部復帰し、コロナ禍の落ち込みを除けばコンスタントに6000万ユーロの売却を成功させています。
今年の夏もスルロット、ヨルゲンセンでしっかり売却益を確保しました。ブレアトンは1シーズンのみの所属、しかも後半はシェフィールド・ユナイテッドへのローンで何だか換金用みたいな扱いになってしまいましたが、新天地のサウスサンプトンで頑張ってほしいです。
さてはてセビージャのモンチパワーが無くなった今、育成に加え、無名選手の発掘でワクワクさせてくれるのは、ビジャレアルをおいて他はいません。下図は今季に移籍金有で加入した選手一覧です。マンチェスターユナイテッドのカンブワラはトップチーム定着前に思い切っての獲得となりました。それ以外だとアジョセ・ペレスを除くと、すいません、誰も分かりません。
でもそれでいいんです!ここから「うぉぉ強!」という活躍を見せてくれる選手が現われるのがビジャレアルの凄いところ。ローガン・コスタは5節のマジョルカ戦でラ・リーガ初得点。なお、アジョセ・ペレスは既に3得点といぶし銀としての強さを見せつけています。ディエゴ・コンデは新守護神として5試合連続先発と新戦力のフィット感はかなり上々、楽しみ以外他ありません。
今回はビジャレアルを取り上げましたが、それ以外のオトラ・リーガ(3強以外のチームそ)も個性豊かなチームが揃っています。皆様がラ・リーガを美味しく召し上がれるよう、また記事を書いていければと思います。それでは本日も良いサッカー生活を!