日テレ1-2浦和L(2021年9月12日)
今回は、WEリーグ開幕節、味の素フィールド西が丘で行われた日テレベレーザ対浦和レッズレディースの一戦です。
試合前
なでしこリーグからWEリーグへ。個人的には期待半ば不安半ばといった感じのプロリーグ開幕。直前のオリンピックが残念な(でも、ある意味順当な)結果に終わった今、独力でどこまでリーグを盛り上げられるのか、注目していきたいと思っています。
この試合に関して言えば、注目していたのは浦和の塩越柚歩。オリンピック直前でメンバー入りし、そこで結果を残して最終メンバーに入って注目を浴びた分、本番では満足のいくプレーが出来たとは言えず悔しさもあったと思います。ですが、こういう選手がえてして伸びていくものだと個人的に思っているので、これからの塩越柚歩は要注目です。また、浦和では左右のサイドで起用されていた印象が強いですが、代表では前線に近い位置で起用されていたので、彼女がどこのポジションに入るかも気になります。
日テレベレーザ側で言えば、守備面の改善。一昨年にCB岩清水梓が産休に入り、同じくCB土光真代が昨年大怪我をした事で、なでしこリーグ5連覇を支えたレギュラーが揃って長期不在となった事が、守備面はモチロン攻撃面でも大きな影響を及ぼし、なでしこリーグ最終年の優勝を逃しました。土光真代が怪我から復帰した事で、守備とビルドアップがどこまで改善されるか。ココに注目したいと思います。
前半
安藤梢のキックオフで試合開始。
試合開始直後から、浦和が安藤梢と、この試合2トップに入った塩越柚歩を先頭に猛烈なプレスを仕掛けます。
4分、GK田中桃子から村松智子へ短く繋いだゴールキックに対して安藤梢が猛然とプレスを仕掛け、奪ったボールを素早く中央へクロス。ボールはエリア内でブロックに入った村松智子の手に当たったように見えましたが、判定はノーファール。
こういう、パス回しでプレスを剥がせずにやられるパターンが、昨シーズンのベレーザほんとに多かったんですよね・・・
5分、最終ラインに下りていた栗島朱里が右サイドに展開すると、清家貴子がダイレクトで縦へ。
前線に残っていた猶本光がそのままエリア内までドリブルで持ち上がって左足でシュート。
このシュートはベレーザ両CBがブロック。
ここまで防戦一方だったベレーザも9分、土光真代が前線にフィードを送ると、ファーストタッチで上手く裏に抜け出した植木理子が左足でシュート(ゴール右へ)
13分、浦和ゴール前での攻防から水谷有希が大きく前方に蹴り出すと、右サイドを駆け上がった猶本光がそのままドリブルで独走。
そのままエリア内まで持ち込むと、懸命に追いかけて来た村松智子との1対1から縦に仕掛けて・・・
中央にクロス。
コレは村松智子が懸命に体を投げ出してブロック。
18分、右サイドからのFKを猶本光が中央へ。
このボールに飛び込んだ清家貴子がにサイドでフリック。
GK田中桃子がセーブしてゴール前にこぼれた所へ今度は安藤梢が飛び込む。
これもGK田中桃子が体を張ってストップ。
守備の立場で考えると、清水梨紗選手、ココは絶対に入り込まれちゃいけない場所では・・・
20分、宮川麻都の絶妙な縦パスから小林里歌子が左サイドを持ち上がり、中央の遠藤純へ。
遠藤純がさらに右へ展開すると、オーバーラップしていた清水梨紗がくさびに入った中里優とのワンツーからエリア内へと侵入して右足でシュート。
しかし、シュートはわずかに右へ。
27分、最終ラインでのボール回しからセンターサークル内でパスを受けた中里優が、反転からドリブルで持ち上がって前線にスルーパス。これに反応した植木理子がオフサイドギリギリでDFラインの裏へ抜け出ると、そのままドリブルで持ち上がって右足でシュート。
しかし、このボールはGK池田咲紀子がシッカリとストップ。
30分、遠藤純から左サイドに展開したボールを小林里歌子が受けると、インナーラップしてエリア内に侵入した宮川麻都へ。切り返した所で、一度水谷有希と高橋はなにボールを奪われますが、エリア内で柴田華絵に渡ったボールを中里優が奪い返すと、そのまま左足でシュート。
しかし、これもGK池田咲紀子の正面。
31分、自陣から持ち上がろうとした柴田華絵から中里優がボールを奪うと、遠藤純から小林里歌子へスルーパス。これは栗島朱里にカットされますが、こぼれた所を遠藤純が得意の左足でシュート(GK池田咲紀子がセーブ)
そして、試合が動いたのは33分。自陣ペナルティーエリア付近でのパス回しから、最終ラインに下りていた三浦成美が一気に前線へロングパス。
またもタイミング良く裏へ抜け出した植木理子がドリブルで持ち上がり、高橋はなのチェックを受けながらも、左側を駆け上がって来た小林里歌子へパス。
小林里歌子が一度左へ持ち出して高橋はなと清家貴子を引き付け
中央へリターンパスを送ると
コレを植木理子がシッカリとゴールに流し込んで1-0。
日テレベレーザが先制点ならびにWEリーグでのチーム初得点を奪います。
日テレベレーザからすると、今日何度も狙っていた形で、浦和レッズレディースからすると、今日何度も狙われていた形からのゴールとなりました。
36分、中盤でのボール回しから三浦成美が大きく右サイドに展開すると、清水梨紗がワントラップから中央へアーリークロス。このボールにエリア内の植木理子が頭から飛び込むも、高橋はなに触られてCKへ。
この右からのCKを遠藤純が左足で中央に入れると、走り込んだ土光真代がヘディングシュート(ボールは枠の外へ)
40分、中盤で中里優がボールを奪うと、小林里歌子がドリブルで持ち上がり、植木理子が斜めの動きをして空けたスペースに入って来た遠藤純へ。一度左足に持ち替えてから中央に送ったラストパスに植木理子が飛び込みますが・・・
わずかに届かず。
44分、高橋はなからGK池田咲紀子へのバックパスに対して遠藤純が猛然とプレス。池田咲紀子が前方に蹴り出したボールを清水梨紗がカットすると、植木理子とのワンツーでエリア内まで持ち上がって右足でクロス。
このボールに小林里歌子が飛び込みますが
わずかに合わず、GK池田咲紀子がキャッチ。
前半はこのまま1-0で終了。立ち上がり、浦和のハイプレスに苦しんだベレーザでしたが、20分頃からは、終始ペースを握っていたのではないかと思います。欲を言えば、先制点を取った後の押せ押せの時間帯にもう一点取っておきたかったような気もしますが・・・
後半
水谷有希⇒菅澤優衣香
菅澤優衣香がトップに入り、安藤梢が中盤右サイドへ。
46分、センターライン付近からの南萌華のバックパスがズレてあわやオウンゴールに(ボール右へ)
48分、ゴール正面で土光真代からボールを受けた遠藤純が、そのまま左足でミドルシュート。
49分、センターライン付近でボールを持った高橋はなから縦パスが入ると、このボールで右サイドを抜け出した安藤梢が中央に早いクロス。
このボールに中央の菅澤優衣香が滑り込みながら右足で合わせて1-1。浦和が同点に追い付きます。
交代策がこれ以上ない形でハマったゴールとなりました。
49分、清家貴子⇒長嶋玲奈
52分、バックパスを受けたGK池田咲紀子からのパスを高橋はなが受けた所で小林里歌子がプレス。こぼれたボールを中里優がフォローし、木下桃香からパスを受けた小林里歌子がエリア外からミドルシュート(ゴール左へ)
60分、栗島朱里が足をつってピッチに座り込む。
62分、栗島朱里⇒遠藤優
安藤梢が柴田華絵と中央に入り、右に猶本光、左に遠藤優
64分、南萌華から前線へのフィードを佐々木繭が胸で落として塩越柚歩へ。三浦成美がと中里優に挟まれて失ったボールを安藤梢がフォローし、佐々木繭、遠藤優と細かく繋いで再び塩越柚歩へ。
木下桃香につつかれてロストしたボールを佐々木繭が拾って左足でシュート(GK田中桃子の正面)
65分、木下桃香⇒北村菜々美
68分、清水梨紗からのパスをセンターライン付近で受けた遠藤純が、近寄って来た北村菜々美にボールを預けてスルスルと前へ。
佐々木繭の裏を取ってリターンパスを受けた遠藤純がカットインで南萌華の寄せをかわして左足でシュート。
一度かわされた南萌華が懸命に寄せてシュートをブロック。
70分、猶本光⇒島田芽依
島田芽依が前線に入り、遠藤優が中盤右サイド、塩越柚歩が左サイドへ。
(数分後、島田芽依が左、中央塩越柚歩に再変更)
72分、GK池田咲紀子のロングフィードを塩越柚歩が頭でそらし、島田芽依が左サイドでボールキープ。フォローに入った塩越柚歩から遠藤繭、安藤梢と短く繋ぎ、柴田華絵がくさびのパス。菅澤優衣香、遠藤優とワンタッチでつないだボールを柴田華絵が右足でシュート。
清水梨紗と三浦成美が体を投げ出してブロック。
73分、自陣エリア内からのクリアボールを拾った小林里歌子が前線に縦パスを入れると、裏に抜け出した植木理子がドリブルで持ち上がって左サイドからエリア内に侵入。
高橋はなとの1対1から縦に持ち出して左足でシュート(枠の外へ)
飲水タイム後、浦和の陣形が右に遠藤優、左に島田芽依、柴田華絵をアンカーに、安藤梢、塩越柚歩の2人がセンターという形に変わりました。
77分、センターサークル付近で三浦成美が安藤梢からボールを奪うと、中里優が前線にスルーパス。高橋はなの伸ばした足に当たってコースの変わったボールを小林里歌子が拾って左足でシュート(GK池田咲紀子がキャッチ)
79分、センターサークル付近の三浦成美からスルーパスが送られると、裏へ抜け出した植木理子がドリブルでゴール前へ。
追いすがる南萌華と高橋はなを引き付けて、並走するラストパスを狙うも、高橋はなに当たって失敗。
今までのプレーからいって、そこは自らシュートで良かったんじゃないかなあ・・・
80分、直前のプレーで足をつっていた安藤梢がピッチに倒れ込む。
82分、安藤梢が再びピッチへ。
85分、宮川麻都⇒松田紫野
86分、中央でボールを受けた菅澤優衣香が右に展開すると、塩越柚歩からのリターンパスを受けて右足でシュート(村松智子がブロック)
88分、自陣センターサークル内でボールを受けた塩越柚歩がドリブルで持ち上がってDFラインの裏へスルーパスを送るも、抜け出した菅澤優衣香よりも一瞬早くGK田中桃子がボールにタッチ。
こぼれ球を拾った菅澤優衣香が中央にボールを入れると、島田芽依がトラップから右足でシュート。
DFのブロックにあってこぼれた所を塩越柚歩が拾うと、北村菜々美をブロックしながら一度後方のスペースに持ち出し、反転から右足でシュート。
このボールが鮮やかにネットを揺らして1-2。
試合終了間際、ついに浦和が試合をひっくり返します。
89分、村松智子⇒菅野奏音
菅野奏音を中盤に入れて3バックにシフト。
92分、自陣ペナルティーエリア内で競り合った際に塩越柚歩が足をつってピッチに倒れ込む。
94分、塩越柚歩が再びピッチへ。
試合はそのまま1-2で終了。強豪同士の対戦となったWEリーグ開幕戦は、浦和レッズレディースが逆転での勝利を収めました。
試合を終えて
まず浦和レッズレディースに関してですが、WEリーグ開幕までの準備期間に、相当フィジカルを鍛えて来たのかな。そう感じる試合内容でした。象徴的だったのが猶本光。彼女の事は2012年に日本で開催されたU-20W杯の頃から観てますが・・・
あれ?こんなにガッシリした(年頃の女性には失礼な表現かも知れませんが)選手だったっけな?
あれ?こんなにドリブルで持ち上がったり、フリーランニングでスペースに飛び出したりする選手だったっけな?
と、思いました。また、彼女以外にも、浦和の選手は総じて運動量が多く、当たりの早さと激しさが目立ちました。
注目していた塩越柚歩に関しても、猶本光と同様、
あれ?こんな選手だったっけ?
という印象です。攻める時は最前線、守る時は最終ラインまで、文字通りピッチの端から端まで走り回ってました。昨年か一昨年観た際には、サイドのハーフとして出場していて、そこまで印象に残るプレーヤーではなかったのですが、以前とはまるで別の選手になった気がします。
また、チームとしても、彼女のスタイルを存分に活かそうという狙いが見えました。後半途中に島田芽依が入って来たタイミングで、塩越柚歩が左サイドにポジションを変えようとしたのですが、私の空耳でなければ、そのタイミングでベンチから「ボックス!」という声が塩越柚歩にかかってました。
恐らくは「ボックスの幅から出るな」という意味なのかな、と。それから少しすると、新しく入った島田芽依が左に出て塩越柚歩が中に入ってました。
塩越柚歩のプレースタイルは、最近あまり見なくなりましたが、少し前までイングランドで使われていた、中盤がフラットな4-4-2。その中でジェラード、ランパード、スコールズといった世界的な名手を生んだセンターハーフという位置づけが一番シックリ来ました。FWまでこなせる利便性を考えると、その中でも一番近いのはマンチェスター・ユナイテッドの黄金期を支えたポール・スコールズかと思います。今のなでしこの中ではあまり見ないプレースタイルだと思いますので、是非このまま小さくまとまらず、ボールの位置と一緒にフィールを全てを上下動するようなスケールの大きな選手になって欲しいと思います。
一方の日テレベレーザですが、長谷川唯、田中美南、山下杏也加、籾木結花、宮澤ひなたと、自分が観て来たココ数年で、なでしこリーグ5連覇を支えた主力から準レギュラーまで多くの選手がチームを離れました。まだまだ現役の代表や代表クラスを数多く抱えているのも事実ですが、華麗なパス回しと前線の破壊力で他を圧倒していた頃とは別のチームになったと考えるのが妥当でしょう。
それでもこの試合では、植木理子の鋭い裏への飛び出しを活かし、時にはDFラインからのロングフィードも辞さない縦に鋭いサッカーで浦和ゴールを再三脅かしていました。コレがこのチームの目指すサッカーなのかどうかは、もう何試合か観ないとわからない部分もありますが、少なくとも、現有戦力のパフォーマンスが最大限活かせる戦い方だったと思います。
この戦い方を推し進めるのであれば、前線、特に植木理子と小林里歌子が健康体で一年を過ごし、なおかつ得点を量産する事が必要不可欠になって来ると思いますので、2人の今後のパフォーマンスに期待したいと思います。
今日の一枚
ある意味では、コレがこの試合を象徴した一枚かな、と。浦和はこの試合で栗島朱里、安藤梢、塩越柚穂の3名が足をつってピッチに倒れました。ペース配分とかコンディション的にどうなのよ、という見方も当然ありますが、絶対に負けられないという気持ちの現れと取る事も出来ますし、私たちは今シーズンこれくらい走るんだ、という意思を日テレベレーザをはじめとする相手チームに見せつけたとも言えます。
安藤梢と塩越柚歩は「そりゃ、足もつるよね」という運動量とプレーの内容でしたし、何より、交代枠の問題があったとはいえ、この後ピッチに戻って来ましたからね。すごい根性してると思いますよ。
スタッツ
ハイライト映像
フルタイム映像
次回予告
Jリーグは9/18(土)のFC東京対横浜FC、
WEリーグは9/25(土)の日テレベレーザ対サンフレッチェ広島レジーナの試合を観戦予定です。