日テレ1-2INAC神戸(2020年9月12日)
今回は、2020年なでしこリーグ第10節、味の素フィールド西が丘で行われた日テレベレーザ対INAC神戸の一戦です。
試合前
首位:勝点21 浦和レッズレディース
2位:勝点19 日テレベレーザ
3位:勝点14 INAC神戸
個人的に、今のリーグの3強と見ているチーム同士の直接対決。しかも、昨年まで5年連続ベストイレブン、4年連続得点王、2年連続MVPと、日テレベレーザの文字通り絶対的エースだった田中美南が今シーズンからINAC神戸に移籍しての古巣対決。
ましてや、第7節のマイナビベガルタ仙台戦を観た限り、守備陣に故障者続出の日テレベレーザは明らかに問題を抱えてました。
同じく元日テレベレーザ岩渕真奈と組む代表2トップをどう抑えるのか。個人的な興味はその一点に集中してました。
前半
5分、中盤でのボールの奪い合いから伊藤美紀がダイレクトで岩渕真奈へ縦パス。反転からドリブルを試みた所で村松智子と長谷川唯に挟まれるも、体勢を崩しながら何とか足を伸ばしてパス。フォローした阪口萌乃が、右足でボールをすくい上げるようにして浮き球のパスを送ると、タイミングよく走り込んでいた田中美南がDFラインの裏へ。
そのままエリア内からの左足シュートでネットを揺らして0-1。
昨年までのチームメイトから開始早々に手痛い一発を喰らいます。
10分、左サイドで木下桃香からのスローインを受けた植木理子が上手く体を入れて三宅史織のチャージをいなし、そのままドリブルでエリア内に進入。ラストパスに長谷川唯が飛び込むも、守屋都弥と鮫島彩が体を投げ出してシュートを阻止。
12分、左サイドから遠藤純がアーリークロス気味に入れたボールは三宅史織に頭で跳ね返されるが、こぼれ球を拾った小林里歌子が左足でシュート(三宅史織のブロックに阻まれCKへ)
12分、そのCKを菅野奏音が左から中央に入れると、ファーサイドの有吉佐織がヘディングシュート(枠の外へ)
16分、岩渕真奈から守屋都弥へと一度下げた所で小林里歌子が激しく体を寄せてボールを奪うと、菅野奏音からのダイレクトの縦パスを受けた長谷川唯がドリブルで持ち込んでシュート(枠の外へ)
18分、三浦成美が自陣から大きく前方にフィード。植木理子が三宅史織と競り合いながらこのボールを収めると、一度小林里歌子に預けたリターンを植木理子が右足でシュート。
しかし、シュートはわずかに左へ。
19分、三浦成美から裏へ抜け出そうとした木下桃香へのパスを三宅史織がカットすると、伊藤美紀を経由してボールは田中美南へ。ドリブルでタメを作りつつ村松智子と松田紫野を引き付けてからスルーパスを放つと、オフサイドラインギリギリで抜け出した岩渕真奈が独走。
GK山下杏也加との1対1から冷静に右足でシュートを流し込み0-2。鮮やかなカウンターから追加点を奪います。
自陣ゴール前からほぼ直線的に一気に相手ゴールまで・・・お見事。
23分、右サイドでの有吉佐織、長谷川唯、小林里歌子のボール回しから有吉佐織がエリア内へグラウンダーの縦パスを送ると、エリア内でボールを受けようとした小林里歌子が鮫島彩に倒されてPKを獲得。
24分、このPKを小林里歌子自らゴール右に決めて1-2。日テレベレーザが1点差に追い上げます。
このゴールで、小林里歌子はリーグ戦6試合連続の10点目。
30分、INAC神戸ゴールキックからのパス回しに対して前からプレッシャーをかけると、GKスタンボー華からの縦パスを木下桃香がカット。ドリブルからの縦パスをペナルティーアークで受けた三浦成美が右にさばくと、小林里歌子がワントラップから左足に持ち替えてシュート。
三宅史織にブロックされてこぼれたボールを三浦成美が今度は左にさばくと、植木理子が逆サイドを狙って右足でシュート。
しかし、このシュートにも三宅史織が立ちふさがり、ヘディングでブロックしてCKへ。
45分、中盤でのボールの奪い合いから阪口萌乃が縦に繋いだボールを岩渕真奈が受けて反転からドリブル。タイミングよくスルーパスを出すと、走り込んだ田中美南がボールキープから再び縦のスペースへ流し込み、外から走り込んだ阪口萌乃がダイレクトでクロスボール。
このボールに髙瀬愛実が飛び込むが、わずかに合わず。
46分、最終ラインの三宅史織がグラウンダーのパスで右サイドへ展開すると、ボールを受けた水野蕗奈が1対1で遠藤純を振り切って右サイドを突破。そのままエリア内まで持ち込んで折り返したボールをフリーで走り込んでいた阪口萌乃が右足でシュートするが、上手くミートせずに枠の外へ。
前半は1-2で終了。ボール支配率は圧倒的に日テレベレーザが上でしたが、体を張った守備とシンプルで鋭いカウンター、前線2人のキープ力と決定力でINAC神戸がリードを奪って前半を折り返しました。
後半
49分、菅野奏音からのグラウンダーの縦パスを受けた植木理子がドリブルから右足でシュート(CKへ)
このCKを菅野奏音が右足で中央に入れると、マークについた鮫島彩ともつれ合いながらも有吉佐織が体を投げ出してコースを変えるが、GKスタンボー華が何とか弾き返す。
53分、INAC神戸のDF陣に激しくプレッシャーをかけて相手ペナルティーエリア付近でボールを奪うと長谷川唯、有吉佐織と繋いで右に展開。三浦成美がエリア内に流したボールを有吉佐織がマイナスに折り返し、走り込んだ小林里歌子がシュート。
このボールは三宅史織が体を投げ出してブロック。
55分頃から、長谷川唯をトップ下に上げて、三浦成美がアンカー、木下桃香と菅野奏音が左右に入るダイヤモンド型の中盤にシフトチェンジ。
56分、阪口萌乃⇒京川舞
59分、岩渕真奈が足を痛めてピッチに倒れ込む⇒ピッチの外へ。
62分、岩渕真奈⇒増矢理花
岩渕真奈のつけていたキャプテンマークは守屋都弥へ。
66分、今度は鮫島彩が足を痛めてピッチに倒れ込む⇒ピッチの外へ。
一時的に、左利きの杉田妃和が左SBの位置へ。
70分、有吉佐織⇒宮川麻都、植木理子⇒宮澤ひなた
70分、鮫島彩⇒西川彩華
西川彩華が中盤に入り、左SBはそのまま杉田妃和が埋める形に。
73分、最終ラインから松田紫野が左に展開すると、サイドライン際で受けた遠藤純が縦のスペースへグラウンダーのパス。交代したばかりの宮澤ひなたがドリブルでエリア内まで持ち込んで折り返し、小林里歌子が杉田妃和ともつれ合ってこぼれた所を木下桃香がダイレクトでシュート。
しかし、このボールをスタンボー華がファインセーブ(CKへ)
77分、杉田妃和から中盤へのパスがミスになった所を三浦成美が拾って縦に入れると、ボールを受けた宮澤ひなたが反転から左足でシュート(GK正面)
78分、中盤でボールを拾った三浦成美が右に展開すると、パスを受けた菅野奏音が左足でシュート(CKへ)
82分、ペナルティーエリアの外でボールを持った木下桃香が宮澤ひなたとのワンツーから左に展開。遠藤純がエリア内に流したボールを宮澤ひなたが中央に折り返すと、小林里歌子の直前で守屋都弥にカットされてこぼれた所を長谷川唯がダイレクトでシュートするが、ここもスタンボー華がセーブ。
さらに、京川舞のクリアが小さくなった所を遠藤純が狙いますが、 三宅史織が足を伸ばしてブロック。
83分、木下桃香⇒中里優
中里優が右に入り、菅野奏音が左へ。
91分、中盤でのボールの奪い合いからこぼれた所を伊藤美紀が鋭い出足でボールを拾ってそのままスルーパス。抜け出した増矢理花がドリブルで持ち込んでシュートを狙うが、懸命に戻った松田紫野が足を伸ばしてブロック。
93分、GK山下杏也加まで前線に上げての右からのCK。遠藤純が左足で蹴り、中央でこぼれた所をファーサイドに走り込んだ宮澤ひなたがシュート。
しかし、GKスタンボー華の横を抜けたこのシュートを、カバーに入っていた杉田妃和がゴールライン直前でクリア。
そして、試合は1-2で終了。INAC神戸が日テレベレーザに対して2017年以来となるリーグ戦での勝利を収めました。
試合を終えて
意地と意地がぶつかり合う非常に熱量の高い試合でした。
ただ、少なくともこの試合に限って言えば、前線2枚のキープ力と突破力、決定力。攻守ともに、必要であれば前線を飛び越えて行く中盤センター2枚のプレーエリアの広さと運動量。特に後半、どんなに押し込まれても最後の一線は絶対に超えさせない気迫と体を張った守備。色んな面で少しずつINACがベレーザを上回っていたと思います。
戦術的にも、また然りです。
攻撃面に関して言えば、ボールを奪ったら2枚のCBの裏を素早く突く事を、おそらく徹底されていたんだと思います。1点目の、半ば強引に浮き球のパスをCBの裏に落としたシーンがまさにその象徴だったと推測されます。
実は、第7節のマイナビベガルタ仙台戦でも、日テレベレーザ守備陣は何度となくDFラインの裏に走り込まれて独走を許すシーンがありました。その時は、GK山下杏也加が相手FWとの1対1を2度ストップして事なきを得ましたが、このシーンは、当然INAC神戸の首脳陣によってリストアップされていたはずです。ましてやINACの前線は、岩渕真奈と田中美南という単体で勝負できる個を備えた代表クラス2枚。日テレベレーザのウィークポイントを自分たちの最大のストロングポイントで狙い撃つ。非常に理にかなった戦法だったと思います。
守備面に関して言えば、日テレベレーザのビルドアップに対して、CBの2人をプレスの対象から外していたように見受けられました。
CBにプレスをかけなくても、日テレベレーザの戦術的に彼女たちからロングボールが出る事はないと見越して、プレスのスタート位置をCBではなくボランチ2枚の所に設定していたと思われます。
その代わり、プレスのスタート位置を下げる一方で最終ラインを高めにして全体の距離感を圧縮し、両CBへのプレスを抑える事でその後方に8対10の数的数理な状況を作り出し、日テレベレーザの攻撃陣に対し常に複数名でチェックに入れる体制を作ってました。
18分のシーンのように、後ろから全部すっ飛ばしてDFラインの裏に放り込むボールをもう少し増やしても良かったように思うんですが、チームスタイルへのこだわりからかそのようなシーンはあまり見られず、結果的にINAC神戸の網の中でパスを回すシーンが多かったように思いました。
今日の一枚
結果的に、決勝点とはならなかったにせよ、この先制点が今日の全てだったのかな、と。
開始5分に失点した事で、当然、日テレベレーザは同点・逆転を目指して前からプレスをかけるし、攻撃にも人数を割く。攻撃で守備でも前に人数をかけるという事は、当然その分後ろの数が減る。そこにカウンターで追加点。
早くに先制点を奪ったことで、守備でも無理して前から追いかけずにシッカリ待ち構えてプレスの網を張り巡らす事が出来た。
INAC神戸にとっての全ての好循環は、田中美南のこの1点から生まれました。
今日の一枚・番外編
試合の本筋とはあまり関係ないですが、後姿のよく似た2人がほぼ左右対称の姿勢をしてたので、一瞬ドッチがドッチかわからなくなって二度見しました。左(長袖)が宮川麻都、右(半袖)が宮澤ひなた。この後、2人揃って仲良く途中出場してました(笑)
スタッツ
ハイライト映像
次回予告
一週飛ばして、次回は9/26(土)伊賀FCくの一三重戦を予定してます。