東京3-0湘南(2020年8月23日)
今回は、2020年Jリーグ第12節、味の素スタジアムで行われたFC東京対湘南ベルマーレの一戦です。
試合前
MF橋本拳人:7/18浦和戦を最後にロシアへ
MF東慶悟 :7/22札幌戦で負傷(右足骨折による手術で全治3~4ヶ月)
DF室屋成 :8/23名古屋戦を最後にドイツへ
全34試合中11試合。
シーズンの約3分の1を終えた段階で6位とまずまずの位置につけながら、主力の移籍に負傷が重なり、チーム再編の真っ只中の印象すら漂うFC東京。
本日は室屋成が去った右SBにJ1デビューとなる中村拓海。橋本拳人が去った中盤には、高萩洋次郎をあえてベンチからも外してJ1初先発となる品田愛斗を起用と、非常にフレッシュな顔ぶれでの戦いとなりました。
前半
5分、東京陣内でレアンドロからボールを奪った齊藤未月がドリブルで持ち上がって左のスペースへパスを送ると、レアンドロの追走より一瞬早く岩崎悠人が中央にクロス。
走り込んできた石原直樹が合わせるもGK林彰洋がセーブ。
6分、左サイドでのスローインからボールがこぼれた所を三田啓貴がフォローしてディエゴ・オリヴェイラが右サイドに展開すると、フリーで走り込んで来た中村拓海がワントラップから右足でシュート(GK谷晃生の正面)
8分、品田愛斗のフィードを右サイドで受けた中村拓海が一度後ろに戻し、永井謙佑、三田啓貴、中村拓海とのパス交換からディエゴ・オリヴェイラが裏のスペースへスルーパス。走り込んだ中村拓海がダイレクトで中央に蹴り込むと、ボールはそのままゴール方向へ(再びGK谷晃生がセーブ)
20分、馬渡和彰の右サイドからのCKからファーサイドの大野和成がヘディングでシュート(GK林彰洋がセーブ)
27分、東京DFラインのパス回しの中で、小川諒也からのボールが中途半端になった所を岩崎悠人が拾うと、そのままドリブルでエリア内まで持ち込んで左足でシュート(バーの上へ)
31分、中盤で三田啓貴が相手のプレスを受けながら左に展開すると、小川諒也がワントラップから左足で入れたクロスを、中央に飛び込んだディエゴ・オリヴェイラがヘディングシュート(枠の外へ)
37分、小川諒也が中盤からDFライン裏に浮き球のボールを送ると、抜け出した永井謙佑がエリア内から右足でシュート
このボールはGK谷晃生が右手を目いっぱい伸ばしてセーブ。
このプレーで得たCKを小川諒也が左足で中央へ。
ここはGK谷晃生がパンチングしますが、そのボールが目の前にいた坂圭祐に当たってゴール前の密集地帯へ。
最後はゴール前で待ち構えていた永井謙佑が、マークについていた齊藤未月を体で抑え込みながらゴールに流し込んで1-0。
東京が先制点を挙げました。
44分、自陣深くからの中村拓海の浮き球のパスから、三田啓貴がドリブルで持ち上がってDFラインの裏へスルーパス。走り込んだ永井謙佑の折り返しはディエゴ・オリベイラとはわずかに合わないが、後ろに残した所を三田啓貴が左足でミドルシュート(GK谷晃生がセーブ)
前半はこのまま1-0で終了。
ラッキーな形で、と言ってしまえばそれまでですが、そのラッキーをシッカリ落ち着いてゴールに流し込んだ東京が前半をリードして折り返しました。
ボール支配率は47%ながら、シュート総数8本(湘南は3本)枠内シュート5本(湘南は2本)は、いかにも東京らしい試合展開だと言えるでしょう。
ただ気になったのが、前半の東京のアタッキングサイドが左53%(中央22%、右25%)だった事。室屋成がいた時にはまず見られなかった数値です。初出場の中村拓海も頑張っていましたが、やっぱり慣れてる方に流れて行ってしまうのはやむを得ない所でしょうか。
一方、湘南の前半のアタッキングサイドも左50%(中央16%、右34%)とかなり左(東京の右)に偏っていました。馬渡和彰の右足でのクロスが目立ってましたが、それを引き出す山田直輝のポジショニングが個人的には目を引きました(後述予定)
後半
岩崎悠人⇒タリク、齊藤未月⇒松田天馬
49分、湘南陣内での金子大毅への品田愛斗のプレスからレアンドロがパスカットすると、ボールを受けた永井謙佑がドリブルでアリア内に進入し、切り返しで右足に持ち替えてからマイナス方向にラストパス。
これを中央のレアンドロがダイレクトで狙うも、ボールはバーの上へ。
55分、中盤でのボールの奪い合いから、石原直樹が体勢を崩しながらもDFラインの裏にボールを送ると、抜け出したタリクがエリア内から右足でシュートを放つが、GK林彰洋が左手一本でセーブしてCKへ。
57分、敵陣深くで馬渡和彰からボールを奪い取った中村拓海が中央に鋭いクロス。永井謙佑と安部柊斗が合わせきれずに左サイドまで流れた所をレアンドロがフォローすると、エリア内のディエゴ・オリヴェイラとのパス交換から右足でシュート(GK谷晃生の正面)
63分、湘南陣内でのプレスでボールを奪ったディエゴ・オリヴェイラが縦にボールを入れると、レアンドロがエリア左から右足でシュート(枠の外へ)
63分、中村拓海⇒中村帆高、三田啓貴⇒アルトゥール・シルバ
76分、永井謙佑⇒アダイウトン
途中交代の時は、いつも一礼してからピッチを去る永井謙佑
79分、レアンドロからエリア内に走り込んだ小川諒也へのパスはカットされますが、クリアボールを中央で拾った品田愛斗がワントラップからロングシュート(GK谷晃生がセーブしてCKへ)
85分、GK林彰洋からのロングキックが跳ね返された所をディエゴ・オリヴェイラがフォローし、レアンドロとのパス交換からドリブルで前へ。ペナルティーエリア直前でもう一度レアンドロとワンツーを行ってDF全員を置き去りにすると、エリア内から左足でシュート。
これがGK谷晃生の脇を抜いて2-0。東京が貴重な追加点を挙げます。
ディエゴ・オリヴェイラがドリブルを始めた段階で湘南の選手は6人くらい戻ってたはずなんですが、2度のパス交換とドリブルで全員を置き去りにしてしまいました。恐るべき突破力と破壊力。
腰を揺らすいつものパフォーマンス。
87分、山田直輝⇒指宿洋史、岡本拓也⇒古林将太
87分、ディエゴ・オリベイラ⇒原大智
ゴールを手土産にお役御免のディエゴ・オリヴェイラ
89分、湘南のサイドチェンジをカットした小川諒也がそのままドリブルで持ち上がって縦パスを送ると、DFラインの間に入り込んだレアンドロがエリア内に進入し、右への切り返しで坂圭祐をかわして強烈なシュートを放つも、GK谷晃生が右足でセーブ。
今日はつくづく、レアンドロの日じゃないんだな、と・・・w
92分、中央やや距離のある位置からのFKを馬渡和彰が直接シュート(GK林彰洋がセーブしてCKへ)
その右からの馬渡和彰のCKを林彰洋が大きくパンチングすると、そのボールを松田天馬を体でブロックしながらレアンドロがキープし、そのまま反転。少しこぼれた所をアルトゥール・シルバがフォローしてレアンドロにリターンすると、ドリブルでDFを3人引き付けて右のスペースへラストパス。
完全フリーで待ち構えていたアダイウトンの目の前で、後ろから走り込んで来た原大智がパスをかっさらうと、ワントラップから冷静に左足シュート。
これがゴール左に決まって3-0。東京が決定的な追加点を挙げます。
DAZNの中継の中で、高校時代までは170半ばしか身長がなく、裏に抜け出すなどの多彩なプレーが持ち味だと語られた直後に、まさにそれを実践する落ち着いた足技だったと思います。
試合はそのまま3-0で終了。東京が2位争いに踏み止まる貴重な勝点3を挙げました。
試合を終えて
「試合前」でピックアップした若手2選手について簡単に・・・
品田愛斗:ダイレクトやワントラップから果敢に繰り出すスルーパス、後半に見せたロングシュート、アンカーの位置から再三飛び出して相手を潰しにかかった守備。それら全てを総括して「強気だな~」というのが率直な印象です。ただ、まだそのプレースタイルがチーム内に浸透してないように見受けられました。受け手が「感じてない」ケースが散見されたスルーパスは、そこにパスが出て来る事を周囲が理解すればもっと武器になるでしょうし、定位置から飛び出しての守備も、彼が飛び出した元の位置を周囲の選手が察知してカバーできるようになれば、もっとリスクが軽減されるはずです。
中村拓海:序盤にシュート2本立て続けに放ったり、長距離のアップダウンを繰り返して何度か決定的なクロスも入れてました。ただ、個人的に気になったのは中盤でボールを持った際のパス出し。特に前半、彼が中盤でボールを持った際に永井謙佑やディエゴ・オリヴェイラがさかんに相手DFラインの裏を狙う動きを見せましたが、そこへのボールがほとんど出ませんでした。前半の半ばくらいに永井謙佑がスタンドにまでハッキリ聞こえるボリュームで「出してくれよ!」と中村拓海に注文を付けていました。
確かに、室屋成がいた時は、あそこから裏へのボールが攻撃パターンの一つでした。
別に前任者と比較するつもりは毛頭ありませんが、彼らにはそれが体に染みついた当然の感覚なのでしょうし、ひいてはそれが東京自体の攻撃のリズムでもありました。ボールを持ったらシンプルにDFラインの裏を狙う事が武器の一つである東京において、あそこからは裏へのボールが来ないと判断して永井謙佑やディエゴ・オリヴェイラが動き出しをやめてしまう事になれば、東京にとって重要な攻撃のオプションが一つ減る事になります。
パスを出せる技術は絶対にあるはずです。要は意識の問題と、出し手と受け手のタイミングの問題だと思います。そして、出し手と受け手のタイミングは、ある程度数をこなさないと共通理解が深まらないと思いますので、まずは是非、積極的に裏へのボールにトライして欲しいと思います。
今日の一枚
実は東京ではなく湘南の選手を捉えた一枚です。
この試合をスタンドから観てて、湘南の山田直輝のポジショニングが非常に目障り(誉め言葉)でした。CB渡辺剛、SB中村拓海、アンカー品田愛斗、インサイドハーフ三田啓貴という4人の真ん中をフワフワ漂うように位置取りしてました。いわゆるハーフスペースという奴なんでしょう。彼を渡辺剛がマークするとDFラインにギャップが生まれますし、品田愛斗が見ればバイタルエリアが空く。中村拓海や三田啓貴がマークしようとすると、今度は彼の外にいる馬渡和彰が空いてくるんです。実際、彼を中村拓海が見る事で馬渡和彰が完全にフリーの状態でサイドチェンジのパスを受ける、というケースが何度かありました。結局、東京は守備の時にディエゴ・オリヴェイラを中盤に下げて変則的な4-4-2の形にする事で対応してましたが、そのディエゴも相手3バック左の大野和成がボールを持つと守備に引っ張り出される事があり、彼一人があのポジションを取る事で東京の選手が5人くらい意識と行動を制限される事になりました。
ただ惜しむらくは、湘南がその状況を活用しきれてなかった事。馬渡和彰がフリーでボールを受けるケースは見られましたが、この状態の山田直輝にもっとパスが入っていれば、東京の守備が収縮する事で色んな所にスペースが生まれる可能性があったのになあ、と思います。
スタッツ
ハイライト映像
次回予告
味スタに行けるとしたら、9/20(日)の仙台戦になると思います。満員のスタジアム・・・は無理だとしても、その頃には少し観客の制限が緩和されているとイイなあ、と淡い期待を抱いてますが・・・無理かなあ。
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