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【中編】シンガポールと日本のサッカーの違い
前編に続き、シンガポールと日本のサッカーの違いについて考察する。
前編は、ルールやレギュレーションにフォーカスしたが、中編は子どものサッカー環境について触れる。
4. 子どものサッカー環境
4.1 ヒエラルキー
日本の少年サッカーも地域に根付いた街クラブ、エリートを育成するクラブチームなどそれなりのヒエラルキーはあるが、シンガポールはこれがより顕著だ。
主なポイントを列挙する。
昇格、降格のあるリーグ戦で強いチームは選手も集まり、上と下のレベル差が明確。
チーム内で一般コース、選手コース、エリートコースなど区分するチームも多め。(目的を明確に分けることでミスマッチの可能性は減るのでこれは良い事だと思う。)
4.2 多国籍
前編で書いた通り、シンガポールという国そのものが、約4割が外国人が占める国。統計を調べたわけではないが、富や資産のシェアでいくと、外国人の割合はかなり高いはず。
後述するサッカーチームに通わせる費用を払える家庭は必然的に外国人が多くなるのはこちらに住んでいて感覚的にも腹落ちする。
ちなみに、息子たちのチームメイトの国籍を知りうるだけ書き出しても下記の通りだ。
長男(2014年生まれ);
シンガポール人、マレーシア人、アメリカ人、中国人、リビア人、日本人
次男(2016年生まれ)
シンガポール人(父がドイツ人で母がインドネシア人)、インド人、エジプト人、韓国人、オーストラリア人、日本
ドイツ代表のイチオシ選手やプレミアリーグにはサラー以外にエジプト人選手がもう一人いるとか、この手の雑談をお父さんたちと話すのも実に面白い。移籍にまつわるゴシップも日本のメディアでは知りえない話も聞ける。
国民性で一括りにするのは不適切だと思うものの、練習の態度とかも特徴がそれなりにあってシンガポールならではだと思う。
もう一つ面白い点は、試合中に我が子の声掛けは母国語を使うので、試合中は色んな言語が入り混じる。
4.3 審判
1審制がほとんど。
高学年でコートサイズが大きくなると2審制になることもあるが、私がこれまで見たリーグは全て1審制だ。
ジャッジに文句を言う保護者は少なくないが、個人的には1審制で見えないことも考慮すると審判レベルは決して低くないしおそらくリーグ戦は有資格者が全てジャッジしていると思う。
日本みたいに、保護者がボランティアで審判をやるというのはまずなく、全部お金で解決している。(これはネガティブな意味はなく、むしろ合理的だと思う。)
4.4 文武両道文化レス
これはまだ確信があるわけではないが、ローカルやこちらの生活が長い人に聞いた限りの情報だ。
学年が上がれば上がるほど、勉強とスポーツの選択を強いられる。
スポーツではごはんが食べられないという雰囲気がある。
総じて、文武両道の雰囲気はなく、勉強を重視しがち。
あくまで私の感覚であるが、スポーツでごはんは食べられないという点は日本もさほど変わらないと思うが、スポーツが勉強やヒューマンスキル、人格形成に良い影響を与えるという雰囲気は日本の方が強いと思う。
4.5 料金が半端なく高い
私が日本で子どもを通わせていたチームとこちらで通わせているチームで比較すると約8-10倍の金額差がある。
条件や兄弟割なども異なるので、Apple to Appleでの比較はできないが、指導のクオリティが大きく異なるわけではないので、日本の少年サッカーのコスパはとてつもなく高いのは間違いない。
シンガポールの場合、とてつもない金持ちが一定数いるので、子どもにプラスになるなら、親は一切お金を惜しまないというのも特徴だろう。
また、日本がデフレになること、値上げに対して消費者が過度にセンシティブであること、価値あるものに対して対価をしっかり払おうという雰囲気が乏しいことなど、決してコスパが高いと片付けではいけない日本の構造的な課題も忘れてはいけないポイントだ。
4.6 移籍が多い
選手の入れ変えが激しいのもシンガポールの少年サッカーの特徴だ。
国土が狭いので、特にうまい選手は物理的な制約なく、強いチームにいきたがる。
国土が狭い:チームを変える上で移動の制約が比較的少ない。強い(逆も然り)チームでチャンスが広がるのであれば、すぐに選手が移籍する。
親の駐在事情:(私もそうだが)駐在の子どもが一定数いるので、出入国で選手が入れ替わることが多々ある。
シーズン制:チームでの活動が年2回のシーズン制のため、シーズン終了時にチームを変えるべきか否かの問題がつきまとう。トライアルに行った他チームなどシーズン切り替え時期にはWhat's upで
ひきぬき:ブランドのあるチームやプロの下部組織は、チームの強化(レベルの強化やブランド価値の強化など)の事情で選手を引き抜くことがある。(これも知人に聞いた間接的な情報。)
4.7 保護者
とにかく熱い。
本気できれる(きれる対象は息子、指導者など様々だけど審判はよく矛先となる。)ちなみに、保護者間の口論をこちらに来て何度か遭遇したことあり(日本ではありえない)。
よく言えば熱心でだけど、子どもへの直接的な指示など前のめりな親も多数。
試合中に盛り上がると、チャントがはじまる。(これは、良い文化!)
平日の練習を見に来る親多数。なんとなく分ってきたけど、息子のチームの親はサラリーマンが少なく会社のオーナーなど、人やお金に働いてもらうパターンが少なからず起因しているであろう。
4.8 欧米資本
おそらくフランチャイズビジネスだと思うが、欧米系のクラブチームがそのブランドを活用してスクールを展開している。
ボルシアMG、バルサ、レアル、セルティック、リバプール他欧米系のチーム比率が高い。
プレミアリーグなど、東南アジアをマーケットとしていて、人口は少ないけど平均所得が高いため、シンガポールを拠点としていると思われる。
道端でプレミアリーグのユニフォーム(マンU、アーセナル、リバプールetc)を着ている人をよく見かける。プレミアリーグ人気は感覚的にも強い。
最後の後編では、その他、諸々のグランドや指導の特異な点などを綴ることとして、中編はこれでおしまい。