Leicester vs. Leeds 〜緊張の熱戦〜
EFL Championshipは第15節。
今週のDAZN放映カードに選ばれたのは、首位をひた走る降格組のLeicesterとこちらも降格組のLeeds。Leedsからすれば同じ降格組の好調さを止めなくてはならない。逆に、Leicesterはここで勝利し無敵状態でさらに勢いをつけたいところ。
そんな好ゲームが予想される一戦はどうなるか。
↓ゲームハイライトはこちらから(ネタバレしてる…)
前半
昂る雰囲気で始まる前半。
ペースを握ったのはLeedsだった。
守備的な主導権
開始からボールを持ったのはLeicesterだったが、Leedsはそのビルドアップに対して前プレからミスを誘いボール奪取に繋げる。まさに、守備で主導権を握っていると考えられる。
Leedsの前プレの手法は、前線の1枚がホルダー(CB)へワンサイドカットし限定方向を決定する。そこより後ろ(トップ〜最終ライン)では、マンツーぎみでマークをついてある程度嵌めながら前からの圧力をかける。
こうなればLeicesterは前進することができない。限定されワンサイドに追い込まれると枚数が合ってしまい嵌まる。ビルドアップ時の受け手の動きや、引き出し方が必要になる。
相手がマンツーの守備を志向するならば、攻撃側が動けばDFも動くことになる。=攻撃側が守備の形やポジショニングを決定できる。守備の位置をいじれるので主体的に操作できることになり、簡単にスペースを空けることができる。この後はどうなるか…。
次のフェーズはミドルサード。なんとか前進したLeicesterはミドルサードでも停滞感を漏らす。
ミドルサードまで押し込まれると、Leedsは4-4-2ぎみのブロックを敷いてラインを高く設定しコンパクトなミドルブロックで対応する。
Leedsはとにかくラインを高く維持することを強く意識している。ちょっとしたバックパスでもラインを上げてコンパクトにし、組み立てからの崩しを制限し相手に放らす以外の選択肢を見つけさせない(足元で繋ぐスペースを無くす)。回収の準備をするだけになるので楽。ミドルサードでも圧力をかけて崩させない。
これに対してLeicesterは、崩す機会を作ることができずにファイナルサードへの侵入やゴールへ近づくことが難しい。しかも、Leedsのハイラインのウラを狙うプレイヤーもいないので、シンプルなチャンスメイクもできていない。ひとりでもウラへ走れば相手の守備に変化を起こせるはずだ。序盤なのでそういうアクションにトライして相手の陣形の様子を見ても良い。
そんな中で、サイドのプレイヤーの仕掛けはまだ有効的なプレーに見える。特に、左サイドのマヴィディディの仕掛け。サイドで持ってからタテや中への仕掛けでゴールへ迫る。チャンスメイクの起点になっている。中央で停滞する中でサイドの個人能力が活きる。
逆の立場
逆に、Leedsが保持した際にどうなっているのかを見てみる。
Leedsのビルドアップは、サイドを出口にしSHまでボールを渡せればそこから仕掛け発動する。サイドでは、サマーヴィルやジェームズが仕掛けてチャンスメイクの中心になる。
また、CHからの展開力も攻撃のひとつになる。ロング一発でウラへ放ってチャンスにすることが主になる。ウラへ一本通せば相手のラインは低くなり、次にCHが持った時には相手はウラを警戒しロングを封じるが、狙い目のひとつでもあるサイドへ渡すことも可能になる。相手守備のライン間にもスペースが生まれそう。
Leicesterはウラを狙わないが、Leedsはかなりウラへの意識を持っているようだ。
Leicesterはこれに対して、4-4-2で構えているが高いラインの背後・ウラを取られることが多いので、サイドのケアとウラのスペースを消すことを取り組まなければならない。または、その根本からの解決として蹴らせないことが重要。ホルダーへのプレッシングが大事になる。
前線は牽制しているのに、どこかの場面でホルダーへのプレッシングが弱まることがあるのが気になる。
その後、時間が経ってからのLeedsのビルドアップに対して、CHへの監視を強めて自由度上げさせないことを優先して守る。そこへの警戒心を高めて同じようなチャンスメイクをさせない。修正はできているように感じる。
ひとつ気になったシーンをあげる。
Leedsが押し込んだ時に、左サイドでSH(サマーヴィル)とSB(バイラム)が前線に張り付いて横並びでボールを待つシーンがあった。
この意図としては、サイドの攻撃参加の枚数を増やして厚みを出すこともそうだが、サイドで受けるスペースを確保することなのでは。
SHとSBが前線に入ると、Leicesterは警戒して5バックを敷くので中盤(サイド)のスペースが空いてしまう。そうすると、そのスペースへSHかSBどちらかが降りるとCH等からサイドで受けることができる。これこそが、駆け引きから相手の陣形をいじってサイドの出口と仕掛けをできるように促すことになる。
この狙いやここまでの展開を見ると、Leedsはサイドを起点にしチャンスメイクしたいということがコンセプトであると感じられる。
しかし、Leedsはチャンス数が多い割には決定機を作れない。サイドまで入って仕掛けるもそこからがない印象が強い。仕掛けをストップされたり、クロスが流れたりで…。サイドからの仕掛けや崩しにもうひと工夫必要。
中盤に入り
序盤は攻めあぐねていたLeicesterが中盤ごろから反撃の狼煙をあげようとする。
30分過ぎたあたりから、Leicesterはビルドアップ時にアンカー(CH)が空いて、そこから展開できるようになる。間延びし始めるLeedsに対しライン間で受けて前進からチャンスへ持っていく。アンカー(CH)のみならず、トップ下やトップさえも降りて受けてサイドへ展開しようと試みる。
特に、ワントップのヴァーディがかなり降りている印象でポジショニングが低い。Leedsのラインは高く、それに背中を押されるようにしてヴァーディは降りてしまう。ただ、これはビルドアップのヘルプかつ相手を撹乱させるポジショニングでもある。そして、ウラを狙う(使う)のはサイドのプレイヤーになる。
39分のように、CHが降りてCBからボールを引き取って前進のきっかけになるシーンもある。受け手に少しでもフリーの時間があれば受けられるし前も向く時間もある。そして、受けてDFが引き付いたら次に渡せば良い。それを連続すれば簡単に前進ができる。難しく考えずに、DFを引き付けてリリースすることを行えば良いのだ。
しかし、この試合ではLeedsの激しい前プレによりそのリリースができていなかった。焦りもあったのかもしれないが。それ以前の問題だった。なので、そこをクリアできればあとは繋いでいくだけだ。
という中で、34分にはサイドで受けたイサハクがカットインからシュート。これはバーを直撃する。
前進の円滑さの向上からのチャンスだった。良い例である。
とにかく、Leicesterは相手の前プレのアグレッシブさとコンパクトさを打開したい。そのためには、少しでもピッチ内にスペース(間延び)を確保し、ビルドアップで相手の前線が引き付けてウラ返す必要がある。間延びさせるか、どれだけ自陣で引きつかすことができるか。逆に引きつかないと前進できてもブロックを崩すことになるので、難しい問題が次にある。または、保持してDFが来ていないのに次のプレイヤーのボールを渡すことになる。もし、次のプレイヤーにマークがいたらパスを出す意味がない。マークのいる味方にボールを渡しても苦しいだけになる。
逆に守るLeedsは最終ラインの押し上げとコンパクトさを維持しているが、前線のプレイヤーが後ろを考えずにプレスに行ってしまい間延びしたり、マークが合わなかったりしてしまう。
ゾーンディフェンスでの考えでは、戻る意識が大事と言われているのだが、ここではプレスに行ったきりでポジションを整えるために少しバックすることをしていない。だから、アンカーに差し込まれた際にプレスバックにも行けない距離になっている。そして、前を向かれチャンスを作られる。
やはり、アンカーや中盤でのフリーを消すことや潰すことが重要になる中で、CHが監視するのか前線のプレスをかけるプレイヤーがコースを消しながら行くのかをはっきりさせなくてはならない。
均衡したゲームはお互いにネットを揺らすことはできずに前半は0-0で終了。ペースを握っていたLeedsが先手を撃つか、劣勢ながらも立て直し始めたLeicesterがホームで勝ちきるか。勝負を占う後半へ。
後半
試合は勝負の後半がスタート。
いきなりLeedsはハイプレスを開始。コンセプトは変わらない。しかし、Leicesterはこれを逆手に片方のCHがDFを引き付けGKから引き出そうと降りる。=おとりになる。DFが連られているのでその背後にはスペースとコースがある。そして、GKはその空いたコースへパスを通した。冷静な判断と停滞感を初っ端から脱出するプレー。前半の教訓と工夫が継続されている。
Leicesterの良い落ち着きで始まったと思われた。
襲いかかるLeeds
最初のハイプレスは剥がされてしまったがそこまで気にしない。攻撃でその借りを返そうという意識を持つ。
後半の攻撃も起点となるのはサイドアタッカー。サマーヴィルとジェームズのところで収まりチャンスへ。相手の2~3列目の間で受けてシュートや決定機をクリエイトする。
そこまで至るためには、ビルドアップがしっかりできる必要がある。
ビルドアップでは、敵陣内のミドルサードへタテパスを供給するシーンが多い。トップやサイドのプレイヤーが引き出してパス1本で前進。特に、タテパスではDF2枚の間(いわゆるゲート)に通すパスがかなり有効。ここを通せば一気にDF2枚を置き去りに、無効化できるのである。
そうして、攻撃の時間とペースを掴む中でCKを獲得する。
このCKにニアで合わせたのは、バイラム。GKがこれを弾くと詰めたのはルター。ついに均衡を破る1点がLeedsに入る。
ニアで合わせたバイラムのヘッドで時が止まったように、LeicesterのDF陣は足が止まった。それに漬け込むようにルターが詰めた。
失点したLeicesterは相手のビルドアップの際のパスコースの限定・遮断ができずに前進を許し、チャンスを作られ雰囲気を持って行かれた。そうして失点に繋がってしまったのだ。相手の攻撃の最初を自由にさせてしまい、その流れを止められることはできず。結果論にはなるが、最初を封じれば(限定やブロックをしっかり取り組めば)先制を許すことはなかったのかもしれない。
このデータはそれぞれの攻撃の時間・チャンスの程を表した図。(青:Leicester 黄:Leeds)
このデータが示しているように、Leedsは後半開始頃から攻撃の時間が続くと、勢いをそのままにゴールまで達した。
点差のついた展開
ついに得点が動いた。ここからの展開を見る。
リードしているLeedsはコンパクトなミドルブロックで構える形に。これは前半の押し込まれた際の形と同様で、ラインコントロールとコンパクトさは継続する。リードし浮つく気持ちを抑えながら慎重な守備を徹底。前から飛び込まずに構える姿勢。
追いかけるLeicesterは、ブロックを崩す必要がある中で、ワンツーでペナ内に入り込むことや素早いコンビネーションから崩そうとする。または、カウンターから守備の枚数が揃う前に仕掛けきる。というような形でなんとかゴールを狙う。
しかし、Leedsのブロックは堅く、勝利への絶対的な執念が見える。
ブロックは5枚になることも多く、サイドへ散らされても1stDF+カバー2,3枚で準備する。前半から続く統制された守備の強さがここでも発揮される。
Leicesterはそんなブロックを前にシュートを撃ちきれず逆にカウンターを喰らうシーンもちらほら。一旦、プレーを切るくらいにしないとピンチの回数が増加してしまう。だから、シュートで終えることやCK等の獲得までやり切ることが大事になる。
Leedsはカウンターも鋭く、奪ってからはクリアせずに2,3本パスを繋いでスペースへ展開する。そこへ入れば、枚数をかけて一気に圧力をかける。リードがあるからといって攻撃を疎かにしない。ここでも執念が見える。
最終盤へ
Leicesterの崩しの際には、トップが引き出して相手の守備陣形に穴を空けようと試みる。しかし、穴が空いてもそこを活用できない。スペースを作れているのでそこを狙いたい。3人目の動きなどで、飛び込んでチャレンジするプレイヤーがいないのか…。前半からウラ抜けが少なかったことが思い出される。
また、サイドに預けるまでは良いがそこからの工夫も少ない。
という中で、マイナスのクロスが有効的になる。実際にそのシーンもあったが、イヘアナチョは決めきれず。(86分)
マイナスのクロスの供給は、相手はシンプルな中へのボールやゴール前付近へのクロスを警戒する。なので、その意識のウラをかくようなボールを送ることでクロスを合わせてシュートできる回数が増える。
イメージとしては下の図↓
守るLeedsはクロスの際には、マークに対して2vs1にして合わさせない。冷静に対処するだけである。しかし、先ほどのマイナスのクロスのようなボールが来るとピンチになる。こういった際には、下の図のように配置し対処したい。
Leicesterは押し込んでのチャンスシーンもあったが決めきれず時間が過ぎる。Leedsはなんとか凌ぐ。
そして、タイムアップ。独走するLeicesterの勢いを止めたLeeds。ウノゼロで終了。
総括
独走中のLeicesterを負かしたLeedsは大きな自信となる1勝。
この勝負を決めたのは統制された守備であろう。前半からコンパクトな陣形を保ち、終盤まで粘り強く守りきった。危険なシーンはあったがなんとか失点はしなかった。結果的にOK。
Leicesterはうまく対応されて決定機を作れずに敗戦。弱みが出てしまったような一戦になってしまった。攻撃での組み立て方と守備での一瞬の緩みを見直さなければならないと感じる。
勝利したLeedsは勢いそのままに自動昇格圏を狙っていけるだろう。Ipswichの壁もあるがそこも破って行かなくてはならない。勢いを止めるわけには行かない。次節は下位Plymouthからしっかり勝ち点3を奪う。
Leicesterは持ち直して逃げ切らなくてはならない。
次節は立て直してきたMiddlesbroughとの一戦。勢い的には難しいところ。ここで立て直して勝ちきれるかが焦点となる。
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