Stoke vs. Hull 〜現在地を示す〜
EFL Championship 第8節のゲームを振り返ります。
ホームのStokeは4試合勝利から遠ざかっている。好調Hull相手に勝利を目指していかなくてはならない。満足のいかないシーズンが数年続く中で、変化を起こさないとどうにもならない。そのうちのこの1試合にも収穫と成長を求める。
一方のHullは、開幕のNorwichに敗戦したもののそこから6試合負けなしと順調な滑り出しを決めている。しかし、ここ2試合はドローになってしまっている。上位キープのためには勝ち点3が絶対に必要。
今ゲームのハイライトはこちらから↓
前半
まずは、お互いのコンセプト(スタイル)から見ていくこととする。
Stokeのコンセプト
保持時は3-1-4-2か3-4-2-1が暫定的なシステム配置であると考えられる。ビルドアップ時は左SB(の位置のプレイヤー)が中へ絞る形で可変する。形的には左右非対称な形で組み立てを開始する。
アンカーの配置は必ずあり、一枚が降りて受けてCBのサポートと全体の展開に携わる。3-1-4-2に見えるというのは、このアンカーの配置があることが関係している。
ビルドアップからの出口はサイドがトップ。相手のプレスに限定されるので、サイドにつけるしかないかコースが見つけられずトップにとりあえずつけることしかできなくなる。しかも、ある程度持つ余裕がある中でもスペースを見つけられず、放るか前線に入れるしかなくなる。なので、せっかく下から組み立てようとする意思を持っていたとしてもロングを放るのでロストの回数は増えるばかりである。
という展開が序盤は続く。
守備では、放り込んでから前プレを開始するかと思ったのだが、蹴った後の前線からの守備はゆったりしている。相手はすぐに落ち着きを得ることができ、少しでも慌てる相手から奪い取りショートカウンターへ繋げることはできない。Hullのポゼッション力を警戒しているのかもしれないが、奪うチャンスは相手が安定して保持する寸前であるだろう。完全に相手ボールになる前の五分なところで狙いを決めて、一気に圧力をかけていきたい…。
相手のラインを押し下げることができるが、その後の守備の意味がない。蹴る意味を攻守において果たせていない。というか、姿勢的に果たすことができない。
Hullのコンセプト
今季のHullはより一層ポゼッションに磨きがかかっているような印象を抱く。下から組み立てる自信を貫き、前プレが来たとしても蹴らずに繋ぐ。剥がしてひっくり返す攻撃へ。Brightonやその他のポゼッションサッカーと同様な狙いと方法で取り組む。
ビルドアップ時は、2+2での入り口で4-2-3-1の陣形は崩さずに形通りに前進を試みる。CH2枚は横並びでタテ関係になることは自陣ではまずない。マークにどちらもつかれていても、マークが強く狙いにくることもなくダイレや少ないタッチで捌けば問題がない。また、2枚どちらもつかれているなら(ゲートが空いており)その背後のスペースを得ることができる。そこへ通しやすいということ。
そして敵陣へ入り込むためには、ハーフスペースでフィロジンやトラオレが受けに入りボールを受けて前後を繋げる。2列目のプレイヤーが先ほど触れた、CHとそのマーカーの背後のスペースを活用する。SHが中に入って受けに入る時は、SBがサイドの空いたスペースを使うことになる。SBはビルドアップの時から高さの維持を継続する。ゾーン1からゾーン2へボールの移動とともにポジションを前へ動かす。時にはビルドアップの出口となることもある。
守備に関しては、前からかけてコンパクトな陣形を保つ。ラインアップし中盤がカットできるような準備をする。そのためのラインアップと最前線のプレスである。
プレスはトップ陣が圧力をかけながらサイドへ限定し蹴らすように仕向ける。蹴らせても最終ラインはロングの可能性も考えて対応し良い準備をし、中盤もカットを狙えるポジショニング。中盤は短めのボールの回収ももちろん狙っており、高い位置での回収の要因となれるように狙いをはっきりさせる。
ミドルサードや自陣で引いて守る時は、4-1-4-1や4-4-2でバランスとコンパクトさを保つ。
中盤へ差し掛かる
お互いのコンセプトが見えた序盤は、Hullのはっきりとしたスタイルが優位な試合運びを続けるもチャンスはできない。Stokeは相手ポゼッションに屈せずになんとかついていき、危ないシーンも失点は避けることができる。攻撃はどう仕掛けようかはっきりせずに、短い保持(攻撃)の時間で、もやがかかった攻撃時間が長くなる。
中盤に差し掛かっても、Stokeは割り切った攻撃を継続するとウラに入れる回数が増えてトップを走らせようとする。前線で起点を作れたらチャンスメイクになるため、ギャンブル的な形になってしまうがしょうがなさそう。
そうすると、前線で細かく繋ぎシュートへ向かう回数が増加する。ポロッと入りそうな予感もしながら雰囲気が出てくる。ライン間への放り込みも増加した印象。
ただ、変わらずサイドアタックの鋭さはなく仕掛けることも少なく、タテ突破からクロスで終わり。クロスも中はそこまで枚数は多くなく高さもない。
Stokeのビルドアップでの良い傾向も見え始める。
相手FW等がCBに引きついたらアンカーに入れる。相手1,2列目のライン間でアンカーが受けて前進へ繋げる。簡単に放らないシーンもあり、保持の重要性を確かめながらポゼッションを高める。
対して、ビルドアップでの工夫が見られるがチャンスを作れないHull。
すると、前線への放り込みを試み、迎えた30分。
右サイドからロング一発でウラを取ったフィロジン。そこから中で受けたコノリーがゴール。チャンスメイクの仕方に難を感じられる中で高いラインのウラへ落とすというシンプルさを取り入れた。ビルドアップは引き付けるためのものであり、相手のラインを高くするという意味も含んでいたのであろう。そう感じる見事なウラ返しからの先制点だった。
さらに、2分後の32分。
GKからロングを左で受けたコノリーがペナへ侵入し、こぼれをトラオレが反転からシュートを沈めて2点目。またしてもロング一発からチャンスメイクしゴールへ。相手が修正する前に同じような展開で仕留める。
2ゴールともStokeがやりたいであろう形からであった。
2連チャンを2分で決める、見事なツーランホームランで相手をメンタル的にダウンさせた。そして、コノリーが2ゴールどちらにも絡んだ!
先制点に時間がかかってしまったが、それは仕方のないことなのかもしれない。長い時間をかけて相手を探りながら得点の機会をしっかり得た。早い時間で先制できればそれはそれでラッキーであるか。
リードが開き前半終盤へ
あっという間の2分間で2点の差が開いたこのゲーム。隙を見逃さないHullがリードを持って前半終盤へ。
リードのあるHullは攻略法を見つけたのか、はっきりした形式的な形でゴールへ迫る。少しの繋ぎで引き付け大きくリリースし前線へ入れる。ゴールシーンと同様にシンプルなアタックへ。
積極的にロングを使用し相手のラインを下げさせるという狙い。相手が下がれば自陣で再び繋ぐことができる。=時間を使える。有効的なボールと相手の動かしで主導権を完全に握り前半のクローズへ。
Stokeは自分たちの理想を相手に再現されての2失点。
失点後もロングでウラを取られたり自陣へ入れられてチャンスを作られる。起点を簡単に作られることも多く、全体的に対策を組めていない印象。修正できないため試合運びが難しく、攻撃へ繋げることにも不安が残ってしまう。
最終ラインはウラのケアを気にしているのは当たり前なのだが…。前線は前プレに行って蹴られて枚数が足りないという異常な事態になる。また、相手のビルドアップに対してプレスをかけてはいるがSBへのコースは無責任である。ここがフリーかつコースもガラ空きなのでつけられれば前進のきっかけになってしまう。マークもおらずスペースのカバーもない。
Hullが前半の大部分を支配し前半は0-2でHullがリードし終了。
後半
リードを広げたいHullとまずは1点から返したいStoke。
後半のやり方に変化はあるか。まだ2点差、まだわからない。
勢いを返していく…が
後半、ペースを握ったのはStoke。
ようやく前進し始めると、サイドで起点を作って仕掛けに入る。前半には少なかったサイドでの仕掛けが見え始める。
相手が若干構えているから前進できたと認識できるが、まあ前進できたということは良いこと。そして、そこから仕掛けやシュートに至るまで工夫をするだけである。
仕掛けは右サイドが多い。
右で仕掛ける回数が増えると、割とクロスやコーナーの獲得はできる。深くまで1vs1にできるので簡単にゴール前へ送るということも可能。敵陣侵入からの押し込みに力をかけながら得点の雰囲気を漂わす。
しかし、こんなチャンス数の増加は5分程度で終わってしまう。
Hullは引いて守る時間が多くそうなるシーンが多かった。全体なコンパクトさを出していたが、中を優先して守っているためサイドは空けてしまっていた。その後は、Hullの両SHがStokeのCBが起点になるサイドへ出そうとする時にコースを遮断し出させない形にシフト。素早い修正選手自身が個人で修正し早めに対処法を見つける。
Hullが取り戻す
守備の修正をかけて、再び保持の時間を取り戻しペースも戻していく。
保持時はDFラインとCH付近にマークを釣って、引きついているからその後ろのスペースは空く。間延びするところにボールを入れて前進を進める。ここで、降りての受けとタテパスのタイミングを合わせて前進を完了。
対して守るStokeは守備が簡単に剥がされることもあるが、マンツー気味でホルダー周辺にはフリーを作らないように取り組む。前プレがかかっているエリア付近では自由を与えない・前を向かさない。簡単に前進されることを止める。しかし、マンツーが故に細かく繋げられると剥がされ、どこかでついていけなくなりズレが発生する。芋づる形式で遅れが連続していく。
守備を剥がしたHullだったが、押し込んでからのチャンスを作るための武器がない遠いう現実がある。サイドで仕掛けるにしてもスピード感がない。なので、ポゼッションのスタイルを活かした出し入れして崩すことが有力なのではと思われる。
優位に進めているが課題があるのでは??
ブロックを敷いて守りを固めてことにシフトしたHullだったが、引いたままでは少し不安が残る。というのも、引き続けているとピンチというものはいつかはやってくる。完璧にピンチをゼロにするには無理な話だからだ。なので、失点してから・同点になってからではもう遅いのだ。2点差という危険なスコアでもある。
しかも、押されっぱなしでは前線へ仕掛ける時間も勢いも失っている、ロストシチュエーションになっているのだ。だから、失点してから相手の勢いに飲まれるだけになる。
どこかで前に出ることは必要になりそうだ。
そして、保持時にも判断の遅れが出始めプレスを背負ったままでのキープや、中途半端なリリースからロストしたりしてしまう。リードや相手との優位性の差があるとしても慢心してはならない。本来の判断の良さなどのスタイルの継続は必至。
という中で次に点を取ったのはHullだった。
73分、右サイドで起点を作り中央で受けたモートンからさらに横のスレイターへ。スレイターの見事なショットでゴール。隙を見逃さずナイスショットを叩き込む。苦しさや堅さのある中で勝利を近づける安心の1点。勝負強さを見せつける。
終盤
Stokeはまたしても引く相手に対し押し込んでチャンスを何度も作りだす。しかし、良い流れが来ているにも関わらず決めきれない。チームの状態が表れてしまっているような感じか…。
それでも77分、中央から右ペナ前で受けたヴィディガルがシュート。良いタテパスから事故のような流れでゴール。だが、一点は一点、意地を見せる。
この流れで一気に畳み掛けたいStokeだったが、サイド以外で仕掛けられるプレイヤーがいないのでチャンスメイクの形が絞られてしまう。相手もサイドだけを対応すればよくなってしまう。トップで仕掛けられる・シュートが積極的に撃てるプレイヤーの必要性を感じる。サイドだけでなくトップにもストロングのあるプレイヤーがいるといないとでは違うだろう。
サイドではフーバーが入ってからスピード感が変化。良い仕掛けのできるフーバーが終盤に相手を苦しめる。
しかしゴールは遠いか。
Hullは引いて守り、攻撃はシンプルにウラへという形へ。引きつくならウラへ、空いている背後は使おう。難しくに考えずに、前半終盤のような形でクローズする。
結局3-1でHullの勝利。
Hullはこれで7戦負けなし。好調を継続しプレーオフ圏内を守り2位以内を目指すのみになった。
総括
ビルドアップやポゼッションに重きを置きながら、自分らのスタイルを見せつけたHull。繋ぐことに固執せずにゴールはシンプルにという試合運びだった。自陣では相手を引き付けシンプルにひっくり返す。これでOK、そして
隙を見逃さずにゴールを奪う。
確立されたスタイルを継続したHullが持つ強さは本物であった。
これから自動昇格圏へ入り込んでいけるだろう。
対してStokeは、4戦勝ちなし。苦しい状況が続く中でどう打開するのか。ブレないやり方が必要になっていくだろう。
両チームの現在地と状態を表すようなゲームだった。
互いにポジティブな面だけでもないしネガティブな面だけでもなかった。根底や源にはパワーがどのチームも持っているに違いない。それをどう結果に変えていくかを注目しながらです。
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