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森保JAPANの4年間振り返り_ベスト8に必要なこと考察
下記の記事で、クロアチア戦の敗戦が3バックを習熟できなかったことにあると主張しました。この記事では日本のこれまでの4年間を振り返り、なぜ3バックに習熟できなかったか、そもそもなぜ付け焼き刃の3バックを使わざるを得なかったかなどを考えます。
苦境に陥る度にシステムを変えてきた森保JAPAN
まず森保JAPANのW杯までの戦術変化を振り返ります。
W杯最終予選まで:基本は4-2-3-1を採用。船出は良いが尻すぼみ気味
ウルグアイに勝利するなど、期待を持たせる船出
ただし、アジアカップは不安を残す結果
サウジアラビアにボールを支配される
カタールにも敗戦する
W杯二次予選は危なげなく勝利。この中で選手が一定入れ替わる
並行してオリンピック組が成長する。親善試合でブラジルを破るなどトップ国相手でも実績を残し、オリンピックでは世界4位に
A代表はトップ国とは戦えず
W杯最終予選:苦境の中で4-3-3に変更。オリンピック組が台頭
最終予選最初の3戦を4-2-3-1で2敗。かつてない苦境に追い込まれる
中盤が流動的に動く4-3-3に変更。巻き返して何とか予選突破。オリンピック組が徐々にスタメンに入るように
W杯前:4-3-3で敗戦を重ねて4-2-3-1に戻す
4-3-3でトップ国であるブラジルに敗戦。チュニジアにも敗れる
4-3-3を諦め、4-2-3-1に戻す。メンバーも変えて立て直しに成功
アメリカ戦ではハイプレスが機能して勝利
メンバーを変えた残り2試合の親善試合ではハイプレスが機能せず勝てなかった
W杯:4-2-3-1が通用せず、3バックに変更
ドイツ戦で4-2-3-1が通用せず。後半から3-4-3でのハイプレスを行い勝利
コスタリカ戦でも4-2-3-1が通用せず、後半から3バック気味に変更。しかし相手の5バックを崩せず敗戦
スペイン戦は最初から3バックで勝利。後半直後のハイプレスが功を奏した
クロアチア戦は最初から3バックでPKでの敗戦。相手の放り込みに消耗
戦術への習熟を図る上での反省点
森保JAPANは苦境に陥る度にシステムを変更し、勝利を得てきました。システムに習熟できなかったのも仕方ない部分があります。
もっと早く4-2-3-1の限界に気付けなかったのか
ただし、どこか場当たり感は否めません。もっと早い段階で4-2-3-1の限界に気付くことができた気がします。特にオリンピックや最終予選での敗戦で4-2-3-1は厳しいと判断し、4-2-3-1に戻すのは避けた方が良かったのではないでしょうか。
そうなると3バックが有力な選択肢となるため、W杯前にもっと試そう、となっていたと思います。早く試すと敵に対策されたかもしれませんが、ベスト8に上がるためには習熟も必要だったでしょう。
トップ国と戦うのが遅過ぎた
また、もっと早くトップ国との戦いを設定した方が良かったと思います。最終予選後では遅過ぎと言えます。
チームが一定の成熟を迎えた段階、例えばアジアカップの後にトップ国との対戦を入れていれば、4-2-3-1の限界に気付き、新しい戦術を二次予選で試すという流れになったかもしれません。
全般的に結果論ではありますが、次の4年間に活かせる反省点なのではないでしょうか。
そもそも4バックをなぜ続けられなかったか
付け焼き刃の3バックを使わざるを得なかった点にも課題が隠されています。日本の4バックで発生した主な課題を整理します。
4-3-3
DFラインやアンカーでハイプレスを受け、ショートカウンターを受ける
4-2-3-1(守備時は4-4-2)
相手が3バックにして組み立てた時にプレスがかからない傾向:特に以下の場合
相手が3トップ。日本のSBは相手のWGに付いて前に出られない
相手の中央の選手がサイドに出てくる。日本のSHはその選手を気にして3バックにプレッシャーをかけられない
4-3-3の課題はブラジル戦やチュニジア戦で出たものです。
ブラジル戦
チュニジア戦
次は4-2-3-1での課題です。
サウジアラビア
エクアドル
ドイツ
4-3-3で発生した課題の要因は、4-3-3に習熟しておらずアンカーへのサポートが不足していたことや、アンカーにハイプレス耐性が高い選手が居ないことだと思います。後者については松井選手もクロアチア戦後にコメントしていました。
対面の選手を追いかけず、DFラインにプレッシャーがかけられない
より問題だったのは習熟していた4-2-3-1で発生した3バックにプレスがかからないという課題です。
これは実はW杯の3-4-3で発生した課題と同じと考えています。4バックの時にボランチが下がって3バック気味にボールを回すというのは非常に良くあることですが、日本はその時に対応できないことが多いです。相手の中盤の選手が流動的に動いた際にその選手を追いかけず、回り回って相手のDFラインにプレッシャーがかけられなくなるというものです。
相手の中盤の選手を追いかけないとその選手がフリーになります。そうなると日本の前線の誰かが後ろを気にしつつカバーする羽目になり、DFラインにプレッシャーがかけられなくなります。結果、押し込まれて今回のW杯のような形になってしまいます。
動いた選手を追いかけつつ連動する必要性
つまり根本的には対面の選手が動いた時に追いかけるのが日本の本当の課題だと感じます。
もちろん動いた選手を追いかけるのはリスクがあります。前の記事でも話した通り、誰かがポジションを離れた時に他の選手が連動してポジションを埋めないと失点に繋がります。
ただ、それは失敗しつつ連動性を高めれば良いのだと思います。失敗しなければどういう連動が必要か気付くこともできません。強豪国と互角に戦うためにも、前に出て失敗し、それを繰り返し成功に繋げていくことが必要なのだと思います。
今はどのチームもポジショナルプレーの観点を持っていて、誰かがポジションを変えたらそのポジションを埋めるような動きがされるようになってきています。特に攻撃でそのような流動性が生まれており、それに合わせて守備の流動性も一定必要なのだろうと感じています。
課題が解消されない森保JAPAN
個人的にはこの課題がずっと解消されなかったため森保監督の続投は否定派です。今回のW杯での功績は素晴らしく、采配能力も非常に高い監督だとは思います。しかし、必要なのは課題をしっかり解消できる監督だと感じています。