EURO2024振り返りデータ分析 トルコ、スイスの躍進理由と日本への示唆
分析の背景
スペインの優勝で幕を終えたEURO2024。若手選手の活躍を日本と比較しようかな、と思っていたのですが、より本質的にEURO2024の参加国のデータ分析をすることにしました。国際大会で上位に進むためにはどのようなことが必要か考察します
分析に使用するデータ
概要
以下のデータを使用します。EURO2024の全参加国と、その推定市場価値などを記載したデータです。データは順位が高い順、順位が同じなら推定市場価値が高い順に並べています
数値の出典と定義
推定市場価値列には以下のサイトの推定市場価格の情報を使用しました
5大リーグ選手数列には、2023-2024シーズンの以下の1部リーグのチームに所属する選手数を記載しました
イタリア
イングランド
スペイン
ドイツ
フランス
具体的には以下サイトの選手一覧を目で確認して上記定義に沿う数値を算出しています。数値のミスがあり得ますがご容赦ください
敗退相手列には以下を記載しました
ノックダウンステージに進んだ国:最後に敗北した相手
グループステージで敗退した国:同じグループでグループステージを突破した国の内、推定市場価値が低い国
例えばポーランドはグループDですが、グループDはポーランド以外の国がグループステージを突破しており、その内推定市場価値が1番低い国であるオーストリアを敗退相手列に記載しています。こうすることで推定市場価値と順位の関連がより分かりやすくなると考えました
推定市場価値と5大リーグ選手数の分析
市場価値と順位の相関が見られる
上記のデータから市場価値と順位の相関が見られます。市場価値が4億ユーロを超えた国は必ずグループステージを突破しています。また、ベスト4以降の国は全て市場価値が8億ユーロを超えていました
敗退相手列との関連では、自国より市場価値が低い国に負けたのは以下の国でした
イングランド
フランス
イタリア
ウクライナ
セルビア
チェコ
その内、イングランド、フランス、チェコは比較的市場価値が拮抗した国に敗北しており、明らかに自国より市場価値が低いチームに敗北したのはイタリア、ウクライナ、セルビアの3国のみと言えます
以上のように市場価値と順位は相関しており、市場価値を上げることが上位に進むための重要要因である可能性があります
市場価値が低い中でベスト8に進んだトルコとスイスの違い
市場価値が低い中でベスト8に進んだチームにトルコとスイスがあります。しかしトルコは実は自国より市場価値が低いチームにしか勝っていません。ベスト8に進めたのはくじ運に恵まれた部分があったのかもしれません
逆にスイスは市場価値が2倍以上あるイタリアに勝利しています。スイスのデータ上の特徴として、市場価値に比して5大リーグに所属する選手がかなり多いことが挙げられ、5大リーグに所属する選手が多ければ市場価値が低くとも戦えるということかもしれません
ただし、5大リーグ選手数の見方は注意が必要です。5大リーグ選手数には、レスターやサウサンプトンなど1部に近い水準にあるチームの選手はカウントされません。またスタメン級の選手でもサブメインの選手でも1とカウントされます。そのため同じ値でも内実は大きく異なるリスクがあります
日本はより一層の選手層の充実が必要かも
日本代表の推定市場価値は、先にも引用した以下記事によると2億8998万ユーロ。スイスと大体同じくらいです
5大リーグ所属の選手数は2024/5/24発表のW杯2次予選のメンバーだと10名。市場価値が高い国に勝利したスイスの半分未満の数で、ベスト8以降に進むには物足りない陣容という印象を受けました
次回記事の予定
上記の分析から、チーム全体の市場価値の向上と、5大リーグに所属する選手数の増加が国際大会を勝ち抜く要因となる可能性が窺えました。次の記事では、上記の2つの要因に関連して市場価値の高い若手選手をどう育成するか議論します