
#CHEMCI
[ prologue ]
やあ、みんな元気かい?
とうとうこの日がやって来たね。選手にとっちゃ大切な休養期間なんだけど、2ヶ月も極上のエンターテイメントにお預けを食らっちまったら気が振れちゃうようなヤツも出てくるんじゃないのか?footballジャンキーの君たちならサ。
でも今年に限ってはそんな心配は無用だったのかも知れないな。だってやっとこさシーズンが閉じたんで、さる御婦人はイエローブックに挑戦するべく最盛期を迎える庭の手入れに勤しもうとしていたのに、その暇すら十分に与えられないままEUROが始まったんだから。
観てる側がその感覚なんだとしたら、選手たちはほとんど休み無くそのまま代表に合流して、クラブとはまた違ったplayやメカニズムに身体と頭をアジャストして行ったんだろ?スゴイね、ヨーロッパのトッププレイヤーってのは。こりゃ自然と頭が下がるってもんだよ。
ああ失敬、EUROと開催期間が幾分カブる形でコパアメリカもやっていたんだったね。もうこれは、渋滞だよ、渋滞!
各国リーグの方が1日にやる試合数は多いけれど、こういった大会は期間中、注目カードと言われる試合が毎日組まれているんだ。
シーズン中だってカップ戦やチャンピオンズリーグのゲームがmidweekにぶち込まれると、途端にスタジアムへ通う機会が倍になって場合によっちゃあ1000kmをfootballするためだけに出掛けるんだゼ?観光なんか一切なくサ。まあでも職業footballerと考えれば、出張みたいなもんかね。
ただ問題は移動距離とか過密日程だけにとどまらず、それに伴ってインターバル期間が奪われるから当事者がキツイのは当たり前だけど、そのスケジューリングに観ている方もアップアップしちゃうんだろ?最初はよくても佳境に差し掛かると、今わたしが観ているのはPremier LeagueかFAcupか、はたまたUELかってな具合でさ。
我が街のクラブにしか興味ないっていう、根っからの地元サポーターは1が2になるくらいで済むんだけど、次節対戦するクラブの様子をチェックしたり、強豪クラブや注目カード、面白そうな試合は片っ端から観たいCrazy Football Loverは激務だよな。
一週間の視聴回数が十を超えても、それを義務とすら片時も思えず嬉々として画面に向かうそんな有様じゃ日常生活に支障をきたしたとしても、それはおかしくない話じゃないか。
EUROにしろコパアメリカにしろ、語りたい事はまだまだたくさんあるんだけどこのまま続けるとメデタシ要素が見つからないままそれだけで今日はオシマイになっちゃうから、夏のスポーツ鑑賞文の提出は次回に持ち越させてもらうよ。
[ GOAL -1- ]
新シーズンスタート時の習いと言って仕舞えばそれまでだけど、ピッチ上には5月までのそれと僅かな変更が見受けられた。
かたや現代footballの申し子と言ってしまっても決して大袈裟ではない名将が、長年かけて成功とマイナーチェンジを繰り返し築き上げたベースと、かたや数年前に大変革を迫られ監督どころかオーナーの交代劇まで経験し絶賛チーム再構築の只中と、現状置かれた立場は異なってはいるものの、優勝経験が有り、BIGクラブとして認知され控えまで見回したトコロで世界有数の人材を抱えすでに各ポジションにタレントは揃っていたから、変化を加えるにしても両チームには少しの手直ししか必要ないはずだった。
まあ、よくよくリザーブを眺めてみるとChelseaは懲りずに動いているようだね。噂によればマーケットが閉まるまで諦めずに何事か算段するつもりなんだろ?こう言っちゃ悪いけど、性懲りも無くサ。
互いに代表選手がほとんどで、マネジメントが難しく必ずしもベストメンバーではないと思われる顔ぶれでの船出となった開幕戦にも関わらず、そんな事微塵も感じさせない陣容が今ここに表現されている。
きっと君たちもサブを見てやっと「ああスタメンじゃないんだ。」とか、欠場選手を知った時に「そうか、ケガなら仕方ないね。」くらいなもんで、出揃った22人はビッグマッチと言って差し支えない対戦にふさわしく十二分で、どのポジションに目をやっても見劣りなど感じられないハズだよ。
パレットに準備された色は前回相見えた時と大きく変わらない絵の具同士だとしても、緑のキャンバスに表現されていくそのアプローチには以前と比べ変化が現れていたようだね。
それは昨シーズン、監督が就任以来築いて来た圧倒的なポゼッションと流れるパスワークで相手守備陣を押し込み揺さぶり切り裂いてきたスタイルに、独特なリズムのステップとチェンジオブペースからのキレのある切り返しでDFを何度も置き去りにするドリブルを披露しチームにアクセントを加えた Doku 11 が、この夏のベルギー代表でも敵の脅威になり続けた得意の左サイドではなく右に配置されている事だった。
まあこれは、左サイドを任せた新加入選手に慣れたポジションで負荷を出来るだけ減らして試合に入ってほしいベンチの配慮もあるんだろう。異国の地へ来た若者で、しかも何にせよPremier League初挑戦だしね。
ただ、Grealish 10 と併用された時なんかに何度か見かけたけれど、左サイドで見せていた輝きをそっくりそのままサイドを替えただけにはまだ出来ていなかったから、もしかしてトレーニングで見通しが立ったにしてもそれが実際どれほど機能するかってのはこの時まだ未知数だったと思う。
それに今日相対するのは、仮に得意サイド同士の攻防だったとしても互いにイイ勝負だったと思われる、ついこないだ母国へ大きなタイトルをプレゼントするのに重要な役割を果たした Cucurella 3 だからさ。
前々シーズンの一時、なぜかその能力を疑われファンからの信頼も失ってしまうほど干されていたのが本当に不思議に感じるplayで周囲を黙らせ、DFとしての対人能力と持ち前の運動量でほとんど相手に自由を与えずに、再びナワバリを自分のモノにした。
Chelseaでも昨季の後半から復調したチームの一役を担っていたんだから、今やヨーロッパにおけるトップオブトップの左SBと言えるかも知れないね。少なくともEUROを勝ち取ったチームのスタメンなんだ、誰かがいくら小さく見繕おうとしても。
だから開始直後から幾度となく Doku 11 の元へイイ僕が届けられていたにも関わらず、Cucurella 3 が良い対応を見せそこから効果的なplayになかなか繋がっていかないと見るや、15分を待たずに左右の配置転換をして打開を図ったのさ、Guardiolaは。
そうしたらどうだい、さっきまでとは打って変わったようにファーストプレイからチャンスに絡み出したよ。引いて中で受けるシーンがあったように、右サイドとは若干役割に違いがあるのかも知れないけれどさっそく自由に動いて僕を引き出し味方へ預ける、まるで水を得た魚のようだね。
そして尚且つ、ココには Ccurella 3 は居ない。
ああ、勘違いしないでくれよ?決して Gusto 27 が易い相手だと言ってるんじゃないんだ。ただ同じSBだとしても、その性質が異なるって話さ。さっきも言ったように、前者がスタミナがありアグレッシブでしつこいディフェンスに定評があるのに対し、ディフェンスは読みとその非凡なスピードで対応して、反転した時一息つく事なく持ち合わせた脚力をオフェンスに傾けられるスタイルが評価を受けて、このポジションを勝ち得た選手だろ?
Doku 11 が左サイドへ移ったからといって、途端に伝家の宝刀のドリブルが炸裂したり、カットインから繰り出したシュートが決まったとか、見た目にわかりやすい変化がピッチを支配はしなかった。マンガやアニメじゃないからね。
でも単純にSBから受け取って始めたドリブルから、目の前にいた Caicedo 25 を例のステップワークで半身ずらした所から鋭く中へ送った僕は、Silva 20 のつま先を経由地としてベストスコアラーの元へ運ばれて行ったんだ。
コースも瞬間的な間もあったから、ココはダイレクトかななんて思ったりもしたんだけど、より確実にもう一つ前に持ち出しキーパーの逆を突いてのGOALだった。最後わずかにタッチがズレ、GKが寄せて来てコースを消され厳しくなった様に見えたものの、大柄な身体を器用にひねって軽いkickで僕をネットインさせるんだから流石だよ。
まだ一点、しかもこれは開幕戦でシーズンは始まったばかりだけど、得点王のタイトル争いの中心にいるのは今季も Haaland 9 なんだと、Man Cityというクラブがそうさせるのかそれとも彼自身の存在感がそうさせるのかは定かでは無いが、おそらくそのどちらもが影響して、その場にいる者に刷り込んでいった。
ゲーム中に起きたシステム変更が、スコア上の数字を書き換えるのに5分という時間さえ必要としなかった。確かにここまでも、ホームというよりはアウェイチームが流れを掴み進めて来たにしても互いに決定的チャンスは与えずに推移していたんだから、筆を持ち替えただけ、もしくは画面に引く線を右から左へ移しただけで、いままでと全くその印象を変貌させ、瞬く間に作品へと昇華させるなんて、驚きだろ?
これほど見事にキマってしまうと、「そんな出来事が起こるのはフィクションの世界だけサ。アニメの見過ぎなんじゃないか。」なんて言う人が出て来ないことを願うよ。
でももし、そんな声を耳にした時は君たちでこう叫んでくれないか?「アニメじゃない アニメじゃない」ってさ。
だってまぎれもなく「本当の事」なんだから。
ここから先は
¥ 500
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?