朝、曇った空。 ラジオの天気予報が傘を携帯するよう促したので僕はそうした。 8月下旬は朝でも蒸し暑いが、今日はこの空模様のおかげか少し涼しかった。 早足で駅へ向かう僕の気持ちもいつもとは違っていた。 イヤホンから流れるLaura day romanceの『seasons.ep』がそうさせた。 『遠い港町』 故郷の港町を離れ、1人、都会の風を浴びている。 地面を撫で、頬をかすめ、洗濯物を揺らす。 水分で満たされた管を伝い、体を芯から冷ます。 そんな澄んだ風はこの街には吹かな
先程までトーストとサラダを乗せていた皿は一枚、寂しげにシンクに置かれている。 ふとコーヒーが飲みたくなった。 読書を中断して、やかんの底から2,3cmまで水を入れ、コンロに置き、熱を与える。 コーヒーのためだけに湯を沸かすのは久しぶりだったが、水を約300ml量る、一月半前まで毎朝この工程を流れるようにこなしていたことを体は覚えていた。 湯が沸くまでの数分間、僕は豆を準備して待つ。 君が起きてきた。 比較的朝に強い僕を見るその目はまだ眠そうだった。 君はトーストと、簡単なサ