◇幹事を引き受けるワケ⑨ ~ 放置プレイ ~
トイレの個室にこもってから30分ほど経過しただろうか?ゆみか様からの呼び出しのLINEは一向に入ってこない。
さすがにもう注文した料理は届いているだろうと思いながらも、勝手に部屋に戻って何か言われるのも避けたいと思い、悶々とした時間を過ごしていた。
(注文が殺到しているかもしれないから、もう少し待ってみよう。)
それにしてもゆみか様は私のどこを見て足フェチであることを見抜いたのだろうか?自分でも視線には十分に注意していたつもりなのだが、、、
今日が終わり、また平和な日常が戻ってくれれば良いと思うが、そうもいかないのだろうか?
女性様3人がこの後、ここでたくさん楽しんでくれることで、全てを忘れてくれればよい。そんなことを期待しながら時間を過ごした。
それからさらに30分の時間が過ぎた。
ゆみか様からの連絡は来ないままだ。さすがに注文は届いているだろうから私の存在を忘れているのだろう。
このまま帰ってしまいたい気持ちもあるが、荷物を部屋に置いてきてあるので、そうもいかない。
(よし!覚悟を決めて部屋に戻ろう!)
戻りたくない気持ちを抑えながら、13番の部屋の前まで来た。深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから部屋のドアをノックした。
だが、部屋の中から反応がない。中ではゆみか様がカラオケを普通に歌って楽しんでいる声が聞こえてくる。
今度はもう一度ノックをして入ってみると女性様は私に見向きもせずにそのままカラオケを楽しんでいる。
テーブルの上に目を移すとポテトフライの他にアイスなどのデザート類のお皿も乗っていた。
わたし「注文は届いてたんですね」
ゆみか様が歌い終わったタイミングで声をかけてみるが全く反応がない。完全に無視をされているようだ。
幸いなことにカバンは入口近くに置いてあるままだったので、そのまま荷物を持って、部屋を出た。
彼女らは一体何を考えているのだろうか?さっきまでは私を罵ることを楽しんでいたようなのに、気持ちが変わってしまったのだろうか?
部屋を出て「お先に失礼します」とLINEを送ってから、自宅を目指して急ぎ足で歩を進める。
気が動転していたが、私は今すごくダサい恰好をしていることを思い出した。早く自宅に戻って着替えたい。
何よりもこのぐちゃぐちゃの背広で街中を歩くことが恥ずかしかった。社会人になってから頻繁にクリーニングを出すようなことはしなかったのだが、今回はさすがに出してきれいにしてもらおうという気持ちだ。
ようやく自宅の前まで到着し、カバンを開け鍵を取り出そうとしたとき、私は自分の過ちに気が付いた。
隅々までカバンの中を探して、鍵が見つからない現実に絶望した。