メイド様からの”あ~ん” ~不思議なコンカフェ ~
東京の秋葉原を歩いているとある看板に目を惹かれた。
メイド様から”あ~ん”してもらえるカフェとのことだ。
僕は大学の工学部に所属しており、女性は数人しかいない。
せっかく東京に来たので非日常を味わいたい。
少し考えてから看板下の暗い入り口をくぐり、地下へと続く階段先の扉を開いた。
入ってすぐのところに受付の店員がおり、奥にはたくさんの個室があった。ここからではどのようなカフェか様子が分からない。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
「初めてですが、1名です」
「かしこまりました、ご主人様」
受付はメイド服を着ていないのだが、口調はメイドカフェのようだった。
案内された個室はきれいに清掃が施されており、ピンクのイスに白のテーブル、床はその2色の市松模様で統一された部屋だった。
「テーブルに置いてあるメニューをご確認のうえ、タッチパネルよりご注文ください」
メニューを見ると一般的なカフェに置いてあるドリンクとフードのメニューは一通り揃っている。
特にデザートのメニューが豊富だった。
シンプルなものが食べたいと思い、イチゴのショートケーキとホットコーヒーを注文した。
タッチパネルでタップを進めていくと最後に
『メイドのコスプレを「靴」「ストッキング」「生足」からお選びください』
という項目が出てきた。
店内だからと深く考えずに「靴」を選択すると注文が完了した。
室内を見渡すと置物やポスターなどが一切なく、部屋の隅にタオルや消毒液、ウェットティッシュなどの清掃道具が置いてあった。
地下であることもあり、Wifiも使用できないため、タッチパネルに書いてある注意事項を読むくらいしかやることがないが、こんな細かい字をカフェでわざわざ読む人なんていないだろう。
15分くらい待っただろうか。
かわいらしいメイド様がケーキとコーヒーを運んできた。
「お待たせいたしました、ご主人様」
トレーをテーブルに置き、まずはコーヒーを私の前に置いた。
「ありがとうございます」
まずはコーヒーを飲めということだろう。
カップに口をつけると思わず吐き出してしまうほど苦かった。
「うっ…」
「どうされました、ご主人様。もしかしてお味に問題がありましたでしょうか?」
「ちょっと苦いですね。これ」
「申し訳ございません、ご主人様。あっ!」
メイド様がコーヒーを回収しようと慌ててカップに手を伸ばすと同時に、トレーのケーキが床に落ちてしまった。
そして勢い余ってそのまま靴でケーキを踏んでしまったようだ。
「あ~、度々申し訳ございません、ご主人様。でも、ご主人様はお優しいので、どんなケーキでもおいしく召し上がってくれますよね?」
そういって靴でケーキを繰り返し踏んづけ始めた。
この時メイド様に"あ~ん"してもらうカフェであることはすっかり忘れていた。
「ご主人様、おいしく召し上がってくれますよね?」
私が一点に見つめていた床から目を上げ、メイド様のほうを向くと私の目をじーっと見つめ言葉を続けた。
「お返事は?」
「承知いたしました。メイド様」
びっくりはしていたが、元々Mっ気がある私にとっては悪くないシチュエーションであった。
日頃見ているアダルトビデオの女王様へのご挨拶シーンのような返しが自然と出てしまった。
「よくできました、それじゃあ'"あ~ん"」
そういってメイド靴のつま先だけをちょこんと上げて、床を指さした。
これは這いつくばってこのケーキを食べろということだろう。
「いただきます」
私は現実世界でこのようなことが行われているとは知らなかった。
ビデオの中だけの設定だと思っていた。
思いがけないことだが、しっかり楽しませてもらうことにし、床に這いつくばり靴底に付着した潰れたケーキを丁寧に舐め始めた。
「ご主人様お上手ですね~。もしかして初めてではないのでは?」
「うぃえ、初めてです」
「必死に食べ過ぎて、まともに話せてないじゃないですか。ご気分はどうですか?」
「最高です。ありがとうございます」
「そういえばご主人様、先程椅子に座られてましたよね?そこ私が座る場所なんですよね~」
そう言うと、部屋の隅にあった清掃道具を指さし、座面を掃除するように指示された。
汚らわしい自分が座ったことを反省しつつ、ウエットティッシュで拭いて、きれいにした。
「私、疲れたから座らせてもらいますね、ご主人様。靴も床もきれいになるまでしっかりお掃除お願いしますね」
足を組んだ彼女の靴を引き続き舐める。
ふと顔を上げるとニッコリ笑顔を作っているが、目の奥は人を蔑んでいるように見え、ゾクゾクした。
しばらくの間、靴と床を舐め続けているとケーキがなくなった。
「ご主人様、だいたい終わりましたね。もう満足しましたか」
「はい。満足しました。ありがとうございます」
「はい。それじゃあ1万円ね」
「えっ?」
急にメイドの口調が変わり、ご主人様扱いではなくなった。
「あんた説明読んでないの?メイドにチップとして1万円払うんだよ。それから次の客が使うから靴と床を完璧にきれいにして帰れよ」
そう言うと靴を脱ぎ、スリッパに履き替えてさっさと部屋から出ていった。
私は大きな出費をしてしまった。大学生にとって1万円は結構痛い。
しかし、、、
『うん。悪くない。』
ケーキとコーヒーのお題をレジで支払い、大満足でお店を後にした。
〈 受付メイド 〉
退屈だな。コンカフェで働いている私は今日、くじで負けて受付の担当になった。
受付は一人で客を案内してレジ打ちするだけのつまらない仕事だった。
スマホゲームをしながら時間を潰していると、看板下から客が入ってくるのが見えた。
冴えない20代前半くらいの男だ。
どんなカフェであるか気になるのか奥の個室を気にしている。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
「初めてですが、1名です」
「かしこまりました、ご主人様」
なんでこいつにご主人様なんで言わなきゃならないんだろう?
自分自身の立場に毒づく。
3番の部屋に案内して、インカムで待機中のメイド仲間に連絡を入れる。
「客来たよ。3番に入れといた」
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〈プレイメイド〉
「りょうかい、こっちでやっとくね」
今日のプレイメイドは5人だ。
たまたま他の4人は接客中で、今は私だけ。
この人は大学生くらいかな。
うまくやればお楽しみパターンかもな。
少し待つと料理の注文とコスプレの通知が届いた。
この客の注文は「靴」だった。
(ラッキー!!)
「靴」は一番楽なコスプレだ。
何しろ客に直接触れられることなくお金をゲットできるからだ。
通常であれば、靴を選択された時点で他のプレイメイドと争奪戦となるが、今は私だけだ。
15分後、キッチンメイドから提供連絡が届いた。
よし、さっさと終わらせるかな。
注文されたケーキとコーヒーを持って3番の部屋をノックした。
「お待たせしました、ご主人様」
持っていたトレーをテーブルに置き、コーヒーを客の前において飲むように仕向ける。
「ありがとうございます」
この客は物分かりが良く、すんなりとコーヒーに口を付けた。
「うっ…」
苦いよね。
通常の5倍くらいの濃度でコーヒーの粉入れてるからね。
逆の立場だったらブチ切れるよ絶対に笑
「どうされました、ご主人様。もしかしてお味に問題がありましたでしょうか?」
「ちょっと苦いですね。これ」
「申し訳ございません、ご主人様。あっ!」
予定通り慌てたふりをしてケーキを床に落とし、メイド靴で踏みつぶす。
「あ~、度々申し訳ございません、ご主人様。でも、ご主人様はお優しいので、どんなケーキでもおいしく召し上がってくれますよね?」
この後の顔の変化を見る瞬間が一番楽しいんだよね。
普通では絶対にありえない倫理観ゼロの行動をしたときの反応が。
私は踏みつぶしたケーキを繰り返し踏みにじった。
そりゃびっくりするよね。
こんなメイドがいたら。
その唖然とした顔が最高に面白い。
「ご主人様、おいしく召し上がってくれますよね?」
この反応はマゾに間違いないな。
私は確信した。
このおどおどした情けないウジウジ態度はやりがいがある。
客の目をじっと見つめ、精神的に支配する。
「お返事は?」
「承知いたしました。メイド様」
承知いたしました、だって。
お金払って土下座して見ず知らずの女にメイド様とか言って気持ち悪い。
マゾって本当になんでこうなんだろう。
私は全く理解できないが、この人たちのおかげでストレス解消しながら、簡単にお金を稼げる。
「よくできました、それじゃあ'"あ~ん"」
は~い、待ちに待った"あ~ん"ですよ。
楽しいですか?
うれしいですか?
それはうれしいよね。
だってマゾなんだから。
つま先を立てて、靴底に付いたケーキを食べるように仕向けた。
この客は躾の行き届いたマゾみたいになんの抵抗もなく私の指示に従う。
「いただきます」
私は床に這いつくばっているこの客の頬を踏みにじりたい衝動にかられる。
これほど従順な奴は久しぶりだ。
しかし、タッチパネルの説明に書いてある通り、お金を支払わない場合を除き、客に攻撃を加えることはできない。
「ご主人様お上手ですね~。もしかして初めてではないのでは?」
「うぃえ、初めてです」
「必死に食べ過ぎて、まともに話せてないじゃないですか。ご気分はどうですか?」
「最高です。ありがとうございます」
(かわいすぎる!)
普段はキモイおっさん客が多い中、若くてかわいい客は久しぶりだ。
この人なら、生足を舐めさせてあげてもいいなと滅多に思わない感覚になる。
キモイ客ならここで罵倒モードに入るようにしているが、この人はもう少し甘々モードにしよっと。
「そういえばご主人様、先程椅子に座られてましたよね?そこ私が座る場所なんですよね~」
私が掃除道具を指さすと、またもや再度指示することなく意思疎通ができて、ウエットティッシュで椅子を拭き始めた。
「私、疲れたから座らせてもらいますね、ご主人様。靴も床もきれいになるまでしっかりお掃除お願いしますね」
私はゆっくりと脚を組んで座ると再びぺろぺろと靴底を舐め始めた。
だいたいは客として割り切って対応するのに、この人だったら普通に楽しい。
靴底も床もだいたいきれいになったので、そろそろ終わりの時間かな。
「ご主人様、だいたい終わりましたね。もう満足しましたか」
「はい。満足しました。ありがとうございます」
「はい。それじゃあ1万円ね」
「えっ?」
「あんた説明読んでないの?メイドにチップとして1万円払うんだよ。それから次の客が使うから靴と床を完璧にきれいにして帰れよ」
私は最後のセリフを吐いて、部屋を出た。
メイド様からの"あ~ん"という看板につられて入ってくるような客は大抵マゾなので、ここで逆らわずにしぶしぶお金を払う。
この人は問題ないだろう。
ケチがつけられたとしても、タッチパネルの説明書きに書いてあるぞと脅せるので、お金の回収は問題なくできる。
それは男の仕事だが。
部屋を出て3番の部屋のカメラを見るとさっきの客が律儀に部屋とメイド靴の掃除をしている。
この情けない姿を録画されながら監視されているともしらずに笑
今の客はお金を支払って帰ったが、キモイ客がお金を払わない場合は数人の男が受付に待機しているので、拘束して裏に連れ込む。
そのあと手の空いているメイド全員でボコボコにする「お楽しみ」もあるのだが、今回は見送りになった。
次もあの客レベルだといいなと思いながら、再び客の連絡が入るまで待機する。