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◇幹事を引き受けるワケ② ~明るみになる秘密~
新入社員歓迎会が終わると忘れ物の確認をする。いつもであれば、この時間は余韻に浸る時間なのだが、今日はそうもいかなかった。
もう女性3人が帰っていてくれたらいいな。と現実逃避をしながら店の外に出ると何組かのグループが次に行く場所を探しているだけで、彼女らの姿は見当たらなかった。
そんなことある?と思いながら、少しほっとして歩いていると後ろから声が聞こえた。
「何ニヤケながら歩いてるんですか?」
「ゆみか…さん」
「なんであんなLINEもらってるのに先に帰ろうとしているんですか?」
「いや、お店の前見たけど見当たらなかったから」
「それなら、普通LINEで反論したりしますよね?なんでニヤケながら歩いてたんですか?あきらかに挙動がおかしいでしょ」
彼女に詰められて、言い返す言葉がなかなか出てこなかった。何をしゃべっても言い訳に聞こえそうだし、動揺しているためすぐにボロが出てしまいそうだ。
「返事しないってことがもう答えですよね?きょうこさんどう思います?」
ゆみかは先輩のきょうこさんに話を振った。先輩には入社当初から直接指導していただき、たくさん面倒を見てもらっていた。コツコツ仕事をこなす私のことを評価してくれたこともある。
「この反応は黒だね」
「そうですよね。私もたまに足に視線を感じるな。くらいに思ってたので、会費渡すときに鎌をかけたら、反応が分かりやすくって」
きょうこさんの蔑むような視線が辛かった。平和に過ごしていた会社生活はこれからどうなるのだろう。
「みんな、この後お時間ありますか?カラオケ行きません?こいつ足が好きみたいなので、思いっきり見せてあげましょうよ」
「わー、なんだかそれ面白そうですね」
新入社員がゆみかに合わせたことで、カラオケに行くことが決まった。たくさんお酒を飲んだのか、かなり酔っぱらっている様子だった。
私は言われるがままに行動することでしかできなくなった。彼女らはこの後何をするつもりなのか気がかりだったが、少しだけうれしい気持ちもあった。こっそり楽しんでいたことを堂々とさせてもらえるなんて…
しかし、カラオケでは私の想像を遥かに上回る仕打ちを受けることになる。