激化する転食市場
私の所属する部署にはディズニー好きが多い。2ヶ月にひとりはディズニーに行っている。
その度にお土産を買ってきていただけるので、私はこの1年で何種類かのディズニーお菓子を食した。
ミッキーの形したクッキーから何の変哲もないチョコ菓子まで多種多様だった。中でも私が一番好きなのは『おかき』であった。
おかきの何がいいって、ディズニーからかけ離れたお菓子であるところ。
普通に生きていたらディズニーランドで『おかき』の3文字を見ることも発することもないでしょう。
職場へのお土産、という観点からだとおかきは程よいのかもしれない。
ディズニー感を程よく含みながら、かつ嫌いな人が少ない。そこそこの年齢になると甘いものが食べられない人もいるが、そういった人への配慮も感じられる。アレルギーだって、米アレルギーの人は比較的多くないだろう。
おかき側としても光栄だろう。あの天下のディズニー様のキャラクターがデザインされたパッケージに身を包み、いつもより精悍な顔立ちで私達消費者のもとにやってくる。その表情には気高い誇りと初々しさを感じる。
新入りおかきがやってくる。あの憧れのディズニーおかきに採用された喜びと、これから迫りくる困難への不安に満ち満ちている。
しかし先輩おかきを見てみると、油であげられたばかりの熱い想いはどこかへ立ち消えてしまっていた。
話をよくよく聞いてみると、ディズニーおかきは斜陽産業らしい。ディズニーのネームバリューひとつで就活米からの人気は高いが、その実、売上高は雨の前のツバメほど低い。ディズニーのコピーライトにも費用がかかり財務状況も良くないのだ。
ディズニーおかきに就食したおかきのほとんどが2、3年のうちに転食を考えているというデータもある。
そんな中で転食先として抜群の一番人気を誇るのが北菓楼の開拓おかきシリーズだ。お土産業界で揺るがぬ人気を持っていることに加え、最近流行りの地方移住もできるとなれば転食先としてはこれ以上ない。
さらにおかきにとって出会いの場でもある。
えりもの昆布や枝幸のホタテと社内結婚するおかきも少なくない。同じ袋にパッケージングされ店頭に並ぶうちに恋愛へ発展するようだ。
米学時代の友人と飲み会に行けば仕事の愚痴ばかりだが、北菓楼に就食したおかきたちは仕事の愚痴などどこ吹く風だ。
これを読んでいる、来年からおかきになるうるち米諸君は安心していただきたい。前途洋々な未来には数多の苦難が待ち受けている。しかし心くじける必要はない。北菓楼はいつでもあなた達を受け入れよう。
余談
北菓楼はシュークリームとソフトクリームも美味しい。