それ、今必要か?
今担当している部署で、新たな取り組みを始めました。
詳細をお伝えすることはできませんが、要は在庫調整です。
不要な在庫が溢れているので、発注量(使用量)に合わせて調整しようというものです。
方法としてはDBM(Direct Buffer Management)を使います。
まずは在庫の減り具合と、部材の使用量をデータ化。
部材の毎週の使用量を確認しつつ、発注ポイントを探っていきます。
部材の使用量をベースに在庫量を算出して、受注に合わせた部材の在庫調整が可能になるようにしていきます。
個別最適と全体最適
実は今回の問題は、部材の購入ロットが大きくなったのが原因です。
部材の単価が安くなるということで、購買が購入ロットを大きくしたのが始まりです。
これはどこの会社でもあるあるのコストダウンの事例だと思いますが、これってコストダウンにならないんですよね。
トヨタ生産方式(TPS)の生みの親、大野耐一氏は「在庫は悪だ!」と言って、それまでの常識を覆しました。
それは製造業におけるイノベーションだったわけですが、当時その真意を理解できる人はほとんどいませんでした。
なぜなら、在庫は貸借対照表(P/Sシート)において「資産」としてカウントされていたからです。
今でこそ、大野氏が言われた「在庫は悪だ!」というのは、製造業ではほぼ常識になりましたが、それでもまだ在庫を減らすことに抵抗を持っている人は少なくありません。
特に今回のように「安く買えるのなら、在庫が増えても良い」と思っている人は、かなりの数存在します。
でもそれは、一部しか見ていないからできることであって、全体のつながりを見た時、それはとんでもない間違いだということができるのです。
今担当している現場では、その部材群によってパレット10枚分(部品がでかいので)の場所が占領されています。
今の工場は自社ではなく賃貸なので、毎月の賃借料が発生しています。
在庫部材が置かれているパレット10枚分の場所にも、もちろん毎月の賃借料がかかりますから、安く買えたとしても部材がある限り、その賃借料がコストとして上乗せされるのです。
また在庫の管理をするためには人手が必要になります。
在庫量の管理費がさらにかかってきます。
工場で一番高いコストは間違いなく人件費ですが、それが上乗せされてしまったら、多少安かろうがコストダウン分などあっという間に消し飛びます。
部品単体のコストだけを見てコストダウンができたと思っていても、全体から見たら大きなコストアップになってしまう。
『コストダウンしたのに、なぜか儲からない』
という事例の裏には、こうした全体のつながりを見ていないから起こることなのです。
例えるなら、ジクソーパズルの中の1ピースが安く手に入るからと言って、その1ピースだけを大量に購入しまったらどうなるでしょうか?
その1ピースだけが大量にあったとしても、パズルが大量に作れるわけではありません。
その1ピースだけ厚みにバラツキがあったり、色が若干違っていたりと、品質的に安定していないしたら、全体の仕上がり(製品の品質)が台無しになってしまうことさえあるわけです。
こうした事例からも分かる通り、部分最適は全体最適に劣るのです。
5Sは問題点を浮き彫りにする
こうした改善を進める際には、必ず5Sできている方が問題点が見えやすく、また分かり易いのです。
なぜそうなるかというと、5Sができていると異物が見え易いからです。
5Sができていると、異物は目立つので、すぐに見つけられます。
逆に5Sができていない混雑した現場では、異物は他のものに隠れて目立ちません。
改善の基本が5Sと言われる所以です。
だから5S的視点を持つようになると、そうした異物がすぐに目につくようになれるのです。
今回、その部品を使う工程に、その取り組みを説明に行ったんですが、そこを見た途端・・・
「コレはここで管理してたら、そりゃ、ああなるわ(ハァ)」
という状態だったわけです。
同じモノが2つも3つも作業机の上に置かれていたり、客先で仕様が異なる治具が、同じ場所で重ねられていたりと、もう間違える要素が満タンの状態でした。
そこからはもう、リーダー捕まえて質問責めです(笑)。
1年前に5Sの教育もしており、その時に少し直させたはずなんですが、それも元の木阿弥になっていましたから、ちょっとキレッキレで再指導してました(苦笑)。
それ、今必要か?
私が現場改善を行う時に、口癖になっている一言がこれです。
実際にこう問うことで、相手の頭の中に『?』を灯すようにしています。
相手に気づいてもらえない限り、ことは動きませんからね(笑)。
それにしても、考えない人間の多いこと、多いこと。
言われたことをやっていればいいというタイプが、結構まだいます。
そういう人がAIに仕事を奪われる一番危ないタイプなんですが、そのことに気づいた時、手遅れになっていなければいいなと思う、今日この頃です。
あなたの机の上に乗っているモノは、今必要なモノですか?
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