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「フードテックの今、未来 」 FOODIT TOKYO 2020 セッションレポート #foodit2020


(この記事はFOODIT TOKYO 2020 のセッション内容を記事化したものです。記事の末尾に耳寄りな情報がございますので、最後までご覧下さい)

「フードテック」カテゴリはホットな分野である

フードテックとは、いわゆる「食」に関する様々なテクノロジーの総称です。これまでとはまったく異なる顧客体験を生み出すというフードテックは、いまどうなっていて、これからどこへ向かうのか。

FOODIT TOKYO 2020では、最も有名なフードテックに関するカンファレンスのひとつである「スマートキッチン・サミット」の日本版、「スマートキッチン・サミット・ジャパン」を主催するシグマクシスの田中 宏隆(たなか ひろたか)さんに、お話をおうかがいしました。田中さんの語るフードテックの今、未来とは。

ー そもそもですが、ここ数ヶ月、新型コロナウイルスの猛威もあり悲観的な声が目立つ印象です。しかし、実際には食全体の市場規模は変わらず、ただ外食・中食・内食などの境界線が動いているだけ、という印象があるのですが、どう感じられていますか?また、海外はどのような状況でしょうか。

田中さん「市場規模が変わっていない、ということは実感します。実際に海外では食に関する話題はとても活発になっていて、例えば代替肉への注目が集まっているのはみなさん感じられていると思いますが、それだけではありません。デリバリーや小売り、調理方法にパーソナライズド食…様々なフードテックのカテゴリーに、ものすごいお金が集まってきています

もちろんこれは欧米だけの動きではありません。このコロナ禍の中、日本でもゴーストキッチンなどにお金があつまっていますよね。」

世界で同時多発的に起きたフードテックの流れ

ー 世界的に見て、フードテックが盛り上がってきたのはどのような流れなんですか?

田中さん「4年間くらい世界中を見て来ましたが、どうやらこの潮流は同時多発的に世界で起きているんです。例えば2015年ですが、アメリカではスマートキッチン・サミットが初開催され、また英国でも同じ年にワイフードというフードテックのイベントが開かれました。さらに、イタリアでも同じく2015年に「シーズアンドチップス」が開催されるなど、この2015年を境として次々とフードテックに関するカンファレンスが立ち上がっています。

その後、日本でもスマートキッチン・サミット・ジャパンを開催しましたが、ドイツやフランスなどでも動きが追従するなど、フードテックの市場は世界中で盛り上がりをみせています。」

ー そういえばFOODITも2015年からでした。この2015年というのは、どういう年だったんでしょうか。

田中さん「当時の世界では、スマートホームという言葉が流行しはじめていて、いわゆる家電とテクノロジーの融合が盛んに開発され出しました。そうすると、コーヒーメーカーやオーブンレンジがネットにつながったり、センサー付きのフライパンが開発されるなど、調理の世界にもテクノロジーが入ってきたんです。そうした新しい調理器具を開発しはじめた方々が、手を取り合って議論しようといって生まれたのが、このフードテックカンファレンスの流れです。この動きが活発化したのが、2015年だったわけですね。」

特にホットなフードロボの世界と、一流シェフの活躍

ー 最近ではどのようなフードテックが特に熱いのですか?

田中さん「最近はフードロボにだけに特化したものですとか、遺伝子レベルでのパーソナライズド食に注目したものなど、新たな領域でも盛り上がりが出てきています。

そもそもアメリカでは、バックエンドの自動化が進んでいて、みなさんフードロボを導入してきているんですね。ここには事情があって、レストランのフロントマンはチップがもらえるけど、バックエンド、つまり調理場の人たちはチップが無いので、経済格差が生まれてしまう…というものがあります。そもそも日本に比べるとシンプルな構造のフードが多いので、テクノロジーが入りやすいということもあったようです。そこにフロントでも『非接触』という価値も出てきて、フードロボット界隈が熱いことになっているわけです。」

ー 具体的にはどんなフードロボがあって、どんな効果が得られているんでしょう?

田中さん「たとえばサラダを1,000種類作れるロボットがいます。この場合、各人の好みに細かく応じられる他、好みを覚えてロボットがクロスセル(レコメンドによる追加購買)を実現してくれたりします。例えばサラダが10ドルだったとして、1ドルのクロスセルが実現できたら売り上げが10%上がります。そうやって、ロボットによる売り上げアップが実現されています。

そもそもロボット導入によって選択肢が増えたことで、可能性が広がっていますよね。個々人にカスタマイズされたサラダが提供されますから、特定の食材や味が嫌いで来店しない、ということが減るわけです。また、機械の横に人間がついていて、レコメンドを実施するような事例もあります。これは肉体労働を機械に任せて、人間がより得意な分野、感情的な労働を分担しているわけです。」

ー 面白いですね。他にもなにか事例はありますか?

田中さん「クリエイター・ハンバーガーショップでは、ロボットがハンバーガーを作るのですが、その風景がそのままエンタメとして楽しまれています。さらに、このハンバーガーショップのメニューは、ミシュランで星を取ったシェフが監修をしています

実はミシュランって星を取った後の維持が大変なんです。そこでシェフたちの中には、星にこだわるのではなく、色々なフード系の会社に入ってオフィサーとして活躍することを選ぶケースもあります。ベンチャーを支えるミシュランシェフという構造ですね。ほかにも料理学校を卒業後にまずベンチャーで実績を積むなど、多様な働き方が現れてきています。」

注目している機能分離(アンバンドリング)、そして新しいニーズへ

ー 調理をエンタメ化する流れがある一方で、調理を自動化する流れもあるなど、顧客体験が多様化していますよね。顧客が自分で調理をするスタイルもあると聞きます。

田中さん「もうひとつ注目しているトレンドとして、アンバンドリング、つまり機能分離というものがあります。これまでのレストランは、ワンストップソリューションでした。お店があって、シェフがいて、食材とレシピも揃っていて。食事もそこで楽しんでいました。

ところが、このモデルは立地と稼働率、キャパシティがダイレクトにビジネスに影響します。多くのお店では、稼働率が最大化されないと収益が保てない設計になっていますし、その上で日本では過当競争になっています。限界がありますよね。

そんなワンストップソリューションの状況が、新型コロナウイルスの影響でバラバラに分解されました。例えばシェフがお店まで行けない状況もあるでしょうし、食材が届かないケースもあったでしょう。そもそもレストランにお客さんが辿り付けない状況も発生しました。

そこでバラバラになった各要素を再構成するビジネスが注目されました。ミールキットがたくさんでたり、シェフがお店以外で活躍したり。レシピだけを販売するケースもあります。

そうなると、お店も他の来店目的を探し始めるんです。料理を楽しむ場所だけではなく、誰かとつながる場所だったり、シェアされるキッチンにしたり。感染症対策さえきちんとできれば、いろいろな可能性があると思うんですよ。

そういえば先日対談した歴史学者の方が、日本は孤食の問題を解決するために、公衆食堂を復活させた方が良い、といった趣旨のことを発言されていました。ここで重要なのは、コミュニケーションが得意では無いけど寂しさは感じている人たちだと思うんですよね。新しいニーズです。」

ー 「新しい外食」のような世界が生まれてきているんでしょうか?

田中さん「例えばスーパーマーケットはビジネスモデルの過渡期に達していて、より多様な来店を目的を生みださなくてはならないという考え方があります。

そこで生まれたのが、スーパーマーケットの一角を、イートインを超えたレストラン的なものにしてしまうことです。実際にアメリカでは、スーパーの駐車場をアウトドアダイニングにしてしまっている事例があります。シェフがお店では無く駐車場に行くわけです。

このように、テクノロジーと食も、相互乗り入れにより新しい外食の世界を切り開くことができるはずと考えています。」

ー ありがとうございました。

FOODITでは、田中さんが主催されるスマートキッチン・サミット・ジャパン2020へと飲食関係者がお得に参加できるクーポンコードをご用意いただきました。ぜひご活用ください!

【参考】
創りたい未来を、皆で創る
日本初&最大の食のカンファレンス
「スマートキッチン・サミット・ジャパン 2020」
2020年12月17日(木)〜12月19日(土)
オンライン開催
https://food-innovation.co/sksj2020/

FOODIT×SKSJ2020特別クーポンコード

対象:外食産業に勤務する方、もしくは外食産業に関連する仕事をされている方
コード:sksj2020dxrstrnt
期間:12/19 23:55まで
販売額:定価30,000円→20,000円

【話し手】
田中 宏隆 さん
HIROTAKA TANAKA

株式会社シグマクシス ディレクター
スマートキッチン・サミット・ジャパン主催者
一般社団法人 SPACE FOODSPHERE 理事

パナソニック株式会社、McKinsey & Company等を経て、2017年よりシグマクシスに参画。戦略策定、新規事業開発・実行、マーケティング、M&A、パートナーシップ、ベンチャー協業等幅広いテーマに精通する。フードテックを中心とした食・料理のトレンドやプレイヤー動向等に造詣が深く、これまで国内外で50を超える講演・セミナー・パネルディスカッションに登壇した。メディアを通じた情報発信も多数に上る。

『フードテックの未来』(日経BP総研、2018年12月)監修、著書に『フードテック革命~世界700兆円の新産業「食の進化と再定義」』(日経BP、2020年7月)

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