食と音楽家〜泥棒かささぎを聴きながらロッシーニを味わう
音楽家は美食家が多い、と感じる。
特に指揮者に関しては「教師的」な性質を持っている方が多く、豊富なお酒や食の知識を人に伝えたり、これがうまいあれがうまいと議論する事が好きなタイプが多い。
縁あってそのような方とお酒を飲むこともあるのだが、音楽の話で盛り上がるよりも、基本的にはどこそこの酒や料理がうまいとかの話ばかりである。
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さて、音楽家がグルメなのは今に始まった事ではない。美食家として有名な音楽家に、ジョアキーノ・ロッシーニ (1792-1868)がいる。
こちらの方である。
あっ・・・
見るからにプロの美食家・・・。
ステーキ店で
「ブルーレア、片面焼きで頼むよ」
とか言いそうである。
ちなみにイラスト屋でも「ロッシーニ」という固有名詞でフリー素材化されている。
まさか自分の死後数百年に、遠い国ジパングでフリー素材化するとは思ってもみなかったであろう。
さて、見た目はThe 美食家という感じのロッシーニだが、音楽家としても超一流。当時のクラシック作曲家はヒットに恵まれず、貧困に悩まされる人も多い中、若くして超売れっ子作曲家になった珍しいパターン。
村上春樹氏の「ねじまき鳥クロニクル」に出てくる「泥棒かささぎ」、当時ヨーロッパ中で大ヒットした「セビリアの理髪師」、映画時計仕掛けのオレンジで使用された事もある「ウィリアムテル」などの有名オペラを続々と作曲。
売れっ子作曲家だった彼だが、37歳でオペラ界を引退、さらに44歳には作曲家そのものを引退し、著名人を集めたサロン、料理の創作、高級レストラン経営などに精を出す。
そんな美食家であるロッシーニが考案した料理が、現在も存在する。
その名の通り、「ロッシーニ」である(仔牛とフォアグラのロッシーニ風、などと食材名とセットで呼ばれる事が多い)。
仔牛などのフィレ肉にフォアグラ、トリュフを組み合わせ、マディラソースをつけた料理を指すようであるが、厳格な定義は無いとのこと。
この料理を見た時、ふと脳内に「泥棒かささぎ」の序曲が流れてくる。
冒頭のドラムロールはまさに料理が出てくる瞬間の期待感を表現しているよう。そして弦楽器が鳴り響く瞬間に、料理の蓋が開かれ香りがテーブルに充満する。
曲の中盤あたりの軽やかな舞踏会調のメロディーを聴くと、ロッシーニが美味しそうな料理を頬張り
「お肉のIT革命や〜」
とか言いながら小躍りしている姿さえ、もはや目に浮かんでしまう・・・
自粛ムードが落ち着いたら、クラシック音楽が静かな音で流れているレストランでこんな妄想をしながらロッシーニを味わうことも、悪くない。
参考・引用
トップ写真:俺のフレンチより「フォアグラのロッシーニ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョアキーノ・ロッシーニ#人物伝~「ナポレオンは死んだが、別の男が現れた」
https://h-stylebook.com/フランス料理のメニュー「ロッシーニ風」を解説/
https://atelier-eren.com/rossini/
お気持ちだけでも十分嬉しいです!ありがとうございます。