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【Sketchドロー】裏板塗り最終版
この記事は以下の記事の続きです
まだメンドクサイ
皆様いかがお過ごしでしょうか。Sketchドロー使ってますか?
エンジョイされているようならなによりです。
は?使ってない?ちょっと読む記事を間違っておいでですよ!
さて、私は前回の記事で、裏板塗り進化版(ハイブリッド裏板塗り法)を編み出したものの、なんというかですね…。「やっぱり塗り漏れふさぐのめんどくせーなー」と思うところがあって、気分で使ったり・使わなかったりという日々を過ごしておりました。
そんなとき、ちょっと過去のお題絵を見直していて、はっとさせられるものがありました。
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まだ裏板も使ってなくて、背景も描いてない時期の絵です。もし背景を描いたら間違えなく透けてしまってひどいことになるんですが、それでもなんというか絶妙な塗り残し・はみ出し感というか、とってもあっさりした感じがいいなあと思ってしまったんです。
この失われてしまった「あっさり感」を、今の技術でなんとかきれいに再現できないか?というのが今回のテーマです。
そして、私がお題絵描きを完走して、最終的にたどり着いた方法の紹介でもあります。
おさらい
もともと「ハイブリッド裏板」とは、
背景が透けないようにする
線画との接合面まできっちり塗られるようにする
塗っていないところに塗り漏れないようにする
というのが目的でした。
今回は一部方針を転換して「線画との接合面まできっちり塗られるようにする」と言う目的は捨ててしまいます。
前述のとおり「あっさり感」重視なのできっちり塗りません。その結果めんどくさい作業をひとつなくしてしまおうというわけです。
もし、ガッチガチのぺったり塗り(アニメ塗り)にこだわる人がいたとしたら、塗り漏れしない線画を描けるようになることを追求すればいいと思います。最初から塗り漏れしない線画が描けるなら、実質裏板がなくても問題はないのです。でもSketchドローの描画ツールのアンチエイリアスは無効にできないので、接合面はどうしても塗り残しができてしまいます。これは線画を二重化して、片方の明度を上げてやって、そのレイヤーを塗るようにすれば解決しそうではあります。
この「接合面が塗られない現象」について、前回までに説明してこなかったので例を挙げてみましょう。
まず、Sketchドローの任意の描画ツールで円を描きます。ハードブラシの100%の太さで描きました。色は真っ黒です。
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この内側を「塗りつぶし」で塗ってみます。線と同じ色でです。(もしこの円の線が閉じられていないとそこから塗り漏れします)
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そもそも描画ツールで描いた線と塗りつぶした部分の色味が違っています。同じ「真っ黒」を選択しているのですが、ハードブラシは筆圧によって薄くなってしまっているのです。強めにドラッグするか、塗り重ねれば近い色味にすることはできます。一方、塗りつぶしは筆圧の影響を受けないので指定した透明度で均一に塗られます。
さて、線と接する部分だけ塗られていないのがお分かりでしょうか?
拡大するとよくわかるのですが、Sketchドローの描画ツールが描く線にはアンチエイリアスがかかっています。つまり縁の部分がぼかされている、ということです。「ぼかす」とはどういうことかというと描画色の透明度を上げた色でグラデーション的に縁取られているということです。
この現象はSketchドローに特有のものではなくて、例えば、GIMPでも発生します。ただSketchドローには回避手段がツール内に用意されていないのです。
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透明度が高くても色は色で透明ではありません。Sketchドローの塗りつぶしは塗りはじめの色と違う色に衝突するとそれ以上は塗り進まない、結果アンチエイリアスの部分だけが塗られない、ということになってしまうわけです。一方で「白」はSketchドローの塗りつぶしを止められない色です。なので線画の明度を色調補正で上げてやって「白」に近くすることで、アンチエイリアス部分も塗られるようにしていたのが「ハイブリッド裏板」だったわけです。
シン・ハイブリッド裏板
ではでは、実際にやってみましょう。
いつも何か描いてしまってから「あ!記事用にスクショとっておくんだった!」と思って後の祭りだったりします。
実例が見せられればいいので適当に何かでっち上げます。むっかーし描いたこの絵をリメイクすることにしよう。
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2023年9月3日くらいに描いたらしい
下書きしたんだろうか?真相は闇の中
下書きして線画までは同じなのでぱぱっと描いちゃいます。
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ここからできるだけ普段通りに線画を描いてみます。
あんまり塗り漏れとか考慮しません。
とかいいつつ最近線画を描き込みすぎるブームなので適当なところで切り上げます。やりすぎになっちゃうとこの記事の意味がない。
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いつもよく自信たっぷりにでっち上げるよね
そして塗りレイヤーを追加して、ベースの裏板を作成しますが、これまでと作り方が違います。
まず何か色を選びます。ここでは「赤」にしていますが、「真っ白」「真っ黒」以外の分かりやすい色ならなんでもいいです。後で色調補正で色を変えるのですが「真っ白」「真っ黒」だと色調補正できないのです。
この色で線画のアウトラインをなぞっていって、閉じた領域を描きます。
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そしてこの領域を[塗りつぶし]で塗ります。塗り漏れする場合はアンドゥして漏れる部分をふさいでください。アウトラインだけなので、線画を全部漏れ対策するよりは全然楽なはずです。
塗れたら、手で描いたアウトライン自体も同様に[塗りつぶし]で塗りつぶししておきます。上で説明したとおり、描画ツールで描いた線は色味が薄くなっているからです。
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塗りつぶした領域とは隙間があいている
色味が薄いので線画が透けて見える(左側)、
塗りつぶすと線画が見えなくなった(右側)
次にこのレイヤーを色調補正で明度200%にして真っ白にしてしまいます。従来は絵の中でもっとも面積の多い色、とかにしていたんですが、もう白でいいです。考えるの面倒だし、色調補正では狙った色に補正しづらいからです。
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もし時間があれば、色調補正をする前に、塗りつぶした部分とアウトラインの間にできた隙間も同じ色で手塗りしておくといいと思います。この隙間はレイヤーをロックすると塗れなくなってしまいます。
これまでは領域選択で囲って、塗りつぶし、はみ出した部分を消しゴムで削っていました。この方法だと隙間ができないメリットがあるのですが、消しゴムで削るためどうしても縁が汚くなってしまうというデメリットがあります。例えば人物のシルエットを作りたいときには従来の方法だとずいぶん見映えが悪くなってしまいます。従来の方法が絶対にダメということではないです。ケースバイケースで使い分けるものだと思っています。
そして、線画を複製し、一方の明度を150%くらいにしてから裏板と統合。レイヤーはロックしておきます。
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ざくざく塗り
そして塗りです。これまでは統合した線画の塗り漏れ対策しながらちまちま塗っていました。新しい方法ではどう塗るのかというと、「選択」をしてざくざく塗っていきます。え?それじゃあ線画を統合した意味ないんじゃない?
いやいや。
裏板の外への塗り漏れは、レイヤーロックと、裏板自身が防いでくれます。一方、内接側で余計に「選択」してしまった部分は線画が防いでくれるわけです。そして一度塗ってしまえば、今度はその部分が壁になってくれます。確かに意図しない部分への塗り漏れが発生することはあるんですが、それは上から塗り返せばいいだけの話です。
線画を複製しなかった場合、内接側の塗りつぶしをブロックするものがなくなります。結果、色の境界線は全て指での指定に依存するので、仕上がりでずいぶん見劣りしてしまいます。内接側の色の境界の雑さが目立ってしまうのです。
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(ちなみにボタンより左側を塗りつぶすと選択領域いっぱいまで漏れる)
私はこのアバウトな塗り方が最も速いということに気が付きました。さらに、この塗り方「楽しい」のです。たぶん余計なことを考えずにざくざく塗れるからだと思います。アンドゥでもいいんですが、失敗したらすぐさま上から塗っちゃえばいいのです。ちょっと厚塗り的概念もありつつ、鼻歌まじりにざくざく塗っていけるのでお気に入りです。
すでに塗った部分を壁に使うことを考えるなら濃い色から塗った方がベターです。黒に近い色には、より白に近い色では塗りつぶしができなくなるからです。ただ、お絵描きのセオリーからすると逆なので、これは好みでいいと思います。
前回の記事の最後で「範囲選択して塗りつぶし+手修正」VS.「境界線を修正しての塗りつぶし」の結果、後者に時短の優位性があると結論づけたわけですが、このときの「範囲選択して塗りつぶし+手修正」は「ハイブリッド裏板」を作成しない場合でした。
一方「ハイブリッド裏板」を作成した状態で「範囲選択して塗りつぶし+手修正」をするのと「境界線を修正しての塗りつぶし」をするのとをするのとではどちらが速いかと言えば圧倒的に前者なのです。
感覚的には、塗りつぶし機能を使って手塗りをしているような感じです。
と言っている間に塗れてしまいました。はや。
どうでしょうか?そんなに悪くないですよね?
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線画を重ねて表示した場合(右側)
昔の絵は基本的に線が多すぎるんですが、逆にこれが「あっさり感」を助けている面はあります。今は指描きにも慣れて線がいくぶん洗練されているので塗りがおおざっぱでも、絵から受ける印象は少し違っているかもしれません。
最近はもうこれだけ塗ればいいんじゃない?と思ってしまうんですが、前回の絵と比較しづらいのでもうちょっとだけ仕上げをしてあげます。
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Sketchドローの不具合による「さくじょぼーし」!
おしまいに
私のお題絵描きの終盤は、この塗り方を試しながら描いていたように思います。お題絵は落書きレベルで充分、とずーっと思っていたので、「安い・速い・美味い」技術の確立、が1年を通してのテーマでした。自分なりに出した答えがこの描き方(塗り方)だったということですね。
そもそも趣味のお絵描きで「~しなければならない」という意識を持つのはストレスでしかありません。「デッサンが狂っていてはならない」「線がゆがんではならない」「塗り残しがあってはならない」…枚挙にいとまがないですが、そんなの「知ったことか」です。最近ではあっさりどころかもう部分的にしか塗らなくなってしまいました。だって塗るより線を描いているほうが楽しいんだもの。
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もっとキレイな絵を楽して描きたければ、クリスタなりアイビスなり高度なツールを使えばいいし、ちっさいスマホじゃなく、大きな画面のタブレットやペンデバイスを使えばいいと思います。
私はただ、今どきスマホがあればいつでもどこでも絵は描けるし、指一本でも描けないものはない、ということが証明したかったのだと思います。
そして何よりお絵描きは楽しい!アニメ・漫画のファンアートを描かないといけないという決まりはないし、何だって自由に描いていいのです。
もし、お気軽に楽しく絵を描きたいという人にこの記事がお役に立てたらうれしいです。今後、もっと驚くような絵を描いてくる人があらわれることを願ってやみません。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。