7.1 レンナー —覚醒に至る道—
渡邊「長い長いフルティガー回が終わり、次はレンナーということですね」
山田「うん、有名な人だし、みんなも知っておいたほうが良いと思うから」
伊藤「資料がたくさんある人であれば、僕は大歓迎です(笑)。あ、それはそうと、読者の皆さんにご報告しなければならないことがあるんですよね」
渡邊「そうなんです! 私たち3人で細々と続けてきたこのフォントポストですが、なんとメンバーが増えました! DTPチームの大野さんと、マーケティングに長けた松浦さん(業務により本日欠席)です」
大野「お呼びいただき、ありがとうございます。私なんかでお役に立てるかしら……」
山田「大野さんは、DTP(Desk Top Publishing)チームという、ピークスの文字組版や文字修正をつかさどる部署のリーダーで、書体にも詳しいんだ。伊藤くんは同じ媒体で長年組んで仕事しているから、凄さ、よくわかるでしょう?」
伊藤「いやもう、本当に。僕たち校閲が真っ赤にしたページを、全部きれいにしてくれるし、本文だけでなく、例えばクレジットやデータ欄のような細かい箇所まで、テキストの体裁をチェックしてくれています。校閲チームはもともとDTPからスタートしたところもあったりして、僕は全幅の信頼を置いていますよ」
大野「あんまり褒めないでください!(笑)」
渡邊「(笑)。本日お仕事の関係で残念ながら来られなかった松浦さんは、トレジャーデータを解析してクライアントの期待に応える、マーケティング能力に長けた方です。書体やデザインがお好きなようなので、メンバーになっていただいちゃいました」
山田「実は大野さんの少し前から松浦さんには参加してもらっていて、note のインターフェイスを整えるアドバイスをもらっていたんだ。マガジンを作ったのも、タイトルをわかりやすくしたのも、松浦さんのアドバイスがあってこそ。伊藤くんは門戸が狭い、いぶし銀みたいなチャンネル作ろうとしてたからな」
伊藤「すみません(笑)。いぶし銀は自分のチャンネルだけにしておきます」
渡邊「さて、皆さんレンナーですよ。大野さん、レンナーはご存じでしたか?」
大野「ちょっと調べてみたのですが、FUTURAの作者なんです?」
山田「お、予習してきたんだ! 素晴らしい。そうそう、FUTURAを作った人だね」
渡邊「FUTURAはドイツの書体と認識していますが、レンナーもドイツの人ということで良いですよね?」
山田「うん。1878年、当時プロイセン王国だった旧東ドイツ・ヴェルニゲローデで生まれ、幼い頃に母親を亡くす。神学者である父親に育てられたんだけど、キリスト教の教えを厳しく叩き込まれたそうだよ」
大野「わあ、そうなんですね。1878年というと、日本では何時代でしょう……」
伊藤「明治11年ですね」
大野「日本の時間軸にすると、親近感が湧きますね」
山田「確かにそうだね。青春時代は人文科学専門の中・高等学校(ギムナジウム)に通って、カントやゲーテ、ニーチェなどに精通、哲学と文学を熱心に勉強したんだ」
渡邊「あのう、人文科学ってなんですか。哲学・文学と科学が結びつかなくて……」
伊藤「うーん、なんというか、ざっくりいうと『文系』の学問のことかな。自然科学や社会科学などという言葉に対して、人文科学。サイエンス的なところはなくて、政治・経済・歴史・文芸・言語など、人類の文化全般に関する学問を総称したものだね」
渡邊「なるほど! 脱線、すみません」
山田「いや、僕もさらっと流しそうになったからありがたいよ。レンナーに話を戻すと、彼は1900年に教育期間を終えて、当時22歳で芸術の道へ進むことになる」
大野「FUTURAの発表が1927年ですから、まだまだだいぶ未来のことなんですねえ」
伊藤「その間に、第一次世界大戦(1914—1918)がありますね」
山田「そうなんだ。レンナーは生前、第一次、第二次とふたつの世界大戦を経験している。レンナーを語る上で切っても切れないのが、この社会的な背景だよ」
渡邊「なんだか、大変な話になりそうですね……」
新メンバー加入とともに、歴史の流れという複雑なサブテーマに直面する一行。今後の展開に乞うご期待。
参考文献
『普及版 欧文書体百花事典』(組版工学研究会)
#フォントポスト #fontpost #フォント #タイプフェイス #書体 #ロゴ #logo #デザイン #design #雑誌 #magazine #本 #book #出版 #publishing #広告 #advertising #アート #art