2021.4.2 金曜日
今私は個人的に日本語学科を専攻している大学1年生の男の子に週1回、日本語会話を教えている。その子は冬休みにアルバイトをしたそうだ。中国の大学生は普段はバイトはしないし、そんな時間もない。少なくとも大学3年生まではぎっしり授業が詰まっている。そして雇用形態も日本とは違い、働くということは一日拘束され、正規雇用のような形態になる。(全てがそうではない)
そんな中、彼は裕福なのにアルバイトをするなんて珍しいからちょっと聞いてみた。
仕事は?「ネットカフェ」
内容は?「お客さんが使用した後の片付け」
時給は?「1時間10元(約160円)」
時間は?「1日8時間」
1日80元(約1,400)
1ヶ月約1,600元(約27,000円)
という計算になる。
何が大変だったか聞いてみた。
彼の働いていたネットカフェは完全禁煙。パソコン1台1台に「禁煙」と注意書きをしている。なのに大人は無視。タバコの灰で机まわりは汚くなるし、キーボードの掃除をするのが一番大変で嫌だった。と言っていた。大人なのになぜきちんと決まりを守れないのか!恥ずかしい!と嘆いていた。
そんなお客さんに対して店長は注意しない。喫煙者が多いから注意するとお客さんがいなくなるのが怖いからだ。中国は喫煙者が多いらしい。多分、10人いたら7人はタバコを吸っているイメージだと教えてくれた。
なぜ嫌な思いをしてまでバイトしたのか聞いてみた。「何か買いたい、欲しいものがあったの?」すると彼はニコニコ嬉しそうに
「対対対!(ドゥイ・ドゥイ・ドゥイ!)=そうそうそう!」と言う。
彼はアニメ野郎だからすぐに察しがついて私から先に「アニメのフィギュア?」
と聞いたら人差し指を立てて、その指を小さく揺らしながら「対対対!」と言った。
その仕草がかわいい。
ちなみに、フィギュアは安いもので100元からあるらしいが、おそらく彼はもっと高価なフィギュアが欲しいはずだ。
彼は文法はきっちり学んでいるから、私が文法通りに正しく話すと通じる。でも喋り言葉だとなかなか通じないから面白い。彼はいつも私の発話の語尾に引っかかる。例えば「これあなたが買ったんでしょ?」と言うと「でしょ?でしょ?」と独り言を何度も言って悩む。文法の教科書にはないからだ。私が教科書通りの文法で「買ったのですか?」または「買ったんですか?」と言うと問題なく通じる。そして自分の発話に困ると「ちょっと待って」と言ってノートに日本語の文章を書いてそれを読む。会話レッスンだからその日本語の文章を私に読ませてわかってもらおうとはしない。私が言ったことの意味がわからなかったら、私の発音をもとに辞書で調べる。私に意味を聞かない。学ぶ姿勢がとても素晴らしい。本当にかわいい。
彼は私に「私の希望はいつか秋葉原に行って、フィギュアなどをたくさん見て、気に入ったものをたくさん買います。」と言ってニコニコしながら帰っていった。
この言葉、その時は気が付かなかったが、彼の教科書にある「V1て、V2て、V3ます。」構文だ。
彼の学びの欲求になんだか感動した。