きみのすき。
ずっと憧れだったきみに告白された。
瞬間、うそだと分かった。
きみがぼくを好きなはずがないでしょう?
だってぼくもきみも男なんだから。
ぼくなんて冴えない、教室の隅っこのモブなんだから。
「…あの、ぼく、でも」
「まさか断るなんてしないよねぇ、俺が誰だかわかってるの?」
わかってるよ、学校一のイケメンでいちばんの権力者でしょう。
縮こまって震えるぼくを、きみが抱きしめて笑う。
「…ほーら、もう捕まえちゃったけど」
心地よい低音が鼓膜を揺らして、小さくわらう。
「…ぼく、ほんとうは付き合ってる人が」
瞬間、抱きしめる力が法外な痛みにかわる。
「は?いんの?」
心地よい低音は心をざらつかせる辛い魔の音へ変わる。
「あ、いや、うそで、でも好きな人が」
瞬間、掠め取られたのは誰の心臓か、なにか。
唇を拭いながらきみは怒る。
「そんなやつ忘れろ。お前は俺を好きになるんだから、いらない」
孤独なきみの泣きそうな瞳の色は、
少しすきだとおもった。
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