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『DynaFont版 フォントかるた』について

こんにちは、フォントかるた制作チームの2号こと、伊達です。
ダイナコムウェア株式会社さまよりご依頼をいただき、DynaFont30周年記念ノベルティとして、『DynaFont版フォントかるた(非売品)』の制作を担当しました。

今回は、我々が感じているDynaFontの魅力と、『DynaFont版フォントかるた』が完成して感じたことについて語っていきたいと思います。
今回の記事はあくまでも2号の個人的な見解であり、メーカーさんの意図とは異なる部分もあると思います。ご了承ください。


豊富な書体ラインナップが魅力

DynaFontの魅力、それはなんと言ってもバラエティ豊かで個性的な書体が多いことです。一方で本文用の明朝体・ゴシック体から筆文字、UDフォントまでベーシックな書体もしっかり揃っていて、我々も普段の仕事でもとてもお世話になっています。

例えば下の「クラフト墨」は、手書きの筆文字がベースのデザインですが、いわゆる書道的な筆法ではなく、ゆるーく適当に描いたような抜け感があり素朴で嫌味がないため、スッと心に入ってきます。
POPやパッケージ、お店のお品書きなどによく活用されていますね。

ゆるさと温かさが魅力、大人気のクラフト墨
丸っこくてかわいいけど、甘すぎない!とても親しみやすい書体です

また、以前『フォントかるた』の拡張パック『Sweet』に収録した「パンダ体」は、漢字の中にパンダがいる極めてレアなデザインです(何を言っているかわからないと思いますが、我々もよくわかりません)。この札はいつも驚いてもらえるので、我々も紹介するのがとても楽しいです。
(拡張パック『Sweet』は販売を終了しています)

かわいらしいパンダが文字と一体化した珍しい書体(拡張パック『Sweet』収録)

そしてまだの方はぜひ一度見ていただきたいのが、DynaFontのWebサイトです。特にDynaFontの豊富な書体の制作ストーリーや、採用事例が掲載されている「ダイナフォントストーリー」。無料なのが不思議なくらい、フォントの基礎知識や歴史も学べる充実のコンテンツなので、2号もいつも更新を楽しみにしています。


DynaFontが親しまれてきた理由

さて、フォントかるた制作チームのメンバーは、1990年代のDTPの黎明期から主に紙媒体を中心に作ってきた年季の入ったデザイナーたちです。写真植字と版下による制作(このあたりの話はまた別のポストで……)から、MacとIllustrator、QuarkXPressなどのアプリケーションを使った制作へと環境移行が進む中、日本語DTPの最大の問題はフォントの数が少ないことでした。
Macに搭載されていたのはゴシック体と明朝体の2つだけ。当時主流であった、モリサワ社のフォントも基本7書体のみ。とても高価でウェイトも揃わないので、本文とコントラストを付けられる見出しやPOPに使うデザイン書体が圧倒的に不足していたのです。そんな中で、いち早く多数のデザイン書体をパッケージで提供してくれたのがDynaFontでした。
またワープロへの搭載や、アプリケーションソフトに付属など、比較的手軽に使用することができたので、デザイナーだけでなく一般の方にも親しまれ、広く使われるようになりました。
本当に有り難い存在でした。


歴史書体の復刻と進化

というわけで、われわれ古参ユーザーにとっては、ある種の懐かしさを感じるDynaFont。しかし現在は、フォントのメーカーさんや、個人のフォントデザイナーさんたちが、使い切れないほど数多くの書体を作ってくれています。無料で使える質の良いフォントも増えました。

「デザイナーにDynaFontはもう必要ないのかも?」

正直わたしもそう思いかけたことがありました。しかしDynaFontは、ただ書体数が豊富なだけではなく、DynaFontにしかない!そんな書体があるんです。その代表格が、私たちが「歴史書体」と(勝手に)読んでいる、昔の書籍や石碑などから復刻した書体たちです。

例えば明朝体は、中国の宋の時代に盛んに作られた木版印刷で用いられた書体がルーツで、日本では金属活字から写植、デジタルフォントにおいても本文書体の主役として使われ続けています。しかし明朝体以外にも、過去にはさまざまな時代にさまざまな書や書体が存在していました。こういった過去の、特に中国の長い歴史の中で生まれた書や書体はそれぞれに魅力があり、これらをデジタルフォント化するのは非常に価値のあることです。

この取り組みの中で難しい(と勝手に思っている)のは、復刻された漢字に合わせる和字(ひらがなやカタカナ)のデザインです。これだけ作り続けられてきた明朝体の和字にさえ「正解がない」と言われるように、数々の歴史書体にもやはり和字は難しいのではないでしょうか?機会があれば書体デザイナーの方にこのあたりを聞いてみたいものです。

DynaFontでリリースされている歴史書体には、とてもバランスの良い和字がつけられています。特にリリースが新しいものほど、とても美しく洗練されていると感じます。

宋朝体から実際に印刷された書体見本を参考に設計された書体で、明朝体と楷書体のエレメントを兼ね備えた縦長の字形と力強く鋭い画線が特徴
中国の龍門石窟に刻まれた力強さと独特の風格を備えた文字を特長とした書体で、落ち着いていて重々しい中にも鋭角的なきっぱりとした味わいがある

そんな素晴らしいDynaFontの歴史書体の中でも、2号が特に好きなのが「古籍書体」のシリーズ。楷書や明朝体の漢字に、それぞれ和字がABの2種類から選べるようになっていて、用途に応じて使い分けることができます。
高級感や歴史感、品格の欲しい、パッケージや広告、見出しなどにぴったりだと思いませんか?

中国の有名な古籍「四庫全書」をもとに開発された書体で、流れるような楷書体に調和するやわらかくもくっきりとした和字が美しい
「元豊類稿」の「聚珍倣宋」版の活字を印刷した復刻版の古籍をデジタル化した書体。端正で力強く、明るい堂々とした風格が感じられる


『DynaFont版 フォントかるた』のよいところ

2024年に完成した『DynaFont版フォントかるた』は、DynaFontの30周年を記念して作られた、30書体収録のオリジナルグッズ(非売品)です。

上記でご紹介したようなデザイン書体や歴史書体だけではなく、読みやすいスタンダードなゴシック体や明朝体、ユニバーサルデザインに基づいた書体など、DynaFontの魅力が詰まった30書体を厳選してあります。

実はDynaFontのフォント名には、読み方がちょっと難しいものがいくつかあります。でもそれぞれの書体のルーツや表すものを知れば、名前も「納得!」だし、読み方も迷わなくなります。

甲骨文字と金文をベースにしたデザインなので「甲金文体」
フォント名には読み方がつき、解説文にはルビが振ってあります

かるたで遊びながら、フォントのルーツやデザインの特徴を知ることで、的確にフォントを選ぶための指針となり、より文字による表現を豊かなものにすることができるのではないでしょうか?

ぜひ多くの方に手にとっていただきたい『DynaFont版 フォントかるた』ですが、非売品のノベルティですので、制作をお手伝いした我々も見本しか手にしておりません。
SNS等でお知らせが出ると思いますので、プレゼントやキャンペーンなどの機会を逃さずチェックしてください!

『DynaFont版 フォントかるた』収録書体(30書体)
金剛黒体 Ultrablack/金剛明朝体 W4/青花ゴシック体 W7/娥眉明朝体 W7/UDゴシック体 W4/UD明朝体 W4/UD丸ゴシック体 W4
甲金文体A W6/松月虹 W4/金文体 W5/龍門石碑体A W9/DF隷書体 W5/痩金体 W3/玉刻華宋 W4/超極太楷書体/古籍銀杏B W3
古籍糸柳B W3/古籍木蘭B W3/DF勘亭流 W11/新宋体 W3/金花体 W2/優雅宋 W5/欧風花体 W5/琺瑯看板体 W12/ロマン雪A W9
綜藝体 W7/シネマ凜 W3/クラフト墨 W9/ハンノテート W5/風雲体 W12


フォント名を読み上げて、そのフォントで書かれた札を取る。「フォントかるた」の制作チームです。書体やフォントに関するあれやこれを楽しく綴ります。https://www.fontkaruta.com