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売上ダウンになるサービス改善をした話
fondeskは、2021.2.10に「ブロックリストの登録上限が増えました」という件名で、迷惑な発信者をブロックする『ブロックリスト機能』の利用上限を実質撤廃するアナウンスをしました。
<ついに…>
— わきむら / うるる (@shwkmr) February 10, 2021
「fondeskすごくいいけど、ブロックリストの上限数はなんとか撤廃できないですか?」いろんな人にご要望頂いてました。
そしてついに、今日皆さんにお知らせできます!実質無制限(=10,000件)に登録できるようになりました!
さらに便利になったfondesk、ぜひご活用ください🐤 pic.twitter.com/veELZkihzL
お客様向けには追加料金なしの提供を決めたので、ユーザーの皆さんからは嬉しいフィードバックをたくさん戴きました。
これは神アップデート過ぎて、案内がきたときは吹いた(笑)
— Yas | Autify, Inc. (@stringsoflife76) February 11, 2021
これまで30件でなんとかやりくりしてたのに、いきなり10,000件への上限緩和というナナメ上をいく振り幅がすごい。
スモールオフィスなら、fondesk使わない手はないよホント。 https://t.co/aqqV3CBeWu
ただし、タイトルにある通り、実はこの改善は私たちの事業売上高を減らすことになります。ブロックリストで拒否した着信分はユーザー課金しないのがfondeskの仕組みなので、従量料金が減ります。
なぜこうした決断をしたのか、どういう意図があったのか。このnoteではそんな私たちfondeskチームの意思決定の真意をシェアしていきます。
fondeskの料金体系とブロックリスト
本題に入る前に、fondeskというサービスの料金体系と、なぜ今回の変更で事業売上高が減ってしまうのかを解説します。
以下の図の通り、fondeskの料金体系は2階建てになっていて、10,000円の月額基本料金と、101件目以降の電話対応にかかる従量料金から売上が構成されます。
ブロックリストは、迷惑な発信者の電話番号を登録して、着信を拒否する機能です。
拒否した着信は音声対応をして、従量料金のカウントからは除外されます。
従来はこのブロックリストに30件までしか登録ができなかったんですが、今回の変更でこの上限が実質無制限(= 10,000件)になって、好きなだけ迷惑番号をブロックできるようになりました。
したがって、ブロックリスト上限をなくすとfondeskの売上高は、図のように従量料金分がどんどん減ることになります。
とてもやばそうですね。
まだ利益を出せていない新規事業でこんなことを決めたら会社から怒られてしまいそうです。
「ユーザーさんが喜んでくれるからやるんです!!」だけでは納得してもらえません。
もちろん私たちに長期的にメリットがあると思って決めました。
ブロックリストの価値
ブロックリストは「迷惑電話を受けるために従量料金を余計に支払いたくない。」というユーザーさんの声に応えるため、2020年1月にリリースしました。
ユーザーさんからはご要望の多い改善だったので、かなり好評を得ました。
全fondeskユーザー待望の神アップデートがついにリリース😲
— すみだ@ベーシック CAO (@takeshisumida_) January 9, 2020
不要な受電通知が減ることにより、これまで以上に快適な勤務環境が実現する。
fondeskが、ますます企業にとって不可欠なインフラになってきた感あるな。#fondesk https://t.co/IR3jKzxhNM
「従量料金をセーブできる」だけではなく、毎日の不要な通知が減るという便益を感じてもらえたんですね。
(私たちの知る限り)マイページからこうした設定が簡単にできる競合サービスは無かったので、『ブロックリストがあることで、競合リプレイスされるリスクも減らせる』と手応えを感じました。
リリース当初、上限を30件にした理由は以下の2点でした。
・まず機能実装すれば十分に競合優位になる
・(当時の)月間売上へのネガティブを許容できない
機能リリースから数カ月後に起きたこと、私たちの葛藤
リリース時に好評を得たブロックリストでしたが、しばらくすると「30件の上限を引き上げられないか」というユーザーさんの声が増えていきます。
長くfondeskを使うほどブロックしたい迷惑番号が増えていく。
そりゃそうですよね。
着信の多いユーザーさんは特にそうなります。
チームでは3つの対応アイデアがありました。
1 件数上限をすこし引き上げる(30→100件など)、追加料金は頂かない
2 件数上限を引き上げる有料オプションをつくる
3 件数上限がない上位プランをつくる
でもどの案にも穴がありました。
1は問題を先送りするだけで、数カ月後に同じ問題が出てきてしまう。
2や3は一見すると誰も痛みがない良案にも見えますが、30件超のブロックリストを追加したお客さんがダウングレード(オプション解除、プランダウン)した時にどういう対応をするか、というプロダクトが複雑化する問題が新たに出てきます。
どのアイデアを採用しても、良い解決にはならないように見えました。
私たちは結論の出ない悶々とした時期を過ごすことになります。
(サービス開発ってむずかしいですね(苦笑))
売上ダウンは小さな問題かもしれない
実に半年以上、fondeskチームは悩み続けました。
そうこうしてたら、問題は解決しないものの、コロナ禍のリモートワークの急普及が追い風になって、fondesk事業は驚くべきスピードで成長しました。
ブロックリストをリリースした2020年1月からの1年間で、じつに有料ID数は10倍。
なかなか立派なMRRのサービスになりました。
気づけば、もう少しで電話代行サービスの中でNO.1が見えるところに来て、チームの視野は大きく広がりました。
「長期ユーザーさんほどペインは大きい、延々と30件の中でリスト管理させるのはあまりに体験が悪いのではないか」
「一時(いっとき)ARPUが下がってもそれは大した問題じゃないのではないか。」
ブロックリスト上限に関するストレスを解決すれば、サービス体験が良くなることは明らかです。
ユーザーファーストを貫くならば『追加料金を頂かずに上限を引き上げる』という決断はしっくりくるものでした。
当初の案2・案3のような、別の問題に悩まされることもない。
デメリットは(今となっては小さいと思える)売上ダウンのみ。
2021年1月に腹を決めて、上限撤廃の準備を私たちは進めました。
長く愛されるサービスになるために
コロナ禍でfondeskが大きく成長できたのは、大いに運の要素がありました。それは疑いようもない。でも私たちは『友人・家族に誇れる良いサービスをつくろう』という信念に基づいてユーザーさんに向き合い続けたからこそ大きく成長できたと考えてます。
ワクチンが行き渡ってコロナの脅威がなくなっても、リモートワークや効率化した働き方は残り続けると思います。一度効率化した電話対応フローを維持したいというユーザーさんも少なくないはずです。
企業の電話対応インフラとしてfondeskは愛されるサービスであり続けたい。随分スケールの違う話ですが、みんなが大好きなNetflixが休眠顧客にサブスクリプションの自動キャンセルをすることにした話にもヒントを得て今回の決断をしました。(Netflixカッコよすぎてしびれますよね。)
回り道をしましたが、私たちは良い道を選択したと思っています。
同じように悩むことがあると思いますが、今回と同じように、私たちは『ユーザーファースト』で決断し続けることにします。
ぜひそんなfondeskを引き続き応援頂けたら嬉しいです。
ではでは!
▼まだ体験されていない方はせひ、電話対応のストレスから解放されてください!